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[ニュース分析]米国の対話なき圧迫は「中国役割論」で再び壁に

登録:2016-01-11 01:13 修正:2016-01-11 05:53
中国任せの北朝鮮核問題の解決策に実効性はあるか
ジョン・カービー米国務省報道官//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮の電撃的な4回目の核実験について“中国責任論”と、その裏返しである“中国役割論”が米国で再浮上し、韓国もこれに同調するような態度を見せている。しかし、米国と韓国は手を拱いていながら、中国だけに一方的“外交的な損失”を強要する北朝鮮核問題の解決策は、再び失敗する可能性が高いものと見られる。

米国務省・北朝鮮核問題の専門家ら 
「中国、対北朝鮮支援をテコに圧迫すべき」 

中国、北朝鮮の崩壊などの不安定を望まず 
韓米日安保協力強化の流れに 
地政学的な緩衝地帯である北朝鮮を放棄できず 

米、仲裁の余地を与えず、外交損失を強要 
北朝鮮の核問題解決できず、米中関係だけ悪化する可能性も

 中国役割論の要旨は、北朝鮮と経済的に密接な関係にある中国が、北朝鮮をさらに圧迫しなければならないということだ。ジョン・カービー米国務省報道官は8日(現地時間)の定例ブリーフィングで、「米国が最も望んでいるのは、北朝鮮に対する国際的圧力を強めること」だとし「中国が北朝鮮に対する影響力とリーダーシップを行使する姿を見せてほしい」と述べた。対北圧迫のために、中国がより積極的に乗り出すべきだと公然と要求したのだ。

 米国ジョージタウン大学のロバート・ガルーチ教授と同大のビクター・チャ教授も8日、ニューヨーク・タイムズへの共同寄稿を通じて「米国は中国政府を圧迫して対北支援を縮小するようにすべきであり、そうすることができる」と主張した。2人は元米政府官僚であるうえ、それぞれ米国の対北朝鮮政策のハト派とタカ派として知られていることから、中国役割論が米国国内に幅広く形成されていることが推察できる。

 中国役割論が登場した背景は、北朝鮮に対する米国の経済的なテコが皆無であるという現実から出発する。経済制裁を成功させるためには、制裁国と制裁対象国が長い間、かなりの規模の経済交流を行っており、制裁対象国が民主主義体制で、国民の世論に応じて政策を変更できなければならない。ところが、朝米間には交易もなく、北朝鮮は民主主義体制でもないため、米国の制裁がむしろ内部結束の道具として活用されている。このような事情から、(米国は)北朝鮮の対外貿易の90%を占めており、北朝鮮に毎年100万トンの原油を供給する中国に目を向けた。

 しかし、中国役割論が失敗せざるを得ない理由は、第一に、中国の一方的な“外交的犠牲”を要求している点にある。中国が原油の中断などをはじめ強力な制裁を施行し、“効果を発揮する”場合、北朝鮮の経済事情の悪化で脱北者が増加し、これは東北3省地域の不安定につながる。北朝鮮が崩壊すると、中国に大規模な難民が流入したり、在韓米軍と対峙する状況もあり得る。これは中国が最も恐れているものだ。

 逆に、中国の対北圧迫が効果を発揮できず、北朝鮮の激しい反発だけ招く場合、外交的負担は、すべて中国が負わなければならない。あらゆる意味で、中国にとっては、得るものがないわけだ。

 オバマ政権で北朝鮮とイランの制裁に関与してきたジョセフ・ディトマス元国務省不拡散担当副次官補も今月7日、米国ワシントンで「38ノース」の主催で開かれた記者懇談会で、「北朝鮮が米国を打撃できるレベルの核兵器を保有していると確信するまでは、中国は動かないだろう」と予想した。

 第二に、中国は戦略的に必要ないと考えるようにならない限り、北朝鮮を“放棄”できない。ところが、今のように、米国がアジア再均衡戦略の中で、韓米日3カ国間の安全保障協力を通じて中国の浮上を牽制しようとする場合、中国は地政学的緩衝地帯である北朝鮮を放棄するのがさらに難しくなる。中国外交筋は「中国は独自制裁に乗り出すこと自体を、米国の朝中離間、中国孤立戦略に巻きまれるものとして捉えている」と述べた。

 第三に、米国は中国に対北圧迫だけを要求し、北朝鮮と交渉できる余地はほとんど残していない。北朝鮮が昨年1月に韓米合同軍事演習を一時停止すると、核実験も一時中断するとしたことについても、昨年10月、平和協定に同意する場合は、米国と対話する用意があると明らかにしたことに対しても、米国は直ちに拒否した。中国が北朝鮮の最も懸念事項である安全保障問題と関連して提供できる“あめ”がないため、仲裁を試みる余地がないのだ。

 米国は、北朝鮮の2006年1回目の核実験以後、“中国役割論”にこだわってきた。しかし、米国が中国役割論の現実的な限界を直視できない場合、北朝鮮の核能力の増強を防げないだけでなく、米中関係の悪化も避けられないものと思われる。

ワシントン、北京/イ・ヨンイン、ソン・ヨンチョル特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2016-01-10 19:45

https://www.hani.co.kr/arti/international/america/725526.html 訳H.J

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