10年近い記者生活の半分以上を検察に出入りし、多くの事件を取材して来ましたが、今回ほど五里霧中、正体不明な人物が登場するのは初めてです。 日光グループ イ・ギュテ会長の正体はなんでしょうか? 彼の背後には誰がいるのでしょうか?
防衛事業不正政府合同捜査団(団長 キム・キドン)は、捜査開始から4カ月後に武器仲介商である日光グループのイ会長を拘束しました。 2009年、トルコの防衛産業企業が生産した空軍電子戦訓練装備を導入する過程で仲介料を水増しし、何と500億ウォン(約55億円)も横取りした容疑です。これまで防弾チョッキ・野戦ジャンバー入札不正など“ウォーミングアップ”に近い捜査をしてきた合同捜査団がついに“作品”を出した感じでした。
武器仲介商は巨大軍需企業と政府を結びつける強力なブローカーです。 数百、数千億ウォン台の契約を成功させるブローカーになるためには、有力政治家や軍将軍との人脈が必須でしょう。イ会長が引き出したという500億ウォンを一人占めしたわけではないだろうという推測が可能です。合同捜査団の捜査は500億ウォンのパイを分けて食べた周辺人脈に伸びていくものと予想されます。
イ会長は韓国の1世代武器仲介商として屈指の人物です。彼は1985年に初めて武器仲介業に参入したことが分かっています。 彼は警察幹部候補29期で、30代半ばまで警察組織に身を置いていたことが分かっています。 軍出身でもない彼が、一般人にはなじみのうすい武器仲介業に飛び込んだ背景はよく分かっていません。 イ会長は何らかの契機で武器仲介商に変身し、1世代武器仲介商の中で最も広く知られたチョ・プンオン氏とともに「次世代戦闘機導入事業」(FX事業)に飛び込みます。 彼らはフランスの戦闘機である「ラファール」(ダッソー社製)側の代理人として活動しました。 当時、与党の要人がラファールを推したという疑惑がありました。 今でもイ会長の背後は金大中(キム・テジュン)政権当時の主要人士だという噂が絶えません。
イ会長は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時期の2003~2006年、2次ヒグマ(旧ソ連製兵器導入)事業でも名前を広く知られました。 旧ソ連に提供していた借款を兵器導入で棒引きしようとする事業ですが、ロシアの企業側代理人で3億ドル規模の空気浮揚艇と対戦車誘導ミサイル納品契約を成功させました。 手数料だけで2300万ドルを得たといいますが、この時“ヒグマ(熊)”というニックネームも得ました。 篤いキリスト教信者であるイ会長は、この時に受け取った手数料から800万ドルを会社の収益金として処理せずに、本人が通っている教会に寄付金として出した後に返してもらった容疑で有罪判決を受けもしました。 武器仲介商としての彼の全盛期はこの頃ではなかったかと思います。
ところでイ会長はその後も政権の去就と関係なく常勝疾走します。 武器仲介という事業自体が政権の影響から自由でいることは困難ですが、李明博(イ・ミョンバク)政権に変わっても彼は健在でした。 イ会長が拘束された容疑も李明博政権の2009年に締結された事業でした。 李明博政権の初期には国税庁の特別税務調査を受けましたが、復活して武器仲介商としての命脈を維持しました。そのイ会長がその後、大衆に顔を知らせ始めます。 彼はソウル・城北区と共にフードバンク事業を始め、大衆を相手にした無料コンサートを主催したりもします。 日光ポラリスという系列会社を作り芸能事業にも参入します。 2014年には大鐘賞映画祭の組織委員長になり、授賞式場にも顔を出しました。 徹底的に地下で活動するのが常の武器仲介商から、最も強いスポットライトを浴びる文化・芸能系統に種目を広げたわけです。 本当によく分かっていない彼の行動については、背後にいる人物に関する推測だけが乱舞している状況です。
最近では女優クララとのカカオトーク・チャットで有名税を払いもしました。 ロシア、フランス、トルコの軍需企業を代理して韓国政府の実力者を相手にした彼が、あろうことか女優と言い争って恥をかいた格好になりました。 業種を拡大したことを地面を叩いて後悔しているのかも知れません。 噂では長男が芸能事業をしてみたくて日光ポラリスを設立したと言いますが、拘束されるに及んで息子の頭でも突こうというのでしょうか。 とにかく合同捜査団としてはイ会長を拘束し“花見劫”を握ったようです。 武器仲介業も芸能事業も政府当局者の影響力が強い業種です。 政権を行き来して常勝疾走してきた彼の背後を洗えば、何も出てこないで済むでしょうか? 合同捜査団の捜査結果を待ってみます。