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頭もたげる「ハン・ドンフン限界論」…韓国与党、尹政権審判ムードの中で戦略見えず

登録:2024-03-14 10:35 修正:2024-03-28 08:47
国民の力のハン・ドンフン非常対策委員長が12日、ソウル永登浦区のタイムズスクエア前広場で市民に挨拶している=キム・ギョンホ先任記者

 「『ハン・ドンフン監督』が浮上したのは良かったが、制作環境はそのままだ。スタッフには最低賃金も払わず、カメラも旧式だ。それなのにハン・ドンフン委員長はこのような事情には目を向けず、イ・ジェミョン(共に民主党代表)の話ばかり繰り返している」

 13日、与党「国民の力」のある初当選議員は4月10日の総選挙を控えた最近の党の状況を、映画の撮影現場にたとえてこう語った。イ・ジェミョン代表とイ・ヘチャン、キム・ブギョム元首相の3人が共同常任選挙対策委員長を務める野党「共に民主党」とは異なり、国民の力はハン・ドンフン非常対策委員長が単独で総括選挙対策委員長を務めるほど、今回の総選挙では「ハン委員長への依存度」が高い。だが、ハン委員長登板の初期のころとは異なり、このところは党の支持率が停滞し、イ・ジョンソプ駐オーストラリア大使の任命・出国をめぐる波紋などで尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権審判論が広がっているにもかかわらず、ハン委員長がこれといった戦略を打ち出せずにいるという「ハン・ドンフン限界論」が頭をもたげているようだ。

 特に、党内では野党が連日「国外逃亡」攻撃をかけているイ・ジョンソプ大使の問題について、ハン委員長が「私が評価する問題ではない」(8日)、「党代表の立場で説明するのは不適切だ」(12日)などとほぼ口を閉ざしているのは、総選挙において負担になるという不満が多い。ハン委員長は多弁家だが、「キム・ゴンヒ特検法」など尹大統領に関する問題には特に口を閉ざしている。イ・ジョンソプ大使は、海兵隊のC上等兵殉職に関する捜査で尹大統領が外圧を行使したという疑惑事件の主要被疑者だ。しかし、出国禁止の状態で大使に任命され、その後すぐに出国禁止が解除されてオーストラリアへと出国した。

 ソウルの選挙区から出馬するある与党候補は「遊説現場でも『イ・ジョンソプ出国』の話が出ている。思ったより深刻な状況だ」と語った。忠清道圏のある議員は「ハン委員長はイ・ジョンソプ出国問題について立場をはっきりさせ、言うべきことは言わなければならないのに、そうはしない。結局、総選挙では『政府審判論』が出てくるのは避けられないが、このままではハン委員長の役割にも限界がある」と述べた。

 ハン委員長は「勝つ公認候補(を選ぶ)」と強調し、ノイズ管理にも比較的成功したが、結果的には顔ぶれの刷新をせず「現役不敗」、特に親尹錫悦派の主要議員の大半が公認候補となり、尹大統領と差別化できなかったという指摘もある。政府審判論の火種を消すことはできなかったということだ。慶尚道圏のある議員は「今回の公認候補選出で、ノイズは民主党よりは少なかったが、顔ぶれの刷新は実現しなかった」とし「特に予備選挙を行ったとはいえ、結果的には親尹錫悦派に分類される議員たちが公認を得た反面、苦言を呈した議員たちはほとんど脱落した」と語った。

 総選挙で勝つためには必ず確保しなければならない中道層も、与党に傾いていない。ハンギョレが今月8日から9日にかけて世論調査専門機関のグローバルリサーチに依頼し、首都圏(ソウル、仁川、京畿)の成人男女1008人を対象に電話面接調査(CATI)方式で調査した結果、中道層のうち、地域区(選挙区)選で国民の力に投票するという人は25%で、共に民主党に投票するという人(39%)の半分を少し上回る水準だった。比例代表選の投票の意向も、「国民の未来」(国民の力の比例衛星政党)は24%で、「共に民主連合」(共に民主党、進歩党、新進歩連合などによる比例衛星政党)の15%と祖国革新党(チョ・グク元法相を代表とする党)の21%を合わせた数値に及ばなかった(詳細は中央選挙世論調査審議委員会のホームページを参照)。

 これは最近、祖国革新党が「地民比祖」(地域区(選挙区)の投票は民主党へ、比例代表の投票は祖国革新党へ)を前面に押し出して野党支持層を吸収・拡張しているのに比べ、ハン委員長は「運動圏(80~90年代の民主化運動を率いた人々)の特権清算」や国家情報院の対共捜査権の復活、アカのレッテル貼りといった保守偏向メッセージに集中しているためと思われる。ある与党議員は、「ハン委員長の言葉は最初は新鮮だったが、今は違う。具体的な戦略なしにイメージでここまで来たが、これからは違うものを見せなければならない」と述べた。

ソン・ヒョンス、ソ・ヨンジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/election/1132186.html韓国語原文入力:2024-03-149:50
訳C.M

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