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福祉の重複を防ぐため逆に停滞させてしまう韓国福祉部の「調整制度」

登録:2015-03-20 00:02 修正:2015-03-20 07:40

 横城郡の低所得高齢者を対象とする補聴器支援推進に
 福祉部「健保支援金より多過ぎる」とブレーキ

 予算浪費防止のための社会保障調整制度が
 自治体の福祉拡大を阻む障害に
 福祉部、昨年81件中33件のみを受容

補聴器を使っている老人。 資料写真//ハンギョレ新聞

 江原道横城(フェンソン)郡は昨年、耳が聞こえない低所得層の高齢者に一人当たり最大150万ウォンの補聴器購入費を支援しようとした。 しかし保健福祉部は、聴覚障害者に支給する医療給付(34万ウォン)や健康保険の支援金(27万2千ウォン)に比べて金額が過度に大きく、選定基準も曖昧だとしてブレーキをかけた。 結局、横城郡は補聴器購入費の支援を放棄した。

 横城郡庁関係者は18日「横城郡の基礎生活受給者・次上位階層(そのすぐ上の階層)・医療給付受給者のうち、65歳以上の聴覚障害者は28人だが、日常生活での対話が不可能で、家族もいない方たちだ。使用に耐える補聴器は120万~130万ウォン(1円=9ウォン)程度するが、この方たちは34万ウォンの支援を受けても残りの金を調達することはできない」として、「自治体首長が地方議会や政府の同意を得ずに支援すれば選挙法違反になる可能性があり、事業を諦めざるを得なくなり残念だ」と話した。 福祉部関係者は「補聴器を買ってから実際には使わずに転売し、得た金をポケットに入れる可能性があるという専門家の指摘も考慮した」と説明した。

 福祉部がこのように地方自治体の福祉事業に介入できる根拠は、「社会保障制度協議・調整制度」だ。 2013年1月から施行された社会保障基本法により、社会保障制度を新設したり変更しようとする中央行政機関や地方自治体は、福祉部と協議し決定しなければならない。 事業効果が不明確で住民の歓心を買うような制度を防止し、類似或いは重複した福祉事業を整理して不要な財政支出を減らすという趣旨だ。 昨年、福祉部は81件を協議・調整して19件を「不受容」、33件を「受容」とした。

 福祉部は地域間の公平性を阻害する追加給付や、同一受給者に対する類似給付、政府財政に影響を与える自治体事業などは原則的に受け入れないという基準を置いている。 しかし、この制度が自治体の福祉事業の多様化・拡大を妨げ、地方自治制度の趣旨を損ねる弊害を生んでいるという不満が出ている。

 大邱(テグ)広域市も昨年、障害者活動支援サービスの支援時間を24時間まで増やす事業を推進したが、福祉部の「不受容」通告を受けた。 一人では全く動けない重度障害者8人に追加支援するのに必要な費用を100%市費で負担する計画だったが、福祉部は、サービス受給者と非受給者間の公平性問題などを理由に認めなかった。 大邱市庁関係者は「一人では動けない障害者が一人でいて火災に遭ったりすることを考えて、追加支援策を作った」として「不受容決定によって、活動支援時間を減らしたり、個人に負担を負わせる形に事業を練り直さなければならないが、障害者たちの反発が予想され悩んでいる」と話す。

 公州大学のイ・ジェワン教授(社会福祉学)は「中央政府は自治体首長による住民の歓心を買おうとするような行政が憂慮されると言うけれども、それについては地方議会が牽制の役割を果たしている。 社会保障調整法で政府が自治体の福祉事業に歯止めをかけるのは、地方自治を無力化させる面がある」として、「福祉部は、服を一枚着たけれど寒いので、上着をもう一枚着せようとすることを重複と判断している。 中央政府が埋められずにいる福祉の隙間を地方自治体が自律的に埋めることができなければならないのに、他の自治体に影響を与えかねないといった理由で待ったをかけるのは、公平性の維持ではなく下方平準化だ」と診断した。

パク・スジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/rights/682918.html 韓国語原文入力:2015/03/18 22:15
訳A.K(1675字)

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