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[インタビュー]韓国は先延ばしせずに南北対話の再開を

登録:2016-02-25 23:50 修正:2016-02-27 01:43
平壌宣言の主役、田中均・国際戦略研究所理事長
田中均・国際戦略研究所理事長=キル・ユンヒョン特派員//ハンギョレ新聞社

 日本外務省の代表的な戦略家だった田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長が、北朝鮮の4回目の核実験以降、北朝鮮に対し強硬策を展開している韓国政府に向け、制裁はあくまで「問題を解決するための手段であり、それ自体が目的ではない」と指摘した。韓国は北朝鮮核問題の解決という最終目標のために柔軟な姿勢を持つ必要があるとの助言と思われる。

 田中理事長は23日、ハンギョレとのインタビューで、「北朝鮮を相手に軍事的に問題を解決することは不可能なので、外交的交渉のためのシナリオがなければ、制裁も意味を持たない」とし「先延ばしせず、対話を再開すること」を求めた。外務省でアジア大洋州局長と外務審議官(次官補)を務めた田中氏は、2002年9月、小泉純一郎首相の訪朝と平壌宣言を主導した人物で、現実主義的外交観を持っている。

「北朝鮮相手に軍事的な問題解決は不可能 
外交交渉のシナリオなければ 
強力な制裁措置も意味を持たない」

-北朝鮮の4回目の核実験やロケット発射で、東アジアの情勢が急変している。とりわけ米中間では、韓国へのTHAAD(高高度防衛ミサイル)配備をめぐり熾烈な対立が展開されている。現在の急変している東アジア情勢をどう見るべきか?

 「世界の力のバランスが変わりつつある。米国のリーダーシップが弱まっており、ナショナリズム、宗教、原理主義などが国境を越えて世界各地のいろんな場所で混乱を起こしている。東アジアにおいては、中国が南シナ海などで非常に攻勢的な海洋政策を進めており、北朝鮮は再び核・ミサイル実験を行った。朝鮮半島の情勢を見る際につくづく思うのは、北朝鮮に対して関係諸国が本気で政策を調整し向き合う力が相当衰えているということだ。したがって、このまま状況が進展すると、北朝鮮は次第に核とミサイル能力を高めていくだろう。どこかでこの悪循環を止めなければならない。今のこの時期は、リスクは非常に大きいが、一つのチャンスになり得ると考える」

 -現在、日米韓は、北朝鮮に対して強力な制裁措置を打ち出した。特に韓国は、開城工業団地の中断という極めて強硬なカードを出したが。

 「開城公団の中断は、(北朝鮮が)何をやってもこの事業を続けるわけではないという、韓国の明確な意図を示したという点で重要だったと思う。同時に韓国政府が北朝鮮の行動によっては(工団を)原状回復できる、拡大していけるという基本的な姿勢を持つ必要があるのではないか。政府のとる行動とは、最終的な結果を作り出すためのものであって、措置そのものが目的ではない。したがって、より長い目で開城公団を見る必要もあると思う。北朝鮮を相手にして軍事的な問題解決は不可能であるため、外交的な交渉のためのシナリオがなくてはならない。そうした計画があってこそ、強力な制裁措置が意味を持つようになる」

 -北朝鮮の核問題を解決するために実現可能なプロセスについては。

 「政策調整を通じて、日米韓の間で(問題解決のための)きちんとした計画を作らなければならず、中国もそれに含まれるべきである。交渉のための入口としては、『核・ミサイル実験のモラトリアム(凍結)』が考えられる。そこからスタートして6カ国協議の2005年の9・19合意に立ち戻り、それを実行できる具体的プランをもう一度進めることが望ましいのではないか。時間をかけずに、2005年に合意した様々な措置を執行していくための協議に入るべきだ。当時、合意が上手く移行されなかった一つの理由は、検証可能な核廃棄、すなわち検証措置だった。今まで日米韓は、北朝鮮が合意後も陰で核やミサイルを開発したのではないか、したがって信じられないという信頼性のギャップが非常に大きい。そのため、明確な制裁措置、協議のための前提、そして解決のための時間的要素など、明白なアクセント(強調点)のある枠組みのなかでの解決を、これから推進すべきだろう」

 -結局、重要なのは中国だ。現在、韓国内では、北朝鮮の核問題を解決するために中国の協調が必要な状況下で、朝鮮半島へのTHAAD配備を同時に推進したのは失策だったと指摘される。

 「中国は、THAADによって安全保障体制がダメージを受けるというロジックを打ち出している。しかし、北朝鮮が今のように核とミサイル能力を強化する状況のなかで、THAADのようなミサイル防衛を推進せざるを得ないという韓国の論理は正当だと思う。もちろん韓国は北朝鮮との距離が近いため、THAADが本当に有効なのかについての技術的議論もあり得る。

 問題の核心は北朝鮮の非核化であり、その議論に中国を引き入れることにある。何があっても必ず(朝鮮半島に)THAADを導入する、という必要はないかも知れない。昨年、香港の鳳凰テレビで米国や中国の専門家とテレビでの討論を行ったことがある。当時、ミサイル防衛とTHAADに対して激しい議論が行われた。中国がそれほど(THAADに対して)強く言うのであれば、中国は(北朝鮮を動かすための)梃子を持っているので、北朝鮮の核廃棄に役割を果たすべきである。現在、韓国の有力政治家が核武装の議論をしており、それは結果的に核のドミノ現象を起こし、日本と台湾にまで核が拡散するかも知れないという話が出ている。こうした状況下で、中国が『分かった、我々が北朝鮮に対して協議をし、具体的な解決のためのシナリオに協力する。その間はTHAADの議論を止めてくれ』と言うなら理解ができる。中国が自身の梃子を活用し、北朝鮮の核廃棄に努めるならば、韓国が核武装やTHAADの議論をしなくても済む」

 -これまで日米の一部では、朴槿恵政権の対中政策に対して「中国傾斜」ではないかという懸念を示してきたが。

 「私は、韓国が中国との関係を強化していくことは間違っているとは思わない。経済的に見ても、中国は韓国にとって極めて大きな市場だ。これはゼロサムの問題ではない。ただ、南シナ海など、中国が起こす諸問題について韓国がきちんとした立場を示さなかったり、対米・対日関係を軽視してまで中国に近寄るという印象を与えるのは間違いだと思う。政策の内容よりは、政策の説明の仕方の問題だ。韓国が中国と関係を強化することと、米国と安全保障関係や政治関係を強化することは両立しなければいけない」

 -理事長は、過去2002年、小泉純一郎主要の平壌訪問を導いた主役だ。当時、金大中政権は北朝鮮に対して太陽政策を推進していて、小泉首相は平壌宣言を通じて日朝国交正常化を試みた。しかし、これらの動きは米国のブッシュ政権によって挫折させられた。当時の日朝間の舞台裏交渉を主導した主役として、今の東アジア情勢を見る所感は。

 「先ほど、日米中韓が本気で政策協調をしなければ、問題を変化させるのは不可能だと指摘した。より長いプロセスから見れば、1994年に米朝が枠組み合意を結び、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)を作った。ブッシュ政権はKEDOを本当に嫌がっていた。それを作ったのがクリントン政権だったこともあり、ブッシュ政権は北朝鮮に軽水炉を提供することに極めてネガティブな認識を持っていた。今でも思い出すのだが、当時TCOG(対北朝鮮政策の調整のための日米韓3国間の政策調整監督グループ)という協議の枠組みがあった。そこで3か国が対北朝鮮政策の調整をしたが、「政権が変わったとして米国がこれに対して否定的な態度を示すのは間違いである」と明確に指摘したことがある。小泉訪朝の際にも米国との調整にかなり尽力した。北朝鮮問題を解決するためには(関係国の間に)相当な(国家間)政策調整がなくてはならない。

 金大中大統領はとても尊敬に値する方だったが、当時、米国との政策調整が十分でなかった。2002年9月、小泉首相の訪朝の際にも、米国のブッシュ政権はネオコンの影響力が強かったため、綱渡りをしているようなものだった。当時の(日朝が発表した)平壌宣言は、北朝鮮の核とミサイル問題を国際的な協議で解決しようとする内容だった。そのためには米国を引き込む必要があったが、かなり難しかった。一国の政府を(北朝鮮の核問題解決という)一つの目的に結束させることの困難さと言える。その結果、いま北朝鮮が4回に及ぶ核実験を行った状況にまでなった。これに関しては、米国が悪い、韓国が悪い、日本が悪い、というよりは、関係国間の強い結束と連携がなかったことが今の状況を生み出したと言いたい」

 -最後に、当時の小泉首相の訪朝直後、ジェームズ・ケリー米国務省アジア太平洋次官補が訪朝し、高濃縮ウランによる核開発の疑惑を提起した。そのため基本合意が破棄されることになるが、それに対しては米国が日朝国交正常化を妨げるためのものだったという陰謀論も提起されたことがある。

 「陰謀ではない(笑)。米国には非常に多種多様な意見が存在し、それらの多様な意見を持つ人々が競争しながら政策を作っていく。一つの意見だけが存在するわけではない」

東京/キル・ユンヒョン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-02-25 19:35

https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/732125.html 訳H.J

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