入居企業、協力会社5千社
来月末に物品代金支給が集中
政府「496億7000万円の特別融資」
被害補償はなく、支援対策に過ぎず
米国と中国が外相会談を通じて「制裁局面の迅速な終結と制裁以降の対話再開案の協議」に向けて動き始めたことで、朴槿恵(パククネ)大統領が開城工業団地(開城公団)の全面中断の根拠として掲げた「終末的な対北制裁」に中国を参加させるという圧迫は、効果を期待するのが難しくなった。むしろ韓国単独の強硬策による開城工団の全面中断で、123社の入居企業と5000社を超える協力業者が回復不可能な打撃を受け、“自殺的な制裁”が現実と化した。入居企業による協力会社への代金の支払が集中する3月末に、連鎖倒産が相次ぐ可能性が高まり、入居企業らが集団反発の動きを見せている。
25日にハンギョレが取材した結果、開城工団の被害企業の多くが、3月末に資金圧迫の危険がピークに迎えると予想される。開城工団企業協会関係者は、「入居企業の多くが協力会社への代金支払いを約1カ月後に控えている。資金が不足している状況で、予定通り支給が行われるか心配だ。協力会社も零細業者が多く、連鎖的に資金圧迫を受けることになるだろう」と話した。これにより開城工団企業協会は、120以上の入居企業はもちろん、約5000社の協力会社まで参加する第3回総会を3月2日に開くことにした。開城工団企業協会総会にすべての協力会社代表が参加できるように開放したのは今回が初めてだ。ある入居企業関係者は「政府がしっかり補償してくれるとは思えない。協力会社の従業員もすべて集まり、実力行使にでも出なければならない状況だ」と語った。
しかし、政府は開城工団の被害企業への被害「補償」を全く検討していない。政府は一貫して「支援」という言葉を使っている。この日も政府の「開城工業団地入居企業の支援のための政府合同対策班」は、4回目の会議を開き、被害企業の経営正常化を支援するため5500億ウォン(約496億7000万円)を特別融資することにした。融資金利は南北協力基金が1.5%、中小企業の創業・振興基金が2%、国策銀行と信用保証基金・技術保証基金が3%レベルで、市中金利より低くされている。政府は、2013年の開城工団操業中止当時に行われた特別融資3500億ウォン(約316億1000万円)よりも増えたと説明した。しかし同協会関係者は「2013年3500億ウォンも、企業別の融資限度ため、実際に行われた融資は1000億ウォン(約90億3000万円)程度だった」と述べた。 5500億ウォンは、対策としての実効性が大きくないということだ。また融資は返済すべきものであって、被害を補償するものではない。開城工団の被害企業の別の関係者は「政府が損失を補償するのではなく、支援するだけのレベルでは、被害回復が全くできない」と話した。
政府が補償に出ない理由は、開城工団全面中断の法的根拠がないからだ。補償は、合法的な行為による損失に対して行われる。しかし黄教安(ファンギョアン)首相が国会対政府質問で説明したように、政府は開城工団の閉鎖を「大統領の高度の政治的行為によるもの」と規定している。政府は、2010年の天安艦沈没事件直後の5・24対北朝鮮制裁措置を根拠に挙げている。当時、南北経済協力企業が国家を相手に起こした損害賠償訴訟などで、裁判所は、「(5・24措置は)高度の政治的判断による裁量行為」と判断した。
通商専門家のソン・ギホ弁護士は「5・24措置に対する損害賠償訴訟でも、裁判所は大統領の統治行為という主張は退けた。大統領の統治行為といっても、南北首脳会談のような高度の政治的判断が必要な行為にのみ適用されるべきだ。 5・24措置は、追加事業を許可しない方針のものだったが、今回は既存の事業権を事実上奪い、憲法によって保障されている企業の活動を直接的に制約し、個人財産権を一方的に侵害するものであるため、(統治行為の適用が)許されるないだろう」と述べた。
韓国語原文入力:2016-02-25 19:23