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[特派員コラム] 米国は金持ち増税、韓国は金持ち減税

登録:2015-02-26 22:07 修正:2015-02-27 06:42

 米国は減税政策の元祖の国だ。 共和党のロナルド・レーガン大統領は、1980年代初期いわゆる「供給主義経済学」に魅了されて大規模減税を断行した。 減税すれば勤労・投資意欲が鼓吹されて経済成長を促進し、これが税収の拡大につながるという一部補佐陣の説得に乗ったのだ。 しかし現実にはそうはならなかった。 世界最大の富裕国と言われた米国も1980年代末に大規模減税の余波で財政が悪化した。 民主党のビル・クリントン大統領が1990年代に増税を行い財政を安定させた。

 2001年に執権した共和党のジョージ・ブッシュ大統領も経済を生かすという名分で大規模減税を行った。 その規模は10年間で1900兆ウォンに達した。結果は大規模な財政赤字だった。 2009年に執権した民主党のバラク・オバマ大統領は、経済危機の足元の火を消した後の2013年、財政赤字問題解決のために増税を断行した。

 オバマが取った増税方式は、所得上位1%を対象にした所得税引き上げだった。 30年にわたり勝者一人占め経済モデルを追求した結果、中産・庶民層の暮らし向きは疲弊した反面、富が少数に集中した「1%対99%」社会に変わった点がこのような金持ち増税に反映されたわけだ。 オバマはさらに一歩進んで来年には金持ち増税の範囲を拡大する方針を明らかにした。 彼の増税キャンペーンは企業にも拡大している。 彼は米国企業が外国で上げた利益を外国に留保していても税金を払わせる方案を推進することにした。

 本来、保守政権は安定を重視し財政の健全性を強化する政策を展開するのに対し、進歩政権は福祉のために財政支出を拡大するのが一般的だった。 しかし1980年代以後、米国の状況は正反対になった。 保守政権が使い果たした財政を進歩政権が収拾するのに汗をかく局面が繰り返された。

 韓国はこれとは大きく違う。韓国では保守政権も進歩政権も減税基調を受け継いできた。 米国の減税政策に影響された「低い税率、広い税源」という世界的な基調に従った。 盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が2006年頃、急増する福祉需要に対応して増税を検討したことがこのような流れに逆らおうとする初めての試みだった。 当時彼は「ビジョン2030」実現のために中長期租税改革案を準備すると発表した。 しかし保守言論が主導する強力な反発に直面し無為に終わった。

 当時の盧武鉉政権は、自営業者所得脱漏など地下経済の陽性化と非課税・減免の縮小、歳出構造調整等を通して最大限福祉財源の確保に乗り出し、それでも足りない場合の財源調達方案は国民的議論に任せると明らかにした。 増税議論は次の政府でしろということだった。 その一方でクレジットカード・現金領収書の使用拡大等を通して課税基盤を広げ自ら財源を拡充した。

 しかし次の李明博(イ・ミョンバク)政権では。大規模金持ち減税(年間約20兆ウォン)を断行した。盧武鉉政権時期に集めた財源までそれで使い果たした。 この金持ち減税は恒久的であったので、現政権でも施行し続けている。“減税の元祖”である米国ではその弊害を悟り、金持ち増税に方向を定めたが、韓国はこれをそのままにしているのだ。

パク・ヒョン ワシントン特派員//ハンギョレ新聞社

 最近の“増税なき福祉”論争を見て、果たして韓国の政界が過去10年間にわたり福祉財源準備のために何をしたのかを再び問うことになる。「地下経済陽性化と支出構造調整を先に行い、万一だめなら国民的合意により(増税を)行うというのが大統領府と政府の立場」と言った最近のチェ・ギョンファン副首相の話は、10年前に聞いた話と全く同じだ。 10年前に進歩政権でした検討を保守政権がし始めたという点で、それなりに慰めにはなる。 しかし今までの体験から考えれば、問題を次期政権に先送りするという話にしか聞こえない。

パク・ヒョン ワシントン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/679891.html 韓国語原文入力:2015/02/26 18:50
訳J.S(1719字)

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