「軍事的信頼が造成できれば
他分野での対話・交渉拡大」
韓米訓練・心理戦の中断など
今回も条件付きで
会談実現の可能性は低い
金正恩(キムジョンウン)北朝鮮労働党第1書記が6~7日に開催された朝鮮労働党第7回大会の党中央委事業総括報告で出した対南メッセージは、専門家たちの予想より具体的で前向きだ。 「南北軍事当局間の対話と交渉が必要だ」という発言が代表的だ。 北朝鮮の唯一無二の最高指導者である金第1書記が党大会事業総括報告という公開演説を通じて、事実上南北当局会談を提案した形であるためだ。 金第1書記は「現在の破局状態は対話と交渉を通じていくらでも克服できる」として「互いに相手方を尊重し統一のパートナーとして共に手を握ろう」という表現まで使った。 北朝鮮の4回目の核実験(1月6日)以後、南北関係の最後の安全弁と呼ばれた開城(ケソン)工業団地までが全面閉鎖されるなど、南北関係が最悪になっている北朝鮮が、朴槿恵(パククネ)大統領を実名で名指しして激しい言葉を浴びせた渦中での当局会談提案だ。
南北軍事当局会談の提案は、「軍事的緊張状態を緩和」しなければならないという脈絡から出た。 金第1書記は「南北軍事当局間の意志通路が完全に遮断されていて(中略)いつどこで武装衝突が起きるやもしれず、それが戦争にまで拡大することを防ぐことはできない」として「軍事的緊張と衝突の危険を減らすための実質的措置を取り、軍事的信頼のムードを醸成しつつ、その範囲を拡大していかなければならない」と述べた。 軍事当局会談が実現すればその後に「種々の分野で様々なレベルの対話と交渉を積極的に発展させ相互の誤解と不信を解消」しようとまで言及した。
板門店(パンムンジョム)の連絡官接触と軍通信線の断絶など、南北間の非常連絡網が全面遮断された状況に触れた上で、偶発的衝突を防止する軍事当局会談の必要性に言及したのだ。 「軍事問題」を前面に出したという点で北側の伝統的接近方式の延長線にはあるものの、対話が必要な理由として挙げられた状況が現実的で急迫しているという点で注目を要する。 ただし金第1書記が「経済・核武力建設並進路線」を固守する方針を強調したうえに、4回目の核実験にともなう対北朝鮮制裁初期局面であるため、近い将来に南北軍事当局会談が現実化する可能性は低い。
金第1書記は、二度の南北首脳会談の成果である6・15共同宣言と10・4首脳宣言が、南北関係改善と発展の土台であり青写真であることを繰り返し強調し、南側に「誠実な履行」を求めた。 例えば金第1書記は「北と南が合意して世界に宣言した祖国統一3大原則と6・15共同宣言、10・4首脳宣言」を「北南関係の発展と祖国統一問題解決において一貫して踏まえなければならない民族共同の大綱」と規定した。 「祖国統一3大原則」とは7・4共同声明の自主・平和・民族大団結を意味する。 金第1書記は新たな統一方案は提示しなかった。
金第1書記は「相手方を認め尊重することは、北と南が和解し信頼するための出発点であり前提」として、南側の「北朝鮮崩壊論」と「吸収統一論」を批判した。 これを基に「相手方を刺激する敵対行為を中止しなければならない」として、対北朝鮮心理戦放送とビラ散布を直ちに中断するよう要求した。
金第1書記のこのような対南メッセージは、朴槿恵政権のみならず2017年12月の大統領選挙以後に生まれる韓国の次期政権まで念頭に置いたものと見ることができる。