裁判開始から30分ほど過ぎ
原審とは異なる判断を朗読
傍聴席にざわめき
ウォン元院長「国家と国民のために仕事をした」
出所5カ月で再び拘置所へ
9日午後1時50分頃、ソウル瑞草(ソチョ)洞のソウル高裁庁舎。 黒の長いコートに白ワイシャツを着て、空色のネクタイを締めたウォン・セフン元国家情報院長(64)が現れた。余裕ある表情で登場したウォン元院長は、記者の質問に「裁判が終わった後に裁判所の1階入口で短く一言話す。(その代わりに)裁判に入る時には何も言わない」と話した。
裁判所に出廷したウォン元院長は孤独でなかった。赤いベレー帽と軍服を着た5、6人の海兵隊救国決死隊会員が強固な“友軍”となってウォン元院長の後に従い、同じ服を着た約20人がウォン元院長より先に法廷前で待機していた。 60~70代に見える会員たちは法廷前で互いに挙手敬礼を交わして挨拶すると、法廷内に入って席についた。
午前から時々降りしきっていた雪が大粒になった午後2時、ウォン元院長に対する宣告が始まった。 法廷は約150人の傍聴者で足の踏み場もなくぎっしりと埋まり、彼らの目と耳はすべてキム・サンファン裁判長の口元に集中した。 コートを脱いで紺色の服を着て法廷に座っていたウォン元院長は、宣告がされる2時間ずっと背筋をまっすぐ伸ばして座っていた。
裁判が始まって30分過ぎると、公職選挙法違反容疑に対して無罪を宣告した原審とは異なる判断が朗読され、傍聴者の間でざわめきが起きた。 続いて原審では認められなかった国家情報院職員の電子メール添付ファイルの証拠能力が認められ、裁判所の外では「ウォン・セフン元院長の国家情報院法違反容疑を認定」、「ウォン・セフン選挙介入指示を認定」などのニュース速報が相次いだ。
午後3時50分頃、裁判長が「ウォン・セフンを懲役3年の実刑に処す」と朗読すると傍聴客の間では意味不明な嘆きの声が相次いだ。 一瞬当惑気な表情を浮かべたウォン元院長は「自分としては国家と国民のために仕事をしただけ」という言葉を残して、廷吏に連れられて拘置所に行かなければならなかった。後に残された軍服姿の友軍は、口を固く閉ざしてまばたきするばかりだった。
ウォン元院長はこの日の控訴審を控えてソウル高裁に身辺保護要請をした。「危害を加えようとする人々がいるので守ってほしい」という要請に、裁判所は警察に警備の増員を要請する一方で裁判所の警備人材も増やした。万一の事態に備えウォン元院長の移動経路の周囲に警備人材が配置された。この日の法廷拘束により、ウォン元院長が望む空間ではないが長期にわたって国家の身辺保護を受けることになった。 企業の代表から金品を受け取った容疑(斡旋収賄)で拘束され満期出所してから僅か5カ月で、再び収監生活を始めることになったのだ。 ウォン元院長は「裁判が終わった後で一言話す」と言った記者たちとの約束も守れなかった。