登録 : 2015.09.01 10:46 修正 : 2015.09.05 21:11

11年ぶりに『韓国史の話』改訂版を出す歴史学者イ・イファ氏

歴史学者のイ・イファ氏=ハン・スンドン先任記者//ハンギョレ新聞社
 韓国史の叙述で一線を画す全22巻の膨大な韓国通史『イ・イファー韓国史の話』(ハンギル社編集)が刊行されてから約10年ぶりに改訂版が世に出された。

 「1994年に企画し、1995年から本格的な執筆を始めて10年後の2004年に刊行され、刊行から10年過ぎて再び改訂版を出した。当初の執筆過程では対応できなかった中国の東北工程問題を新たに扱い、日本軍慰安婦問題をはじめとする日帝の人力収奪、人権蹂躪などの国家犯罪による惨状をさらに詳しく載せた」

 本のタイトルに著者の名を刻み、単独執筆者であることを浮かび上がらせたこの本は、力を持つ支配勢力の政治史中心ではなく、一般民衆の生活史を中心に書かれた“口述調”の韓国史の先頭走者であり、初版が出版された当時から大きな関心を集めた。「58歳に書き始めて78歳の今、再び改訂版を出せた」。歴史学者イ・イファ氏(写真)の20年の労作かつ彼の代表作であり、今後もずっと続ける一生のライフワークになった本は、これまで300刷を繰り返し50万冊以上が売れた。

李承晩・朴正煕治世を合理化し
民主化運動を不満勢力に貶めるのは
絶対に許されない…強行時は大騒ぎに
就職をエサに慰安婦として連れ去り
後には面単位で割り当て、拉致のよう
日本当局とは関係ないとするのは嘘

 28日に訪ねた京畿道坡州市炭県面法興里のヘイリにある自宅書斎入口には、「蛟猶明也堂」と書かれた扁額がかかっていた。蛟は、蛟山・許(ホ)ギュン(竹カンムリに均)の号で、猶は、茶山・丁若鏞(チョン・ヤゴン)の号の与猶堂から、明は、緑豆将軍・全ボン準(チョン・ボンジュン、ボンは木へんに奉)の子、明淑から取った。そして也は、周易の大家だった也山・李達(イ・ダル)から取った。イ・イファ氏は李達の四番目息子だ。「今日の観点で歴史的事実と人物を再評価し、私たちの歴史を民族史、生活史、民衆史中心に再び書く」という彼の意志が書斎名からも読みとれる。

 イ氏は漢四郡の中心を大同江の平壌に置いた日帝官営史学を継承した「李丙ド(イ・ビョンド、ドは壽の下にれんが)とその我流」だけでなく、最初は満州地域中心を主張して北の民族史的正統性の確保を狙って壇君陵発掘などを前面に打ち出した韓国古代史の平壌中心説に固執する北朝鮮も批判する。そして「東北工程」後、遼河文明説で中国文明の東進を強調し、北方到来の韓民族の独自の文化建設(渤海含む)を事実上否定する中国の新たな攻勢にも彼は批判的だ。また、韓民族が古代に中国の遼東・華北一帯と漢江の南までを包括する大帝国を建設したとか、百済領域が中国東部地域にまで及んだとする、一部の韓国在野の史学者による「大百済説」の主張にも同意しない。「歴史解釈は常識から逸脱してはいけない」。彼が改訂版で気を使った他の分野は近現代史。正祖以来の「門閥政治が国を揺さぶる」(第16巻)から見ても、近現代史の比重は本の3分の1に及ぶ。

 「日本軍慰安婦募集で日本当局が直接関与したことも、強制連行したこともなかったという安倍政権の主張は嘘だ。日帝は軍慰安婦を募集する際、初めは政府や軍は直接姿を見せず、三菱などの日本企業らを前面に出して代行させたのは事実だ。しかしそれは、仕事に就かせると志願者を騙して連れていった詐欺だった。こうした詐欺でも必要な数を満たせなくなると、日帝は幼い朝鮮女性たちを強制的に連れていった。後には動員を面単位で割り当て、さらには井戸で水を汲んだり道を歩いていた幼い朝鮮の女性たちを拉致するように連れ去っていった」

 動員された性的奴隷は日本軍の食事と洗濯をする雑事まで強要された。「日帝は彼女たちに軍票というものを与えたが、敗戦後、その軍票やいくらにもならない強制労働貯金もすべて失くしてしまった。そして後の韓日協定後、『請求権資金』でその問題はすべて処理されたと主張する」

 イ氏は「中国では動員された慰安婦数が朝鮮人20万人、中国人25万と主張されているが、朝鮮人は中国人より多く、その数は10万人を超えたと見る」と語る。学徒動員などの徴兵と徴用、女性勤労挺身隊などの人材収奪史も大幅に補完した。

 イ氏は、植民史観への反発から、なんら役割を果たせなかった旧韓末の高宗(コジョン)と閔妃を美化するのは、無能と一族の腐敗などで、あの決定的な時期の歴史を失敗に追い込んだ彼らに免罪符を与えることになると指摘した。さらにイ氏は、封建的・身分的な尊王攘夷の限界から抜け出せなかった抗日義兵運動も低く評価し、東学革命と3・1独立運動を高く評価した。

 イ氏は、徹底した現場の調査と文献考証、各分野の専門研究者の助言を強調し、「私は原典に忠実な人間」と語る。ネットにある資料を活用して簡単に歴史書物を書く近頃の風潮に対する批判でもある。

 歴史教科書国定化の動きと関連し、「誤算だ。それは時代潮流に合わないことであり、絶対そうなってはいけない」と訴える。「そうなる可能性もないが、万が一、そんなことを押し切ろうとするなら、教学社の教科書問題の時とは比較にならない大きな問題になるだろう」

 「北朝鮮くらいしか採択していない歴史教科書の国定化は、親日・ニューライト勢力が、植民地近代化論・産業化勢力論を独立運動勢力・民主化運動勢力と対立させ、李承晩(イ・スンマン)と朴正熙(パク・チョンヒ)の治世を正当化・合理化するための装置だ。それは民主化運動勢力を不平不満勢力、使い道のない無能勢力に貶めることにより、民主化運動を傍観したり拒否してきた罪悪感とコンプレックスを隠し、自らを正当化させるためのものでもある」

 イ氏はまた、私たちには抵抗的、防御的、生存的な民族主義は今も有効であるとし、「民衆史観と民族史観は両立不可能だと主張し進歩勢力を批判する勢力は、進歩派史観をマルクス主義史観と同一視している」と語る。「私の史観はマルクス主義史観ではなく、イ・イファ史観だ」

 民族問題研究所が推進中の市民歴史観建設推進委員長も担う彼は「募金目標の50億ウォンのうち20億ウォン程度を集めた」と語った。

坡州/ハン・スンドン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-08-30 20:59

http://www.hani.co.kr/arti/culture/book/706607.html訳Y.B

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