朝鮮半島に再び戦雲が漂っている。 北朝鮮の4回目の核実験とロケット発射が国連の決議に違反した「挑発」ならば、朴槿恵(パククネ)政権の開城(ケソン)工業団地撤収と北朝鮮「体制転換」の言及はほとんど戦争宣言に近い。 いかなる「不安な平和」でも戦争よりはましだ。 南北間に緊張が高まり、局地戦でも発生すれば民族は回復不能な傷を負うだろうし、米国の軍産複合体と日本の右翼は「神がくれたプレゼント」を得るだろう。
朴槿恵政権は一層強力な経済制裁をすれば、北朝鮮は核開発をあきらめて、北朝鮮の住民たちが体制に反旗を翻すと思っているようだ。 この政権が初期に言った「統一大当たり論」も、今回の開城工業団地撤収決定も、1994年の金日成死亡後に保守右翼が堅持してきた北朝鮮崩壊論の土台の上に立っている。 彼らは北側の人々が全て韓国の資本主義を羨望していると仮定するが、民族問題に対する認識と朝鮮戦争の集団記憶こそが北朝鮮の体制維持の歴史的基盤だという点を見逃している。 従って経済制裁をさらに強化しても、北側の人々は韓国と米国を一層強く敵視することになるだけだろう。 例え金正恩(キムジョンウン)体制が崩壊したとしても、休戦ラインの北側地域が韓国の領土にならないのはもちろん、朝鮮半島内の内戦的葛藤は一世代、いや1世紀続くかも知れない。
中国の圧迫が北朝鮮にとって最大の要因であることは事実だが、北朝鮮と中国の関係は米軍が韓国に70年間駐留している韓米関係とは根本的に違う。 朝鮮半島と長い国境線で接している中国には、北朝鮮の崩壊を防ぐだけの強い理由がある。 中国は北朝鮮を見捨てることはできないが、北朝鮮を思いのままにさせることもできない。 韓国とは違い北朝鮮は休戦協定の主体だ。 したがって、北朝鮮の安保と体制維持は「国際社会」ではなく全面的に米国にかかっている。 核実験、ミサイル発射など北朝鮮のすべての行動は米国の回答を求める「求愛」であり、韓国を相手にしたものではない。
朴槿恵政権の「統一大当たり論」も空虚なものだったが、北朝鮮との信頼を構築する努力もせずに、北朝鮮の相次ぐ核実験と衛星ロケット発射に「憤怒」して、開城工業団地を閉鎖し、高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備を論じるのは、一層「水準の低い」行動だ。 韓国政府は北朝鮮が衛星ロケットを発射するや、米国が言い出す前に中国にとってあいくちとなるTHAAD配備問題を持ち出したし、ついには中国に「碁石」に過ぎないという屈辱的な言葉まで聞くことになった。 ところで聞こえてくるうわさによれば、北朝鮮と米国は韓国に黙って秘密会談をしていたというではないか? 米国と中国もまもなく交渉する形勢だ。
ウィキリークスが公開した資料によれば、米国が韓国に軍隊を維持している理由は北東アジアで自国の「利益」を守るためのものであり、特に「韓国が米国産兵器の主要顧客」であることを強調している。 6・25当時にそうであったように、米国は北朝鮮の崩壊、あるいは朝鮮半島の統一にはこれと言った関心がない。 中国を屈服させて米国の市場を拡大できるか否かが彼らの死活的利害だ。
米中間に局地的衝突が起きても戦場は朝鮮半島であり、最大の犠牲者は韓国と北朝鮮の人民であろう。 旧韓末、休戦協定期のように韓国は再び周辺国に自身の命運を任せなければならない存在に転落している。 世界で兵器購入に最も多くの金を使っていながらだ。 政権にとって利益になるならば「超大国の防具」であっても構わないというのか?
「常に統一を考えているが統一を口にしない」。かつてドイツのブラント首相の東方政策設計者であったエゴン・バールの哲学だった。 ナチが罪を犯した代償として米ソによって分断という「処罰」を加えられたドイツは、米ソの気分を害すれば統一が不可能であることを知っていたので、両者を安心させるよう慎重に接近し、結局は実を結ぶことができた。 ところが内戦から国際戦を経て休戦状態にある朝鮮半島では、ドイツと同じように米中どちらか一方の超大国の利益を脅かす方式では決して統一を成し遂げることができないが、ドイツとは異なり南北当事者の信頼構築がすべての出発点だ。
金東椿(キムドンチュン)聖公会大社会科学部教授