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競争社会韓国にうんざり... 大学生の“移民プロジェクト”

登録:2016-01-04 01:25 修正:2016-01-04 09:21
若者に公平なスタートラインを
大学生ミナ氏が昨年12月28日午後、ソウル西大門区庁旅券課で期限が切れたパスポートを更新している。ドイツ就業移民を夢見ている彼女は、今月末に短期コース研修のためにカナダに出国する予定だ=キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

 ソウルのK大学3年生のミナ氏(22)は、近い将来、ドイツに移住する夢を持っている。夢見ているだけではなく、具体的な実行計画も立てた。ドイツの航空会社ルフトハンザに入社し6年以上働けば永住権がもらえる。ルフトハンザは最初の2年間の契約を経た後、ドイツ語検定試験に合格すると、永久契約を結ぶことができる。彼女は「毎年韓国人を採用しているわけではなく、4年後頃、求人があるものと予想している。それまで就職準備に励む計画だ」と話した。

外国航空会社で6年働けば永住権 
4年後の試験を待ちながら移民に向けた勉強会 
「韓国ではやりたいことができない」 

移民掲示板には情報がずらり 
資金を用意するために移民のための頼母子講作る人たちも 
女性、就活生、革新性向に多い 
しかし、貧困層は移民の夢も見られず

 移民計画を立てることになったのは、極めて現実的な計算からだった。彼女も大企業への就職準備にすべてをかけてみようと一時期は考えていた。しかし、就職したとしても昇進など、次の関門のために無限の競争をしながら生きて行かなければならないと思うと、将来が恐ろしく思えた。韓国では仕事と家庭の両立が難しいうえ、やりたいことがあっても“女性”という点が足かせになる可能性があることも頭を悩ませた。ミナ氏は「大学2年生のときに『鄭周永(チョン・ジュヨン)創業コンテスト』に出て最終選考まで残り、投資を受ける直前に脱落したが、審査の際、髪の毛が長すぎるから切ってと言われた。話にならないと思った。いくら私がやりたいと思っても、ここではできないものがあると思った」と語った。

www.hellkorea.com  他の国へ直ちに移住できなくても、心はすでに“脱朝鮮”状態にある若者たちも多い。彼らの中には、移民に必要な資金を用意するための“移民頼母子講”を設けたり、外国語の勉強などのための“移民勉強会”を作るなど、積極的に取り組んでいる人たちもいる。就職して間もない新人ほど、関心が高い。ヘル朝鮮という言葉が流行ると共に、昨年開設されたインターネット・コミュニティ「ヘル朝鮮」()のベスト掲示板にも“脱朝鮮”のコーナーができた。ここでは、互いの脱朝鮮の情報を共有される。「米国市民権の利点」、「カナダに技術移民する方法」などの文が掲載されている。カナダの技術移民に成功したネチズンは、「情報技術(IT)業界の中でも(劣悪な勤務環境で)いわゆる『3Dターミネーター』と呼ばれるウェブ・エージェンシー分野で働いていた。長時間労働による疲労感は言い表せないほどだった」と、移民を決心した事情を綴った。彼は溶接で、カナダに技術移民に行く目標を立て、約6年間のトレーニングと実戦経験を積んで移民に成功した。カナダを選択したのは、教育や医療など福祉制度が整っているからだった。

 ミナ氏も移民にむけてドイツ語の勉強会を作った。昨年1月に「スペックアップ」など、若年層が多く訪れるウェブサイトを通じて共に勉強する人を募集した。ドイツにワーキングホリデーと技術移民、ドイツ留学などを準備している人たちが参加することになった。この勉強会では、語学の勉強以外にも脱朝鮮のための様々な情報交換や議論が行われる。一例として、昨年8月にドイツのメルケル首相が難民を受け入れる政策を発表した直後、勉強会では激論が繰り広げられた。ドイツの難民政策が本人たちの移民に不利に作用するか、有利に作用するかが関心事となったのだ。ミナ氏は「ドイツが難民を受け入れると、彼らにも仕事が必要きだろうから、移民を検討する韓国人の立場では不利になるという意見が多かった。全体的に賃金水準も低くなるかもしれないという懸念を示す人もいた」と語った。

 若年層の脱朝鮮心理は2015年12月4日から15日までに、ハンギョレと「大学の明日20代研究所」が実施した20代の若者215人に対する深層インタビューの結果にも現れた。今回の深層インタビューで(調査対象の)73%は韓国が住みづらく、外国で暮らしたいと思ったことがあると回答した。女性(女性79.2%、男性65.2%)や革新性向(進歩83.4%、保守73.3%)の人ほど(韓国を)離れたいという思いが強かった。

 興味深いのは、外国で暮らしたいと思うようになった理由だ。彼らは就職難に限らず、社会全般に対する不信感を示した。学歴や性別などによる差別、競争・序列社会、経済的な不平等に対する不満(外国暮らしを考えてみたことがあるとした回答者のうち27.2%)が最も多かった。脆弱な福祉制度(18.0%)と低賃金、劣悪な労働環境(15.0%)、就職難(12.6%)なども主な理由として挙げられた。

 若者たちは深層インタビューで、具体的に「海外でしばらく生活していたとき、韓国の学生よりも劣っているような人たちが、あまり苦労もせず言い暮らしをしているのを見た」(就活生K氏)、「(他の国に暮らすと)他の人と比べずに、生きて行けそうだ」(就活生N氏)、「未来の子供たちには、このような過熱した競争を経験させたくない」(会社員T氏)、「道に迷った政治のせいで、未来に希望が持てない」(大学生L氏)と話した。

 すべての人が、このような“夢”を見られるわけではない。親の経済力が“貧困層”に属すると答えた人の場合には、他の国で暮らしたいと思ったことがあるという回答が47.1%で、比較的に低かった。親の経済力が中の上以上(81.0%)と中の中(72.9%)、中の下(75.0%)と答えた人たちがそれぞれ70〜80%を示したのとは対照的な結果だ。親が貧困層だと回答した会社員のM氏は「外国まで行かなくても、近いところでもいいから旅行に出かけたい」と話した。「外国で暮らすのは今の状況では不可能なので、非現実的なことは考えないことにしている」(親の経済力が中の下と答えた大学生P氏)という回答もあった。

 チョ・ムンヨン延世大学教授(文化人類学)は、「若者たちが、本人が望むことを成し遂げようとしても、社会構造的に困難な状況で大きな無力感を感じる」とし「脱朝鮮は流行っているほど、実際に目に見える現象として活発に現れていなくても、これから始まるかもしれないことに注目すべきだ」と指摘した。

ファン・ボヨン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力: 2016-01-03 21:08

https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/724548.html 訳H.J

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