登録 : 2016.03.26 14:03 修正 : 2016.03.26 22:15

キム・ジョンソン無人機体系(UAD)開発団長が2014年4月11日、大田の国防科学研究所で開かれた北朝鮮無人機の中間調査結果を発表をし、無人機に搭載された部品とカメラ諸元などを説明している=共同取材団//ハンギョレ新聞社

■性能が明らかになった北朝鮮無人機

 2年前のちょうど今頃に時計の針を戻してみる。14年3月24日、坡州(パジュ)で正体不明の無人機が墜落し、該当地域の国軍機務司令部(機務司)、国家情報院(国情院)、警察が参加した合同調査チームが調査に乗り出した。機務司を幹事とする同日の調査で、無人機が「スパイ容疑に値しない」とする機務司の意見に国情院要員が同意した。その直後の28日、無人機を回収した国情院を幹事とする中央合同調査チームが再び調査を開始した。そんな中、31日に白ニョン島(ペンニョンド)に別の無人機が墜落したため、中央合同調査チームは、北朝鮮が対南偵察用にこの無人機を飛ばしたものと判断した。

 その頃までは、大きさ1メートル前後の小型で粗雑な性能の無人機が、韓国の安保を揺るがす騒動に発展するとは誰も予想しなかった。マスコミには報道されていないが、北朝鮮が無人機を集中的に運用し始めた2013年9月から、前線部隊で北朝鮮の無人機を回収することは珍しいことではなかった。東海や西海で北朝鮮への帰還に失敗した無人機が海流で流れ着いたこともあり、野山で発見されることもあった。これらを発見した軍部隊は、倉庫に保管したり放ったらかしにしておくことが多かった。国軍情報司令部で北朝鮮の無人機に対する技術的分析を行った結果、特別関心を持つほど脅威になる性能はないと判断され、韓国軍でもあまり大きな関心がもたれなかったのだ。この事件当時、キム・グァンジン国防長官や合同参謀は、国情院の調査状況を4月2日まで報告も受けていなかった。国情院が情報を独占したためだ。

■大統領府全景写真のリーク

 当時は国情院によるソウル市スパイ証拠捏造に対する検察の捜査結果の発表が差し迫っていた。それ以前にも、スパイ捏造が問題になる度に、大統領府はナム・ジェジュン国情院長に「証拠捏造はあったのか」と確認しているが、ナム院長は「断じて捏造はない」と答え続けてきた。しかし捏造の事実が明らかになると、大統領府はナム院長が組織を完全に掌握できていないという疑念と共に、朴槿恵(パククネ)政権の安保政策に対する世論の不信が高まることを憂慮する雰囲気が広がった。このため、国情院の対共捜査局とソ・チョンホ第2次長が窮地に追い込まれ、ナム院長にまで影響が及びかねない情勢になっていた。

 暗雲が国情院に漂いだした頃、大統領府を含むソウル上空から撮影された映像ファイルを内蔵した北朝鮮の無人機が、新たな政治的武器に急変し始めた。中央合同調査チームの調査内容の一部がマスコミにリークされ、無人機に対する恐怖が広がりだした4月2日、国防部のキム・ミンソク報道官は、無人機が撮影した写真の公開を求める記者団に「それを公開したら無人機の映像確保性能を北朝鮮に教えることになる」、「国家安保上公開できない」とはっきり拒絶した。この時点で朝鮮日報にリークされた映像は、国情院第2次長室と大統領府の介入なしには不可能なことだった。

 翌日の4月3日、朝鮮日報に北朝鮮の無人機が撮影した大統領府を俯瞰する航空写真が1面で大きく報じられた。「絶対にできない」と確言した写真の公開が現実に行われたのは、誰が見ても政治権力または情報機関とマスコミの癒着を疑わざるを得ない出来事だった。写真が公開されると、機務司は写真流出の震源地が国情院2次長室だと指弾し、軍事機密流出を捜査する考えまでちらつかせた。報道直後に開かれた国会国防委員会では、セヌリ党の国防委員でさえ機務司令官に「朝鮮日報を家宅捜索する」と怒鳴りつけ、機務司令部も「必ず捜査する」と答弁した。しかし窮地に追い込まれた国情院は、その後も無人機の恐怖を煽る姿勢をとり続けた。問題の写真を朝鮮日報に提供した主犯はついに明らかにされないままだ。機務司令部は、写真が流出した前日、国情院2次長室大統領府の全景を写した写真を分析チームから緊急に回収していった、という事実だけを確認するだけで調査を終えたものとみられる。

 それ以降の流れは、捜査など行われず、無人機の恐怖が無限大に拡散される方向に動いた。朴槿恵大統領は4月7日午前に開かれた大統領府首席秘書官会議で、「北朝鮮製と思われる無人機がわが国を全方位から偵察したものと見られるが、韓国軍当局が関連事実をまったく把握していなかったのは、防空網や地上の偵察態勢に問題がある」と指摘した。その後、マスコミは、まともに飛ぶこともできずに墜落し、映像を電送することもできなかった小さな飛行体3機をもって、韓国を恐慌状態に陥れた。この粗末な無人機は、わずか1週間で生物化学兵器を搭載できる大量破壊兵器、大統領府と政府庁舎を攻撃する自爆機、原子力発電所を脅かす恐るべき武器へと創造された。破局と終末に対する不安を大量生産する感情脳は、マスコミの刺激的な無人機の報道に素早く反応していく。

 飲料水もまともにないアフリカの国でも運用できるレベルの幼稚な無人機は、韓国の安保の盲点をつく破局的なイメージと、恐怖の奴隷になった大衆心理を煽る威力的な政治武器だった。そうなるためには無人機は朝鮮日報が報じた通り、大統領府の上空で約20~30キロの爆弾をつけて降下できる、恐るべき核兵器に急変しなければならなかった。江南(カンナム)の高層ビルの間を悠々と飛び回り、私たちを監視する怪物に変身しなければならない。この時期に有力マスコミが取り上げた無人機に関する記事は5410件も検索される。

 これに野党も一役買った。朴大統領の発言が行われる前日、新政治民主連合の安哲秀(アンチョルス)共同代表(現「国民の党」代表)は、最高委員会議で「6カ月間に領空を侵犯した無人機が、墜落で明らかになっただけで3回あり、もっと多くの無人機が数百回、数千回出入りしたかもしれない」、「安保無能政権と言われても返す言葉がないのではないか」と恐怖を煽る隊列に加わった。与野党を問わず、この時期の韓国の政治勢力は、韓国の安保体制は失敗したものでなければならず、それでこそ自分たちの発言に重みが加わる奇妙な局面を迎えていた。小さな無人機事件一つが政治争点化されると、CNNが「韓国の安全保障が北朝鮮のオモチャにやられた」と皮肉る状況にまで至る。

 しかし、韓国の政治で「北朝鮮無人機の脅威はたいした物ではない」などとは言えない事情があった。そんなことを言ったりしたら、北朝鮮の軍事的脅威に対する安保意識を逸らす敵にされてしまうからだ。むしろ野党は、無人機は深刻な脅威なのに、政府は何をしていたのかと叱咤することで、恐怖を煽ることに参加するしかない論理に閉じ込められてしまった。そこへ朴大統領の発言がされ、事態はさらにおかしな方向へと展開していった。キム・グァンジン国防長官をはじめとする合同参謀作戦関係者までが、北朝鮮の無人機が「深刻な脅威」だと言いだし、対策作りを急ぎ始めた。北朝鮮の無人機に対抗する新たな監視システムが急がれ、陸軍で運用されることになる低高度局地防空レーダーの開発を待つ余裕もなくなった。韓国の装備では北朝鮮の無人機を捕捉できないため、外国から低高度レーダーを輸入しなければならない。だが世界のどのレーダーも、低高度で飛んでくる小さな飛行体を捉えることはできず、結局、陸軍教育司令部は新たな方法を探さねばならなくなった。

 こうしたことで軍は2年を浪費した。そして出された結論は一つ。北朝鮮の無人機を阻止するのは不可能ということだ。2年後の今年3月20日。連合ニュースは2年前の無人機を国防科学研究所が復元して試験してみた結果、「せいぜい400~900グラム程度の手榴弾1個をぶら下げることができるレベル」で、事実上武器としての価値がないという結論が下されたと報じた。無人機の情報収集用カメラも自動電送機能のない、1980年代の時代遅れなものだったという。外信が最初からオモチャのレベルと見た北朝鮮の無人機を、2年もかけて分析したという軍当局の説明も、異常としか言えない。

「安保上言えない」と確言した国防部
北朝鮮無人機が撮った大統領府の写真リーク
誰がマスコミに提供したか明らかにせず
恐怖心理が助長され「政治兵器」に変身
新たな武器システムの導入を巡る議論まで
無人機はすでに各地で発見されていたが
「脅威的な性能なし」と判断されていた
今になって「粗雑な武器」であるのを確認
政権、情報機関、軍のもたれ合い構造
恐怖のモルヒネを打つのは誰なのか

■武器導入ビジネスの起源

 北朝鮮の無人機騒動は、韓国の安保における大きな浪費だった。私たち自ら作り出した恐怖の奴隷になった瞬間、合理的理性と軍事的専門性は連鎖的に崩れ去り、その結果、優先順位で遅れていた脅威に、多くの資源を費やしてきたからだ。このような非合理性は、無人機だけに限らない。北朝鮮にある見慣れないものが明らかになれば、安全保障への多大な浪費や混乱を招き、非正常的状況に至り、いつのまにか私たちでは改善させるのが難しい慣性であり習慣となった。

 その行動は三段階で展開される。第一に、北朝鮮の「見たこともない脅威が分かった」と大げさにふるまう。核ミサイルから長距離射程砲、ホバークラフト、潜水艇のような主要な武器はもちろん、サイバー脅威、電磁波爆弾、生物化学兵器など、北朝鮮の脅威は、ある日突然出現した不慣れなものでなければならない。それまで北朝鮮にあった武器でも、その使用方法が見知らぬ姿で現れれば恐怖になる。2014年、北朝鮮が中距離ノドンミサイルの発射高角を高め、射程距離を短くして発射すると、今までなかった新たな韓国への攻撃の信号と解釈した在韓米軍司令官の衝撃発言がそれだ。山の前の坑道にあった北朝鮮の長射程砲が山の後に移動すると、こちらでは制圧できない新たな脅威と急変したのも同じだ。既存の武器でも新たな用途に再活用されねばならない。

 第二は、「しかし私たちには打つ手がない」と国家破滅のイメージを具体化する。ソウルに巨大なキノコ雲が立ち上がるシーンとともに、社会が大混乱に陥り一瞬で破滅に向かう具体性を示さねばならない。私たちには打つ手がないという点が確実に強調されて初めて記事になる。さらに韓国の国防にすべての対策が備わっているわけではない集団に格下げされることにより、政治権力が政治論理で国防に介入する名分を確保することができる。恐怖を助長することで簡単に大衆を統治できる政治権力は、絶えず軍事問題に介入したいと考えている。

 事実、無人機に対する対策は、合同参謀の一つの課や陸軍教育司令部の一つの部署で悩んでいればすむ些末な問題だった。しかし、大統領、長官、国情院長が直接乗り出し対策を指示するほど、非正常なまでに拡大されてしまった。軍自ら解決できない問題を、政治が乗り出して覚醒させて解決させる“威信作り”を可能するには、軍は適当に無能な集団でいたほうが都合がいい。対策は常にあってはならないのだ。

 第三に、このくらいの段階に至ると、軍は待ち構えていたかのように「外国の何らかの武器を取り入れなくてはならない」と具体的な武器導入ビジネスを始める。それまで大金をかけ導入した武器は、北朝鮮の新たな脅威により、使い物にならない無用の長物に転落する。国内研究機関や防衛産業メーカーが開発する武器はレベルが低いので対策にならない。国内で開発中でもこれを中止させ、外国から武器を購入させる対策が打ち出される。それもなるべく高い技術の先端武器、新しい技術を適用した新兵器でなければならない。こうして完結する話は、毎回新しいバージョンにアップグレードされ、国防費増加を助長する欲望の構造を形成させていく。ほとんどの防衛産業の不正事件が、充分な事業の妥当性検討と体系的な事業管理領域を超越し、ある日突然導入が決定された武器導入事業で発生するという点に注目しなければならない。まともな検討を経ず、枝葉的な必要によって導入される武器は、不正を招くだけのことだ。そして韓国社会では、安保が不安でなければ国防体制が作動しない、実に不思議な風潮が作り出されていく。

■恐怖と欲望の二重螺旋構造

キム・ジョンデ氏//ハンギョレ新聞社

 安保に対する需要は底に穴があいた水ガメのようなもので、いくら注ぎ足しても永遠に満たされることはない。恐怖と貪欲の二重の螺旋構造が絶え間なく続き、安保国家は自らの成長と発展を遂げる本性により動かされる。最近の朴槿恵大統領は、2年前のあの時のように、また全軍に警戒強化の指示を通達した。軍は北朝鮮の相次ぐ韓国に対する威嚇に関する全軍指揮官会議を開き、北朝鮮の差し迫った攻撃に備える決意を固めている。テロ防止法もサイバー安全対策もないとして、しばらく国家の脆弱性を露わにさせてきた政治権力は、新しい安保対策を作りだした今、北朝鮮の別の脅威を待ちわびているところだ。その過程で、国家は安保意識が希薄な国民を詰る。そして情報を独占する国家情報院は、一種のモルヒネ注射のように新しい北朝鮮の脅威を提供する。その致命的な中毒性により、私たちの合理的な理性と体系的であるべき国家安保の構造が崩壊していく。深刻なのは、韓国が当然備えているべき安保の脅威さえも、こうしたことにより備えられない点にある。“安保詐欺劇”とも呼ぶべき2年前の無人機事件を振り返る必要がそこにある。

キム・ジョンデ/軍事専門家//ハンギョレ新聞社

韓国語原文入力:2016-03-25 20:19

http://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/736929.html訳Y.B

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