朴槿恵(パク・クネ)大統領のセウォル号事故当日の足取りについて、コラムを書いた加藤達也・産経新聞前ソウル支局長(49)に17日、無罪が宣告されることで、検察は「無理な起訴をしたのではないか」という批判を免れなくなった。言論弾圧論争と外交的波紋を呼ぶのが予見されていたのに、大統領府を意識して加藤前支局長の起訴を推し進めたからだ。
加藤前支局長に対する検察の捜査は、朴大統領の一言で始まった。昨年8月、加藤前支局長が朝鮮日報のチェ・ボシク記者のコラムを引用し、「朴槿恵大統領が旅客船沈没当日、行方不明に…誰と会っていた?」という題名で、セウォル号事故当日に朴大統領がチョン・ユンフェ氏と一緒にいた疑惑を提起したことを受け、朴大統領は閣議で「大統領に対する冒涜的な発言が度を越している」と非難した。続いて、大統領府が「民事・刑事上の責任を徹底して最後まで問う」と発表すると、検察はサイバー名誉毀損担当捜査チームを設け、保守団体による告発の直後に加藤前支局長を出国禁止するなど、極めて速いスピードで捜査を進めた。
朴大統領の「冒涜」発言以降
専任の捜査チーム設けてスピード捜査
パク・ギョンシン法学教授「有罪判決出たなら
人権侵害の事例として記録されただろう」
検察は、加藤前支局長の調査を終えてからも、起訴猶予と在宅起訴との間で最後まで揺れていたが、結局在宅起訴することにした。名誉毀損罪は、被害者の意思を確認できないと処罰できない反意思不罰罪であるため、当時、検察の起訴は朴大統領の“処罰(を望む)意思”が反映されたものと分析された。検察が、休日の前日の夜に、奇襲的に起訴したのも事件の波紋を最小化するための“小細工”と指摘された。
検察の起訴以降、言論団体は強く反発した。外信記者クラブは、検察の起訴直後にキム・ジンテ前検事総長に送った公開書簡で、「今回の起訴の決定は、報道機関の自由な取材権利を甚大に侵害する素地があり、韓国の言論環境に悪い影響を及ぼす可能性がある」と指摘した。法曹界でも表現の自由を萎縮させる恐れがあるとして、懸念を示した。加藤前支局長の起訴が有・無罪にかかわらず、報道機関と一般国民に心理的な“萎縮効果”をもたらし兼ねないということだ。
このような背景から、裁判所が加藤前支局長に無罪を宣告しながら「公的事案について、報道機関の自由を幅広く認めるべきだ」と明らかにしたことは意味がある。パク・ギョンシン高麗大学法学部教授は「加藤裁判で有罪判決が出たなら、世界人権機構の間で有力な人権侵害の事例として記録されただろう」と述べた。
韓国語原文入力:2015-12-17 21:12