登録 : 2015.06.29 11:51 修正 : 2015.06.29 16:21

蔚山長生浦鯨特区

長生浦の鯨文化広場にあるコククジラの模型。コククジラは冬にオホーツク海から東海を経て東シナ海で子を産み、3~5月に再びオ北上する時に蔚山近海で姿を見せた。乱獲で1977年以後姿を消した=シン・ドンミョン記者//ハンギョレ新聞社
 スチーブン・スピルバーグ監督の映画『インディ・ジョーンズ』のモデルとなったことで知られるアメリカの考古学者兼探検家のロイ・チャップマン・アンドリュース(1884~1960)は、1912年に鯨を探し求めて日帝強制占領期の蔚山(ウルサン)長生浦(チャンセンポ)までやってきた。アンドリュースは「韓国コククジラ(Korean Gray Whale、韓国名:お化けクジラ)」を学界に報告して世界に知らせた。コククジラは1977年以降、韓国内で“お化け”のように姿を消し、かつて現れた場所には「蔚山お化け鯨回遊海面」(天然記念物第126号)という名前だけが残っている。

捕鯨中断後に衰退した入り江
7年前の鯨特区指定で活気取り戻す
今年の鯨祭りに66万の人出
別の網にかかって死んだ混獲
鯨肉屋70店は盛況
区庁「鯨食卓広報館」設立
需要増え不法捕獲を助長
「食べることより多様なコンテンツを」
「姿を消したコククジラ振り返らねば」

■ 長生浦に再び増えた鯨肉屋

 蔚山市南区にある長生浦港は韓国捕鯨の前線基地だった。国内の捕鯨は1889年に大韓帝国がロシアと共に捕鯨基地を作り始まった。1986年に国際捕鯨委員会(IWC)が絶滅危機の鯨保護のため商業捕鯨を禁止する前まで、長生浦港は「犬も1万ウォン札をくわえて歩く」と言われるほど栄えた。捕鯨中断後、村は急速に衰退し、1万人を超す住民は90年代に入り1000人を下回った。網にかかって死ぬ、いわゆる混獲された鯨を競売にかけて解体して売る3、4店の鯨肉屋だけが、捕鯨の村の命脈をかろうじて保ってきた。

 そんな村が2000年代後半から鯨で復興している。2008年7月の地域特化発展特例法により、政府が長生浦一帯162万平方キロメートルを国内唯一の鯨文化特区に指定し、2005~2009年には特区内に鯨博物館、国立水産科学院鯨研究所、鯨生態体験館、そして鯨の海旅行船までできて観光客が増えた。今年5月には長生浦にあったかつての捕鯨の村を再現した鯨文化の村もオープンし、高さ150メートルのホテル型鯨灯台を作る計画もある。蔚山南区のイ・ジェソク鯨観光課長は「鯨博物館と生態館観覧客が1年60万人を超え、今年の鯨祭りには66万人が長生浦を訪ねた。捕鯨中断後に減った住民数も約1300人に増えた」と胸を張る。

■ 鯨祭りが問題

過去5年間で混獲された鯨 (単位:頭)//ハンギョレ新聞社
 観光客が増えて鯨肉屋も増えた。長生浦住民のチョン氏は「鯨肉だけ売る専門店が20店を超え、他のメニューと一緒に鯨肉を売る食堂まで含めば70店になる」と話した。鯨は捕れないのに鯨肉屋はなぜ増えるのか。

 国際捕鯨規制協約により、国内水産業法などは人為的に鯨を捕まえる行為に対し3年以下の懲役または3000万ウォン(約330万円)以下の罰金刑で規制している。しかし他の魚を釣るための網に鯨がかかって死ぬ混獲に対しては、海洋警備安全署が鯨流通証明書を発行して鯨肉の売買が認められる。

 このため長生浦を含む蔚山では、捕鯨禁止後も制限的ではあるが鯨肉を売買し食べることができた。長生浦鯨文化特区の指定で1995年から毎年長生浦で開かれる蔚山鯨祭りに観光客が集まりだし、この一帯の鯨肉屋も活況を呈すことになった。

 蔚山環境運動連合は5月末、長生浦鯨祭りの現場をモニタリングし、祭りを主催した蔚山市南区が鯨食卓広報館を開き「鯨肉12種類の味」と共に、茹で肉、煮物、干し肉などの鯨料理を広報し、“鯨文化”を名乗る団体が鯨肉を売っているのを確認した。モニタリングに参加したジャンキム・ミナ氏は「祭りのイベント会場で鯨肉が売られ誰もが容易に接することができるのだから、好みだろうが好奇心だろうが、鯨肉消費は増えるほかない。その需要に合わせようとすると混獲では足りず、法律を犯してでも鯨を捕えることになるだろう」と指摘した。これに対しイ・ジェソク南区鯨観光課長は「鯨食卓広報の重点は鯨肉ではなくイワシやサバなど、鯨が食べる餌を主材料にした食べ物」と弁明した。

 蔚山海洋警備安全署は今年の鯨祭りを前後して鯨を不法捕獲した疑いで、漁船2隻の船員14人を逮捕し5人を拘束した。彼らが捕えた鯨は摘発されただけでも、昨年11月から今年4月までミンク鯨10頭とイルカ20頭余りになる。ユン・ソンギ蔚山海上警察海上捜査情報課長は「鯨祭りを控え不法捕獲が盛んに行われている。銛を投げやすく船を改造し、鯨に絞って漁をする漁船だけでも蔚山で10隻ほどになる」と明かした。ユン課長は「鯨を捕まえたら現場で解体し、鯨はもちろん捕獲装備まで浮漂を浮かして海中に隠してくるので摘発は容易ではない。拘束しても初犯は2、3カ月後に執行猶予にされ、再犯以上でも1年ほど過ぎれば釈放されて、また鯨捕りに出る」と語る。ミンク鯨1頭が数千万ウォンから1億ウォン(約1100万円)で取り引きされるので需要は衰えず、処罰も軽いから不法捕獲の根絶が難しいというのだ。

■ 混獲許容をどう見るべきか

 オ・ヨンエ蔚山環境教育研究所代表は最近「混獲された鯨の流通を許容する政策が(混獲を口実にした)不法捕獲を誘発することになるかもしれない」と語っていた。オ代表は先月27日、蔚山大鯨研究所と韓国鯨文化学会が開いた鯨学術大会で「今年の国際捕鯨委に報告された資料に鯨混獲の87%が韓国と日本で集中発生したと発表された。混獲の有無判定が肉眼と金属探知器にだけ依存して粗末なうえ、混獲された鯨の流通を許容することに問題がある。混獲を厳格に区別し、これを防ぐ監視体系と漁具開発が必要で、鯨肉流通も防がなければならない」と指摘した。

 アン・ドゥヘ国立水産科学院鯨研究所長は「混獲や座礁・漂流した鯨に対する救助や回復措置を義務化した法規定もある。だが、漁民が混獲された鯨を救助するには、網や漁具の被害を受け入れるしかないが、網にかかった鯨が死ぬまで放っておいてから申告すれば大金を得れることができる現実があり、実効性は期待し難い。アメリカやオーストラリアのような反捕鯨国では混獲が発生した漁場は鯨保護のため閉鎖してしまう」と指摘した。アン所長は「韓国海域ですでにマイルカやコククジラのような大型鯨はほとんど姿を消したが、遠からずミンク鯨まで見るのが難しくなるかもしれない」と憂慮した。

5月末に開かれた蔚山鯨祭りの鯨食卓広報館内部。茹で肉、煮物、干し肉などの鯨肉料理を模型で展示し、環境団体から鯨肉消費を誘うと指摘された=シン・ドンミョン記者//ハンギョレ新聞社

 一方、イ・ジェソク南区鯨観光課長は「日本やノルウェーのような国では自国利益のために鯨を捕えることさえしている。混獲された鯨の流通まで防ぐことはない」と反論する。チョン・ウィピル蔚山大鯨研究所長も「鯨は海洋生態系食物連鎖の最高峰にあり、科学的調査に基づいた適切な個体調節は必要だ」と強調した。チュ・ポンヒョン韓国鯨文化学会長も「蔚山盤亀台(パングデ)岩壁画の鯨狩猟場面からも分かるように、鯨肉は古くからの伝統食文化の一つ」とイ課長と似た見解を示した。

 だが、チョン所長とチュ会長は長生浦の鯨祭りや鯨文化特区運営に関連し、鯨食文化より鯨に親和的な多彩な養殖の文化・観光コンテンツの開発を訴える。チョン所長は「長生浦鯨文化特区でハードウェアのインフラは揃ったが、鯨をテーマにしたコンピュータゲームやストーリーテリング、デザイン、音楽など文化芸術方面の様々なソフトウェア開発も続いて行うべき」と指摘した。チュ会長は「経済的観点からも鯨食文化や一時的な祭りより、鯨と親和力を高めることができる常時的な見どころと観光事業側に実益がある」と考える。

 こうした脈絡から「蔚山生命の森」のユン・ソク事務局長の指摘は示唆する点が多い。「鯨も子を産むと人のようにワカメをかみ切って食べる。長生浦鯨祭りと鯨文化特区が伝統性と文化性を備えるには、今まで鯨のおかげでどれほど豊かさを享受でき、どんな文化を育てられたのか振り返り、犠牲になった鯨に感謝して追慕できるようにすべきだ。コククジラが姿を消したことに対し反省し、また戻ってこれるような方法を探るべきではないだろうか」

蔚山/シン・ドンミョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2015-06-28 20:46

http://www.hani.co.kr/arti/society/area/697888.html訳Y.B

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