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大統領府、国会法改正の与野党合意を三権分立に背反と居直り

登録:2015-05-30 01:54 修正:2015-05-30 07:18
 「政派的利益議論」露骨に非難
 ユ・スンミン「何が三権分立背反か」一蹴
 “親朴”以外は与党内で冷たい反応
朴槿恵大統領が29日午前、大田の韓国航空宇宙研究院で自律走行車に乗り手を振っている(左)。ユ・スンミン、イ・ジョンゴル与野党院内代表が29日午前4時まで続いた国会本会議で疲れた表情を見せている(右)=大田/青瓦台写真記者団、イ・ジョンウ先任記者//ハンギョレ新聞社

朴大統領が拒否権を行使しても
国会で再議決すれば法律確定

 29日未明、与野党が公務員年金法改正案と共に、政府の施行令などに対する国会の修正・変更権限を強化する国会法改正案を処理すると、大統領府が直ちに「権力分立原則に反する素地がある」と強く反発した。 大統領府は「セウォル号特別法施行令」修正を念頭に置いた与野党の国会法改正に対して、「政派的利益議論」と「そのために裁判所の審査権と行政立法権を侵害した」として、国会に向かって露骨な非難を浴びせた。 だが、大統領府の主張とは正反対に、立法府が用意した法案の趣旨を政府が別の施行令を通じて事実上無力化させることの方がむしろ三権分立精神を傷つけているという指摘も出ている。

 大統領府の反発は今月初めに与野党が公務員年金法処理とともに「国民年金所得代替率50%明記」に合意した際に出てきた反応と同じパターンだ。 陣痛の末に議会が合意案または、折衷案を用意しても、その度に政府がブレーキをかけることが繰り返され、政界では大統領府が議会の権限に過度に干渉しているという批判が提起されている。 「大統領府と国会」、「大統領府と与党」が対立する“三角葛藤”のゴールもさらに遠くなる見込みだ。

 キム・ソンウ大統領府広報首席はこの日午前のブリーフィングで、「法律を執行するための政府施行令を国会が思うままにできるようにした国会法改正案は、政府の固有な施行令制定権まで制限するもので政府の機能が事実上マヒ状態に陥る憂慮が大きい」として「国会は政治的利益を得ようとするのではなく、三権分立に基づいた立法機構である以上は国会法改正案を政府に送付するのに先立ち再度綿密に検討することを願う」と述べた。 キム首席はまた、与野党の交渉に対しても「政界が公務員年金法交渉で本質を外れて、初めは国民年金を連係させ、法人税引き上げ、保健福祉部長官解任建議案、後でセウォル号特別法施行令問題まで連係させた」として「国民と国家財政が苦しいこの時点に政派的利益を議論するのはあってはならないことであり、国民に失望と苦痛を与えること」と激しく非難した。

 大統領府の反発に対する与野党の反応は概して冷たい。 野党のみならず与党内部でも一部の親朴槿恵系議員を除けば「大統領府が行きすぎた反応を示している」というのが大勢の雰囲気だ。 今回の合意をリードしたセヌリ党ユ・スンミン院内代表は、大統領府の「権力分立の原則背反」とする主張に対して「どの部分が三権分立に反すると言っているのか理解に苦しむ」と一蹴した。彼は「法律と施行令の間に生まれる衝突問題に対する最終判断は大法院(最高裁)がすることで、その条項(修正要求権)が過度に乱用されて政府が仕事を出来なくなることは全くない」として「是正要求自体も与野党が合意しなければならないことで、国会が政府の作る施行令のすべての条項に干渉するわけでもないのに(大統領府が)過度に解釈している」と反論した。

 今回の与野党交渉の一方の当事者であったイ・ジョンゴル新政治民主連合院内代表も「(大統領府は)憲法をよくご存知ないようだ。憲法的均衡意識も喪失されているのでないかと思う」と指摘し「(国会法改正案は)憲法の精神を実現し、現状で壊れている権力分立の均衡を復元できる最後の脱出口と考えて作った法」と強調した。

 立法府が政府に施行令の改正を要求できるよう変えた今回の国会法は、事実上「セウォル号特別法施行令」の改正を念頭に置いたものだ。 政府と民間が共に調査委員会を作り、セウォル号事故の真相究明をするよう特別法を作ったが、海洋水産部が施行令に公務員(派遣検事)に調査を主導させて、法の趣旨に逆らったことが今回の国会法改正議論の出発点だった。 セウォル号遺族と市民社会が一貫してこの施行令の廃止または改正を要求したが、朴大統領と政府が“無視”で一貫したために、結局与野党が国会法を改正するに至ったわけだ。 今回の国会法改正案表決で、在籍議員の3分の2を軽く超える211人の議員が賛成したことも、与野党合意を尊重しようという意図もあるが、政府のこうした“越権”に対する与野党議員の問題意識が作用した側面も大きい。 大統領府がこれを「(政府の)権限侵害」であるとか「(政界の)政派的利益にともなう議論」と主張することは行き過ぎた行政府中心思考だという批判を避け難い。

 キム・ソンウ広報首席は「朴大統領が改正された国会法に対して拒否権を行使する可能性はあるか」という記者の質問に「色々な可能性を多角的、総合的に検討する」と明らかにした。 だが、大統領が拒否権を行使しても在籍議員の過半数の出席と出席議員の3分の2以上が賛成して再議決すれば法律として確定する。 すでに在籍議員3分の2以上が賛成した法律を拒否して再議決されれば、政治的に致命傷を受けるだけでなくレイムダックが加速化しかねない。 ファン・ギョアン首相候補者の人事聴聞会を控えた状況なので危険の負担も大きい。

 これに伴い、大統領府が実際に国会法改正案に対する大統領拒否権を直接行使することは現在では容易ではないと見られる。 ただし大統領府の内部では、憲法裁判所に権限争議審判を請求する方案も考慮中だといわれ、当分は常任委次元のセウォル号法施行令改正議論を見守りながら対策を講じる可能性は残っている。

ソク・ジンファン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/693510.html 韓国語原文入力:2015-05-29 21:08
訳J.S(2566字)

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