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[ニュース分析] 底なしの韓国防衛産業疑獄

登録:2015-07-20 09:58 修正:2015-07-20 11:09
軍事機密隠れ蓑に「軍マフィア」専横
3500トン級の水上救助艦「統営艦」が、2012年9月4日慶尚南道巨済市の大宇造船海洋玉浦造船所で進水式を行っている=大宇造船海洋提供//ハンギョレ新聞社

 昨年11月に防衛事業不正合同捜査団(合捜団)が発足して以来、防衛産業の不正が相次いで発覚している。合捜団は年末まで捜査を続ける方針なので、今後どれほど多くの不正が処断されるか見極め難いが、これまで明らかになったものだけでも、世論の批判は極度に高まっている。

合同捜査団が捜査した主な防衛産業不正事業(陸軍)//ハンギョレ新聞社

 合捜団が15日発表した中間捜査結果によると、明らかになった不正事業規模は9809億ウォン(約1060億円)にもなる。これまで起訴されたのも元海軍参謀総長の2人を含め、元国家報勲処長、現役および予備役将軍10人など63人に達する。海軍では、水上艦救助艦の統営(トンヨン)艦と掃海艦の音波探知機納品から海上作戦ヘリ購買に至るまで、最も多い8402億ウォン(約907億円)規模の不正が浮かび上がった。陸軍は特殊戦司令部(特戦司)の防弾服納品不正とK-11複合小銃納品不正疑惑などが物議を醸し、空軍は空軍電子戦訓練装備(EWTS)納品不正などで捜査線上に上がった。昨年4月のセウォル号沈没事故の際、統営艦を音波探知機の不良で救助現場に投入できなかった事実が発覚して大きくなった防衛産業不正疑惑で、合捜団の捜査が進み、陸・海・空全軍に拡大したのだ。

 防衛産業不正は今に始まったことでない。1993年の栗谷(ユルゴク)事業不正でイ・サンフン、イ・ジョング元国防部長官など軍首脳部が拘束され、3年後の軽戦闘ヘリ事業に関連してイ・ヤンホ元国防部長官の数億ウォン台の収賄が明らかになった。最近になっても、2011年にキム・サンテ元空軍参謀総長などが後輩現役将校から空軍戦力増加事業関連機密を聞き出し、ロッキードマーティンなど海外軍需業者に伝えた疑いで拘束され、2013年には軍需品生産業者が部品の試験・分析成績書255件を偽造した事件が発覚して問題になった。

2006年の防衛事業庁設立で
権力型不正は減ったが
領官級関連実務者の不正が増え
防弾服から救助艦まで闇取引

軍特有の閉鎖的な階級文化
情報独占による癒着関係が土壌に
構造的不正が相次ぎ

機務司令部が機能せず監督死角地帯に
軍は透明性強化対策を打ち出したが
内輪の慣行からの脱皮は困難

合同捜査団が捜査した主な防衛産業不正事業(海軍)//ハンギョレ新聞社

 防衛産業における不正が絶えないのは、軍特有の閉鎖的階級文化が影響しているためと分析される。上司の命令に服従する意志決定に馴染む軍文化で、上級者の指示は拒否しにくい。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の2006年に防衛事業庁(放事庁)が設置されたのは、こうした軍組織の特殊性に狙いを定めた措置だった。1990年代の「栗谷(ユルゴク)不正」等で、国防部長官や各軍総長など軍最高首脳部が直接関与した“権力型不正”が問題になり、軍高位級幹部の影響力で比較的自由な独立組織に獲得業務を任せることにしたのだ。

 放事庁は一定の成果を上げた。しかし権力型不正が減った代わり、実務を担当する領官級(佐官級)将校が関わる“実務者型不正”が増えた。実務者の権限が拡大し、業界のロビー対象も軍高位級幹部から領官級将校に移った。また、予備役が兵器仲介業者などの役員として活動し、現役の軍後輩にロビーする構造は変わらない。実際、今回の統営艦の不良音波探知機導入過程でも、キム予備役大領が当時のチョン・オクグン海軍総長と士官学校同期だったことを利用し、納品社のハケンコのロビイストとして活動したというのが検察の説明だ。

合同捜査団が捜査した主な防衛産業不正事業(空軍)//ハンギョレ新聞社

 防衛事業の機密性と閉鎖性も不正の背景になっている。事業自体が軍事機密に関連し、接近が制限されるためだ。国防部の中期計画や各軍の兵器所要計画など、機密として管理されるべき防衛事業関連内容は、事前に情報を得ようとする企業の主要な標的になっている。ここで軍事機密を巡る情報の取り引きが起きる。「ディフェンス21プラス」のキム・ジョンデ編集長は「退職者、実務者、需要軍、業者による癒着関係は、情報独占性にともなう“軍マフィア”あるいは“防衛マフィア”と認識される十分な素地がある」と語る。その上、不正の過程での軍事機密流出捜査やセキュリティーの点検を担うはずの国軍機務司令部要員は、本来の役割を果たすことができなかった。特に空軍電子戦訓練装備(EWTS)導入不正に関わった日鉱工営の機務業務を担当した機務要員は、賄賂を直接受けとって軍事機密を提供しており、猫に魚を持たせたようなものだった。

 政府は遅れて対策の準備に乗り出した。国防部は昨年11月に防衛事業革新専門担当チーム(TF)を構成し、軍納不正申告の報奨金を最大5億ウォンまで支給するなど、モニタリング強化などを内容とする対策を打ち出した。また、先月には透明性と専門性、効率性強化を目標に、循環型職務管理と情報公開拡大、不正者の処罰強化、防衛産業指定制度の整備など18の長・短期改革課題も選定した。

 放事庁は今年はじめの課長級人事で、事業管理本部の現役軍人のチーム長比率を70%から50%に減らす大幅な人事を断行した。特に今回の合捜団の捜査で最も問題になった艦艇事業部の場合、8チーム長のうち海軍のチーム長を6人から2人に減らし、公務員4人、陸・空軍から1人ずつ任命した。また、5月には2017年まで現行49%の軍人比率を30%に縮小し、公務員比率を70%に拡大する組織改編案も出した。“仲間きり”の文化を変え、軍での先輩後輩の関係から生まれる不正の土壌を減らす狙いがある。

 これに対して軍内部では「陸軍や空軍出身者が知りもしない海軍艦艇の事業をするのは非効率」と批判している。しかし放事庁関係者は「獲得業務一般に対する経験と専門性さえあれば、業務推進に支障はない。むしろ新しい見解で、今まで無批判に通用した慣行をチェックし改善していける可能性がある」と反論した。また、放事庁の組織改編により、2017年まで各軍に戻らねばならない軍人300人の処遇問題などを巡り、軍内の反発をどう抑えるかも今後の課題として残っている。

パク・ビョンス先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-07-19 21:36

https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/700890.html?_fr=mt2 訳Y.B

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