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「衝突は防ぐが、対話はしない」…キム・ヨジョン談話に表れた金正恩委員長の考え

登録:2026-04-08 06:33 修正:2026-04-08 07:34
金正恩朝鮮労働党総書記兼国務委員長が3月23日に開催された第15期最高人民会議第1回会合で、施政方針演説を行っている/朝鮮中央通信・聯合ニュース

 李在明(イ・ジェミョン)大統領が「民間人による(北朝鮮への)無人機侵入事件」に関し「北朝鮮側に遺憾」を表明してから数時間後の6日夜に発表されたキム・ヨジョン朝鮮労働党中央委員会部長の談話は、要するに、「偶発的衝突防止の必要性には共感するが、当局間会談と関係改善は拒否する」というものだ。キム部長の談話には、李大統領の遺憾表明に対する金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長の韓国に対する認識と政策方針が直接的または間接的に表れている。従来の「統一反対・敵対的な二国家」路線の延長線上にあるものの、韓国に対する認識において改善の兆しがみられる。さらに、金委員長が南北間の「冷たい平和」を望むというシグナルともいえる。

■「李在明、率直で度量が大きい」韓国に対する認識に改善の兆し

 キム部長は談話の中で、李大統領の遺憾表明について「我が国家元首はこれを率直で度量の大きい人物の姿勢を示したものだと評価した」と伝えた。 「我が国家元首」は金正恩委員長を指す。これはキム部長の談話が金委員長の指示によって発表されたことをうかがわせる。朝鮮労働党総書記でもある金委員長は、2月末の労働党第9回大会の演説で、李在明政権の北朝鮮政策を「拙い欺瞞劇であり、駄作」だと批判した 「欺瞞劇であり駄作」と「率直で度量が大きい」は同じ対象、すなわち李大統領に対する金委員長の評価だが、そのギャップは大きい。

 キム部長が「大変幸いだ」という反応を示したことからも分かるように、この大統領の遺憾表明を金委員長が歓迎したものとみられる。注目すべき変化だ。

 李大統領の遺憾表明と金委員長の「歓迎」は、南北関係の安定的な管理に重要な基盤となるだけでなく、関係改善を模索する原動力にもなり得る。大統領府はキム部長の談話直後に「南北首脳間の迅速な相互意思確認が朝鮮半島の平和共存に貢献することを期待する」という反応を示した。その後、統一部も7日に「南北両首脳の意思が迅速に確認され、意思疎通が行われたことは、朝鮮半島の平和共存へと進む意義ある進展だ」と歓迎の意を示した。

■「我が政府、我が国家家元首」二国家の併立を志向

 キム部長は「李在明韓国大統領」という公式な呼称で談話を始めた。李在明政権発足後、北朝鮮が韓国に対する声明において大統領の実名と職位が正確に明記されたのは、今回が初めて。

 「礼遇」とも言えるが、別の解釈も可能だ。例えばキム部長は談話の中で「我が政府」や「我が国家元首」といった表現を用いた。国家間の関係で用いられるものだ。金委員長がキム部長の談話を通じて、南北関係が従来の「統一志向の特殊な関係」ではなく、「二つの国家の関係」であることを強調しようとする意図が込められたものとみられる。一方、李大統領は遺憾の意を表明する際に「北側」と述べた。 統一志向の特殊な関係に基づく当局間の呼び方だ。

キム・ヨジョン朝鮮労働党中央委員会総務部長/朝鮮中央通信・聯合ニュース

■「接触の試みは断念すべき」 別々に暮らそう

 キム部長は談話の中で、韓国を明示的に「敵」とはみなさなかった。金委員長が先月の最高人民会議第15期第1回会議の演説で「韓国を最も敵対的な国家として公認」し、「徹底的に排除し無視する」と繰り返し強調したことに比べると、控えめな態度と言える。だが、これを北朝鮮側の関係改善のシグナルと解釈するのは難しい。例えばキム部長は談話の中で「韓国側はいかなる接触の試みも断念すべきだ」と強調した。当局の会談は、試みすら許さないと線を引いたのだ。無人機事件を機に、南北間の間接的な意思疎通を関係改善や当局会談再開の糸口にしようとしてはならないという態度だ。これは「韓国が安全に暮らす唯一の道は、我々に手を出さないことだ」という金委員長の党大会演説の延長線上にある。金委員長が、南北が軍事的衝突を繰り返さず、対話や交流協力も行わない「冷たい平和」関係を望んでいるというシグナルだ。

 にもかかわらず、年初めの無人機事件が表面化した後、キム部長が無人機に関する対南談話を5回も発表し、金委員長の評価まで伝えたことは、北朝鮮側が「反統一的で敵対的な二国家」を目指しながらも、いかなる意味であれ、韓国との関係を依然として重要視しているを示すものといえる。統一部が7日に「政府は北朝鮮に対し、一切の敵対行為を行わないという原則を堅く守り、朝鮮半島の平和共存政策を一貫して推進していく」と発表したのもこのためだ。

イ・ジョフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/1253091.html韓国語原文入力: 2026-04-07 18:39
訳H.J

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