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戦争の時代、北朝鮮の安全保障戦略が変わった【寄稿】

登録:2026-04-15 09:18 修正:2026-04-15 11:43
キム・ヨンチョル | 元統一相・仁済大学教授
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記兼国務委員長は先月23日、最高人民会議第15期第1回会議の閉会直前の施政方針演説で 「敵対勢力が対決を選ぼうが、平和的共存を選ぼうが、対応する準備ができている」と述べた=朝鮮中央通信の画面キャプチャ/聯合ニュース

 戦争後の世界は、戦争以前とは異なる。これは戦争を経験した国だけの話ではない。戦争があまりにも容易に、あまりにも頻繁に起こる世界において、安全保障はすべての国にとって最優先課題だ。北朝鮮も同様だ。北朝鮮の安保戦略は南北関係を決定づける。無人機と関連し、韓国政府が率直な非を認め謝罪したことを北朝鮮が前向きに評価したのは幸いだが、南北関係を楽観視するのは難しい。戦争によって北朝鮮の安保戦略は変わったからだ。

 北朝鮮の安保戦略とは何か。一つ目は核兵器だ。金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は3月23日の最高人民会議で、核兵器によって安全権を確保したと主張した。北朝鮮が「脅威にさらされる国」ではなく、「脅威を与える力」を持っていると述べた。北朝鮮のいう「力による安全保障」の正当性とは、イランとは異なり、核兵器を保有しているという意味とみられる。

 戦争の時代において「交渉による安全保障」は砂上の楼閣のようなものだ。交渉とは本来、戦争よりも至難だ。戦争は一方的だが、交渉では相手の要求を受け入れなければならない。交渉において、弱小国は具体的かつ信頼できる安全保障を求める。ロシアとウクライナ戦争が出口を見出せず、道に迷っている理由は、「安全保障」の曖昧さにある。1994年にウクライナが核兵器を放棄し、領土主権を保障した「ブダペスト覚書」が紙くずになってしまったのに、拘束力のない合意文書が果たして役に立つだろうか。

 現在進行中の中東戦争が停戦から終戦へと進むためには、「安全を保障する案」が必要だ。戦争の時代に、安全保障合意の拘束力をいかに担保するだろうか。イランは安全が保障されない限り、ホルムズ海峡の支配権を手放さないだろう。北朝鮮は「合意文」の代わりに核兵器を選んだ。戦争が起きれば、交渉ははるかに難しくなる。崩れた信頼を立て直さなければならないからだ。

 二つ目はユーラシア安全保障協力だ。北朝鮮は最近、ベラルーシとの首脳会談で包括的な協力を合意した。新たなユーラシア協力は「多極化した世界秩序」を名目とし、国際的な制裁を回避する「反制裁連帯」だ。ユーラシア協力により、朝米対話は遠のいた。中国は米中首脳会談を機に朝米関係の再開に向けて動いているが、北朝鮮は自分たちに有利な新たな国際秩序を作ろうとしている。

 もちろん北朝鮮は依然として米国との対話への扉を開いている。だが、北朝鮮の唯一の要求は核保有国としての地位を認められることだ。当然ながら、米国は世界的な不拡散体制を保つため、北朝鮮の要求を受け入れることはできない。根本的な違いが存在する。さらに重要なのは交渉の環境だ。ドナルド・トランプ大統領がイランとの交渉で見せた一方的で強圧的な態度を示すのを見守ってきた北朝鮮が、果たして交渉に応じるだろうか。中東戦争は朝米対話の求心力ではなく、遠心力として働くだろう。

 三つ目は韓国に対する敵対政策だ。北朝鮮の韓国政策は、反統一、敵対、二国家から成り立っている。敵対は南北関係が悪化した結果だが、反統一と二国家は体制維持戦略だ。南北の接近による変化を拒否し、国境を築いて影響を遮断しようとするものだ。敵対関係は互いに努力して緩和できるが、反統一と二国家は長期的な構造として存在し続けるだろう。東ドイツで二つの民族、二つの国家を主張した文脈と同じだ。

 北朝鮮の敵対的な二国家論と、韓国の平和的共存論は異なる。敵対的な二国家は「敵対的共存」に近い。敵対的共存とは、米国とイスラエルの軍事的介入が、イランの独裁政権の強圧的な政治を正当化するような関係を指す。敵対的共存は平和とは程遠く、戦争の土壌で育まれる。これとは異なり、「違いを認め、共通点を見出す平和的共存」は、暴力ではなく平和の土壌で育まれる。二つの国家には敵対が必要だが、共存は平和を志向する。

 今は接近を試みる時期ではない。北朝鮮は接近がもたらす変化を警戒し、敵対している。戦争が頻発する世界において、北朝鮮の安保戦略は変化した。韓国の北朝鮮政策は、敵対関係の緩和に集中する必要がある。李在明(イ・ジェミョン)政権の先制的な緊張緩和措置により、北朝鮮の呼応を誘導してきた。しかし、対話以外に信頼を築く方法はない。北朝鮮が体制維持のために韓国に対する敵対を続ける限り、南北の敵対関係の緩和には限界がある。

 第二次世界大戦以降、最も長かった平和の時代が終わりを告げている。ミネルヴァのフクロウは黄昏に飛び立つ。過去の交渉の失敗を分析し、変化した北朝鮮の安全保障戦略に対応しなければならない。5月の米中首脳会談を機に、朝米対話の実現に向けた取り組みを続けなければならないが、中東戦争は交渉が乗り越えなければならない高く険しい山を作り出した。戦後の交渉は時間と忍耐を要する至難な過程だ。

//ハンギョレ新聞社
キム・ヨンチョル | 元統一部長官・仁済大学教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1253809.html韓国語原文入力:2026-04-12 18:23
訳H.J

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