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[コラム]チョ・グク元法相の「祖国革新党躍進」にみる「メタ公正」という質問

登録:2024-03-22 11:12 修正:2024-03-22 12:00
祖国革新党のチョ・グク代表と比例代表候補などが19日、ソウル龍山の大統領室前で「官権選挙をやめよ」と要求し政権を批判する記者会見を行っている/聯合ニュース

 韓国の「検察政権」が発足した後、法と常識を覆すようなことが随所で起きた。主権者の目を無視し、むやみに権力を振るった。彼らが検事だった時もこのようなやり方で検察権力を振るったのか、多くの市民は過去と現在を貫通する問題の核心をはっきり感じ始めた。

 イ・ジョンソプ前国防部長官を大使に任命し、国外に逃避させた。高位公職者捜査処(公捜処)が下した出国禁止を解除させた。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が検事だったらそうしただろうかという皮肉が出ている。しかし、そうしたと思う。捜査対象者の出国禁止くらい大したことではないと考える検察だが、身内に対しては180度違う態度を示した。キム・ハグィ出国禁止事件がそうだった。夜逃げしようとしたキム・ハグィ元法務部次官を緊急出国禁止で止めた法務部のチャ・ギュグン出入国本部長などを、(当時の)「尹錫悦検察」はむしろ職権乱用で捜査・起訴した。一審の無罪判決によってこの起訴は失敗した。しかし「出国禁止を思うままに解除」はイ・ジョンソプ大使の件で再演された。チャ本部長はチョ・グク元法務部長官率いる「祖国革新党」の比例代表10番候補になった。

 チャ本部長を捜査・起訴した「尹錫悦師団」のイ・ジョンソプ検事(前国防部長官とは別の人物)は、リゾート接待疑惑などで物議を呼んだ。国会は弾劾訴追までしたが、検察が公言した厳正捜査はうやむやになっている。検事自身の手が汚れているのに誰を捜査するのかという市民の怒りを、検察は気にも留めない。恐ろしさに耐えかねて疑惑を暴露したイ検事の義弟の妻であるカン・ミジョン氏は、祖国革新党に入党し比例代表予備候補になった。

 告発教唆事件で起訴されたソン・ジュンソン検事は、自主懲戒すら受けなかった。尹大統領とハン・ドンフン法務部長官(当時)は彼を「検察の花」といわれる検事長にまで昇進させた。しかし、裁判では有罪判決が下された。検察の懲戒も「敵か味方か」が左右した。法務部監察担当官として尹錫悦検察総長を監察したパク・ウンジョン検事は最近、解任という最高レベルの懲戒処分を受けた。検察の捜査も受けている。国の規律を乱す犯罪を犯した検事は懲戒を免れ、任務に忠実だった検事は上層部の機嫌を損ねた罪で解任された。パク検事は祖国革新党の比例代表1番候補になった。

 パク・ウンジョン、チャ・ギュグン、カン・ミジョン。彼らは公職者として、市民としてすべきことをした平凡な人たちだ。正しく、意味のあることをしたが、一挙に政治的人物として浮上するほどのこととは言えない。ところが政権と検察の態度が彼らを象徴的な人物に押し上げた。自分の身内の不正や犯罪は無限にかばう一方、相手側は狩るように責め立てる権力の不公正な横暴さに傷ついた被害者であり、それに対抗した当事者として。

 誰よりも象徴的な人物はチョ・グク元法務部長菅だ。彼は子どもの入試不正で公正性をめぐる議論を起こし、厳しいレッテルを貼られた。検察の激しい捜査で一家が崩壊する状況にまで追い込まれた。彼に適用された厳正な公正さの基準がその後も健在だったなら、彼が政治を始めることは考えられなかっただろう。しかし、検察政権が発足してから状況はすっかり変わった。ハン・ドンフン長官の人事検証過程で、娘の「虚偽経歴」「論文代筆」疑惑が提起されたが、ハン長官は候補辞退に追い込まれず、長官としてまた政治家として堂々と活躍した。警察はチョ・グク事件の時と比べればまったく粗末な捜査の末に不送致決定を下した。政権交代後、検察は大統領夫人になったキム・ゴンヒ氏の株価操作疑惑については手もつけず、尹大統領は最高の公的権限である拒否権を振りかざして特検法制定を阻止した。ブランドバックの授受が明らかになっても、なかったこととして扱った。刀を振り回した彼らは、その刀で自分の恥部を隠した。

 このような時代相は、昔からの、しかしいつになく鮮明になった質問を投げかける。誰がより不公正かという質問は副次的なものだ。個人や事案の公正性の問題を越えて、さまざまな人物・事案に同じ物差しと刀を突きつけているかという、公正性問題を扱う方式の公正性に対する質問の方がもっと大きく浮上している。いうなれば、公正を越えた公正、「メタ公正」である。メタ公正が保障されなければ、個別の事案の公正問題は懐疑の対象にならざるをえない。民主共和制を支える中心軸である「法のもとの平等」が否定されれば、法の作動自体が正当性を失ってしまうからだ。この質問は刑事司法の領域に限ったことではない。国政全般にわたる「検察式独断」と、これに対する批判をも鼻で笑いとばす政権の非民主的行動にまで、疑問符は広がっている。

 与党「国民の力」の衛星政党と比例で肩を並べるくらいまで成し遂げた祖国革新党の躍進をみると、チョ・グク代表は逆説的にこのような質問を投げかける適任者として受け入れられているようだ。そして、この質問を抱いていた市民は予想よりはるかに多く、その人々は各自の声をあげて答え始めた。

パク・ヨンヒョン論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1133275.html韓国語原文入力:2024-03-21 18:47
訳C.M

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