2日、韓国租税財政研究院の報告書「所得分配の変化と政策課題:所得集中度と所得移動性分析を中心に」で示された通り、低所得層の中流階級への階層上昇がますます困難になっているのは、福祉政策が脆弱な中で非正社員など働き口の質が落ちて、老人貧困層が深刻であることが大きな要因になっている。
低所得層とは中位所得(すべての世帯を所得順に列べた時、ちょうど真ん中の世帯の所得)の半分以下である階層をいうが、4人世帯基準で月間所得が約215万ウォン(2013年基準)程度だ。一般的に低所得層は資産がなく、中流階級になるための事実上唯一の経路が働き口だ。 だが、韓国労働社会研究所の資料によれば、非正社員が852万人(2014年8月基準)で労働者全体の45.4%を占めている。 雇用も不安だが賃金は正社員が100万ウォンである時に49万9000ウォンにとどまっている。 最近、雇用率は増加しているが、50~60代高齢層の働き口が主に増えるなど、働き口の質が低下している。 また、大企業と中小企業、男性と女性の間の格差が激しく、零細自営業者も多いために階層移動が容易でない状況だ。
韓国租税財政研究院の報告書は、政府の福祉政策が階層上昇を助けていると分析した。 会社に通って受け取った給与や商売をして稼いだ金を意味する市場所得(賃金)基準で見れば、2008~2012年までずっと低所得層に留まっていた人の比率が全体の21%である反面、“公的移転所得”(福祉政策)を合わせた総所得基準では18%で3%p低い。 低所得層が中産層に抜け出た比率も市場所得基準では6.7%だが、福祉政策が反映された総所得基準では7.7%で1%p高い。
これは現在脆弱な水準である韓国の福祉政策を拡大すれば、階層移動がより促進できるという意味にもなる。 個人に提供される福祉恩恵を全てお金に換算して加えた数値である社会賃金を見れば、韓国が経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最下位であり、加盟国平均の3分の1にも至らない水準だ。 2012年基準で韓国の社会賃金は、家計の可処分所得(税金・社会保険料などをみな控除した後に残り、直接使えるお金)の12.9%と集計された。 米国の社会賃金比重は25%、英国は37.8%、ドイツは47.5%、フランスは49.8%、スウェーデンは51.9%であり、OECD平均は40.7%だった。
報告書は「所得階層の移動を活発にするためには、高齢層と勤労可能世帯に対する差別化された政策が必要だ」と指摘した。 勤労可能世帯には良い働き口を拡大する政策で接近して、高齢層に対しては年金などの福祉政策が必要という話だ。 報告書は「老人層の場合は労働市場への参加を通した所得獲得に限界があるだけに、公的年金など多様な政策で老後資金の準備を誘導しなければならない」と明らかにした。 勤労可能世帯に対しては「積極的な働き口の拡大努力を通じて所得分布が改善されるようにしなければならない」と付け加えた。
租税政策も所得不平等の一因となっている。 韓国の租税体系が所得不平等の改善に寄与する程度は、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最下位水準であることが分かった。 2012年基準で韓国の税前貧困率(0.173)と税後貧困率(0.149)の差異は0.024でOECD加盟国の中で最低値だ。
最上位高所得層の所得集中度の原因が何であるかをきちんと問い詰め、これを緩和させられる課税対策が必要だという指摘も出た。 所得上位1%が2009年に所得全体の11.05%を占めていたが2012年には11.66%に拡大するなど、最上位高所得層は金融危機と関係なく所得を維持している。 報告書は「最上位所得階層が不労所得(配当・利子)や相続・贈与によってその位置を維持していれば、課税強化による所得再分配の要求が社会的支持を受ける」とし「きちんと分析しなければならない」と強調した。