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[ニュース分析]単独制裁→脱北→入国…早すぎる集団脱北に見えざる影

登録:2016-04-11 08:45 修正:2016-04-11 09:30
異例の集団脱北公開
北朝鮮の従業員13人が集団脱出したと推定される中国浙江省寧波の北朝鮮レストランの柳京食堂=寧波/連合ニュース

保護要請→身元確認→交渉など
韓国入りまで通常数カ月
今回は1カ月足らずで入国
3人1組の監視網をどう突破
40代脱北者「迅速かつ出来すぎ」
政府、2日でブリーフィング要請
「独自の対北朝鮮制裁効果」繰り返す

 政府は、集団脱北の事実を公開しておきながら、具体的な脱北の場所や経路、時期などについては口をつぐんでいる。その代わり、先月8日に韓国政府が断行した単独の対北朝鮮制裁が効果を出していることばかり強調した。4・13総選挙直前に緊迫した状況で行われた政府の集団脱北の公開をめぐり、様々な疑いが提起されている。

■3人1組の監視網をどうくぐり抜けたのか

 政府は総選挙用の「北風」との疑惑を避けるため、集団脱北自体が異例である点を重視している。統一部当局者は10日、「今までの集団脱北は家族単位だ。レストランで一緒に働いていた人たちが集団で脱北したのは最初」であるとし、公開の正当性を説明した。しかし、国家情報院など政府消息筋と一部の脱北者たちは「外貨稼ぎの海外のレストランに勤務する場合、3人1組、4人1組の集団の監視網など厳しい統制が敷かれる」と主張してきた。13人がどうやって厳重な統制をくぐり抜けることができたのか疑問だ。その上、今回脱北した13人は、30代の男性支配人1人と大半が20代の女性12人だが、特定のレストランの全従業員ではないというのが政府の説明だ。この当局者は「特定のレストランの全従業員が来たわけではない。『多い』というのが適切な表現だ。(脱北した人たちと)別の考えをする人もいるだろう」と話した。韓国情報機関の介入説が出てくる背景だ。

■あまりに見事な脱北、脱北ルートは不明なまま

 今まで脱北者の多くは、脱北の過程が命がけだったことを発表してきた。実際、脱北者たちが韓国の海外公館に保護を要請すると、政府は身元の確認を経て、駐在国と長い時間をかけ入国の交渉をしなければならない。中国は脱北者の韓国入国への協力を嫌がる動きも見せてきた。このため国内入国まで、長い場合で数カ月かかることも多い。

 今回の脱北が、先月8日の韓国の単独制裁による効果という政府の説明を考慮すると、13人は早くても先月初めに韓国公館に脱北の意思を伝えたものと推定される。その後、韓国機関の援助で第3国に移動した後、7日に韓国入りするまで、あっという間に行われたのは通常の流れと全く違う。統一部当局者は同日、「長引くほど北朝鮮の追跡といったものがあって決心して話が決まり、その場を離れるまで時間がかからなかった」と話した。しかし、匿名を希望する40代の脱北者は「あまりにも機敏で見事な脱北」と話した。

■韓国政府の対北朝鮮制裁効果と関係あるのか

 集団脱北の公開2日後の日曜日の10日、統一部と外交部当局者は非公開でブリーフィングを進んで求めた。記者団は神経を尖らせたが、ブリーフィングは主に「韓国政府による単独の対北朝鮮制裁の結果、集団脱北が行われた」という主張を繰り返すだけだった。「政府が韓国国民に北朝鮮のレストランの利用自制を勧告」した結果、レストランの営業が難しくなり、実績追及の圧迫などのため脱出したということだ。また、北朝鮮の中流層に当たる彼女らの脱北は、北朝鮮内部をかなり動揺するものであり、これに刺激された北朝鮮当局が追加の威嚇に出る可能性が高いというのが柱だ。

 しかし、対北朝鮮制裁により北朝鮮に動揺した雰囲気があるという主張は、事実よりは希望混じりの展望に近いものと見られる。統一部当局者自らが同日、「制裁の影響を知るには7~8月の貿易統計を見なければならない」という専門家の見解を引用した。統一部は同日、記者団に今回の脱北者の「脱北の動機と心境」に関する言及を12項目公開したが、そのうち「最近、対北朝鮮制裁が深刻になり、北朝鮮体制にこれ以上の希望がないと思い、希望があるソウルに脱出するようになった」の一つだけだ。何より単独制裁から1カ月で脱北を決心し、韓国への入国まで終えるには、時間がかなり足りないというのが大多数の脱北者の証言だ。

キム・ジンチョル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-04-11 01:47

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/739121.html 訳Y.B

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