ソウルのある小学校教師は2学期から学校で正式に使い始めた小学5年用社会科教科書を見て驚いた。110ページの「文化財を通じて高麗文化の優秀性を確かめてみましょう」に収録された挿絵(写真)に、食卓の上の高麗青磁の食器に赤いおかずが盛られていたためだ。この学校の教師5人が異口同音に「キムチ」と言うほどキムチの絵に見えるが、唐辛子は朝鮮末期に半島に入って来たというのが歴史学界の定説だ。 匿名を要請したこの学校の教師は「キムチだと断定はできないが、子供たちに高麗時代に真っ赤な唐辛子入りキムチを食べていたという混乱を与える怖れがある」と憂慮した。
8月31日、ハンギョレが朴槿恵(パク・クネ)政権になって初めて発行された国定教科書「小学5年2学期社会」を調べたところ、明白な事実誤記、混乱を与えかねない曖昧な表現、碑文などが随所で発見された。 小学校では5年2学期(前近代)と6年1学期(近現代)に習う社会科教科書が“歴史”科目だ。朴槿恵政府は児童たちの混乱を防ぐとして現行検定制の高校韓国史教科書の国定化を検討しているが、国定で発行した小学校歴史教科書が児童たちに大きな混乱を与えているわけだ。
同じ教科書の27ページには、学界で一般的に使わない曖昧な叙述に問題がある。 昨年5月に宝物1823号に指定された農耕紋青銅器の写真に「これを通じて古朝鮮の人々の栽培する姿を推察できる」という説明が付けられている。 しかし農耕紋青銅器は大田(テジョン)で出土したとされる遺物であり、大田は古朝鮮の勢力圏外にあった。 要するに農耕紋青銅器は古朝鮮の遺物とは見難い。 匿名を要請したある研究者は、「古朝鮮を大田まで拡大しないのが研究者の一般的な見解」として「農耕紋青銅器は古朝鮮時代よりは青銅器時代という表現が正確だ」と指摘した。
ただし、この研究者は「古朝鮮と青銅器が同時代なので同時代の遺物を通じて古朝鮮の人々の栽培する姿を推量類推することが完全に不可能だとは言えない」と付け加えた。
事実関係と正書法上の誤りも多かった。 91ページには「宋は唐末期の混乱期を勝ち抜いて中国を統一した」という説明が出ている。 歴史的に唐は907年に滅亡し、宋は960年に建国した。宋は「唐末期」ではなく「唐滅亡後」に中国を統一したという表現が正しい。
編修用語と教科書の表現が異なり混乱を与える事例もある。 国史編纂委員会の編修用語は「八万大蔵経」であるが、この教科書の112ページには別途説明も付けずに「陜川(ハプチョン)海印寺(ヘインサ)大蔵経版」となっている。 文化財庁は「国家指定文化財体系上は陜川海印寺大蔵経版が正しく、学術的には再彫大蔵経版などと呼ばれ、一般の人は八万大蔵経と呼ぶが、どのように統一するかは整理されていない」と説明した。
歴史科目に関心が高いある小学校教師は「小学校の教師たちは中学・高校とは違い該当科目の専攻者ではなく、教科書の誤りを指摘するのが難しいのに、教科書の正確性が落ちていて当惑している」と話した。さらに「国定の執筆体系が体系的でないと思われ、競争の激しい検定よりも劣った国定教科書が出てくるようだ」として「中学・高校教科書を国定化するのではなく、小学校も検定化しなければならない」と話した。 チョ・ハンギョン全国歴史教師会会長は「誤りは正誤表を配布して正すことが歴史を初めて習う小学生の混乱を最小化する道」と明らかにした。 歴史教育連帯会議は来週初めに小学5年2学期社会科教科書を総合的に分析し記者会見を行う。 ト・ジョンファン新政治民主連合議員もこの教科書の正書法上の誤りを分析した結果を発表する計画だ。