「乗客の安全管理は私の担当ではない。担当者は決まっているので、私まで連絡して混乱を生じさせないようにした」
4・16セウォル号惨事特別調査委員会の第2回聴聞会に証人として出席した、清海鎮(チョンヘジン)海運のキム・ジェボム企画管理チーム長の答弁だ。セウォル号事故当日、現場の状況を報告を受けた後、キム・チーム長が真っ先にとった措置は、船の技術的な部分と関連して造船会社に連絡したことだった。同日の聴聞会場でのキム・チーム長の返事は「私は会社から任された仕事は忠実に行った」という態度で一貫した。キム・チーム長は清海鎮海運と国家情報院の連絡係として注目された人物だ。
「(尋ねたことは)ない」
チャン・ワンイク特別調査委員が「船長の指示がなくても1等航海士としてどうすべきか問うべきではなかったのか」と尋ねると、セウォル号のカン・ウォンシク1等航海士は、こう答えた。チャン委員が「操舵室にあれほどたくさんの乗組員がいたのに、そのうちの誰も『乗客たちをどうしよう』といった話を一言もしなかったというのですか」と繰り返し尋ねると、誰も答えようとしなかった。
「清海鎮海運物流チーム部長は仁川(インチョン)港で最も権力がある。拒否したら不利益を被るから…」
セウォル号の港湾運送業者ウリョン通運のイ・ジュンス現場チーム長は、下請け企業に対する元請け企業の強圧を口にした。ウリョン通運は元請けの清海鎮海運の下請け会社で、イ・チーム長はセウォル号事故の主な原因と指摘される過積載に関連した実務担当者だった。イ・チーム長は国際線とは違い「めちゃくちゃ」だったセウォル号の運送作業に問題があると感じながら、問題提起をする状況ではなかったと答えた。
「担当公務員の証人の他にいったい誰が確認するというのですか?」
キム・ジン特別調査委員は、仁川港湾庁のキム・ヨンソ、パク・ソンギュ船員海事安全課長に対する質疑の最後で、すがるように尋ねた。2人の証人は何も答えなかった。「赴任する前のことなのでよく分からない」、「制度が不備だった」という彼らの答えに、セウォル号惨事家族協議会の家族らは声を荒げ、そして涙を流した。
28日と29日の2日間、聴聞会場には戸惑い、驚き、恐怖心が入り混じった。乗客より先に避難した乗組員、乗客の命を担保に過積で延命してきた清海鎮海運、簡単に超過乗客・出港を承認した韓国船級、港湾庁、申告受付後も消極的な対応をした済州・珍島VTS関係者、誰にでも理解できる元請け会社の強圧などは、韓国社会では余りに“平凡”である生活の中の官僚主義そのものだった。
誰も直接的な殺人行為はしておらず、事故を望んだりしなかった。ただ、自分で判断する責任を負わなかっただけだ。「大惨事が起きる前には29件の警告と300件の兆候が必ずあるとした「ハインリッヒの法則」に見られる数多くの警告や兆候のように、韓国社会が平凡でゆっくりと惨事に向かっていることが聴聞会を通じて確認された。セウォル号の惨事を巡り「陰謀論」に近い疑惑が集中した理由は、証人たちが見せた、この平凡さにあったのではなかろうか。
韓国語原文入力:2016-03-30 21:51