中東呼吸器症候群(MERS)コロナウィルスの密接接触の範囲と潜伏期間など、学界に報告された内容が韓国の状況とかなり異なっていることが確認されている。MERSウイルス感染に関する情報を綿密に再検討し、防疫対策を立て直すとともに、国民に正しい情報を伝えるべきだという指摘が出ている。
保健福祉部の中央MERS管理対策本部(対策本部)は9日、「ソウル峨山(アサン)病院で6番目に感染が確定した患者(71・死亡)と10分程度接触した保安要員(27・92番目の患者)に陽性反応が出た」と発表した。これは、対策本部が防疫対策を立てる際に設けた「患者と1時間以上接触すると感染」という設定が間違っていたことを示す。サムスン・ソウル病院の緊急治療室で14番目の患者から感染した35番目の患者(医師)も、緊急治療室に40分も滞在しなかったのに、MERSに感染した。これに対し、チョン・ウンギョン疾病管理本部疾病予防センター長は「患者の症状が激しく、ウイルスを多く分泌する時期には、短い時間でも近接距離にいた場合は感染する可能性がある」と述べた。
MERSは「飛沫(鼻水・唾液など)で感染されて感染力が弱い」とし「2メートル以内」を密接接触範囲に設定したのは、すでに京畿道の平沢(ピョンテク)聖母病院で病室の外で2次感染が発生したことで、誤った判断であることが明らかになった。それでもサムスン・ソウル病院は、14番目の患者(35)が救急治療室に留まった時に接触した人々の範囲を狭く規定し、14番目の患者の近くにいなかった35番目の患者(38、サムスン・ソウル病院の医師)に高熱の熱症が現れるまで、隔離対象に含まなかった。現実と合わない防疫範囲の設定を、機敏に修正して伝えなかったため起きた事態だ。
対策本部は、また、外国の事例などをもとにMERSウイルスの潜伏期間を2日から14日までと発表してきた。これを根拠に、サムスン・ソウル病院関連の発症事態は、潜伏期間14日が終わる12日頃には終息するとの見通しも出ている。しかし、平沢聖母病院では、最大潜伏期間14日が終わった先月31日以降、患者3人から症状が現れた。最も長いもので18日後にも発症した事例がある。対策本部はいまだに潜伏期間14日を患者の完治や感染が疑われる患者が発症したかどうかなどに対する判断基準としており、見直しが必要だと指摘される。
患者の感染力が最も高くなる「スーパー伝播」の時期について、対策本部は「発症後5日から7日の間に咳・くしゃみをする際に、ウイルス量が最も多く出てくる」と説明した。しかし、6番目の患者の場合、先月24日に発症してから2日後26日、ソウル峨山病院に寄って保安要員と家族(47、婿、88番目の患者)にMERSを広げた。
チェ・ウォンソク高麗大学鞍山病院感染内科教授は「医療機関の内部には、病院の外の地域社会との条件が異なる場合があるにもかかわらず、密接接触範囲をあまりにも狭く設定したのが防疫失敗の原因だった。潜伏期間も外国の疫学データに基づいたものであり、韓国の資料をもとに新たに設定する必要がある」と述べた。
一方、対策本部はこの日、「MERS確定患者に新たに8人が加わり、合わせて95人に増えて、死者も1人追加発生した。追加発生患者は、サムスン・ソウル病院で3人、ソウル峨山病院と汝矣島(ヨイド)聖母病院で2人、京畿道華城(ファソン)市の翰林大学東灘誠心病院で2人、大田コンヤン大学病院で1人などだ」と発表した。患者1人は完治して退院した。
朴槿恵(パク・クネ)大統領はこの日午前の閣議で、「MERS遮断の最大の峠が6月中旬までという。政府と医療界を含む全国民が一致団結し、総力をあげて対応していけば、MERSを早期に終わらせることができるだろう」と強調した。これに先立ちチェ・ギョンファン首相代行も同日午前、政府世宗(セジョン)庁舎で初めての汎政府MERS毎日点検会議を開き、「現状は、感染症の危機警報の『注意』段階であるが、地域社会における感染の可能性を未然に防止するために、『深刻』段階レベルで対応する必要がある」と明らかにした。
韓国語原文入力:2015-06-09 18:56