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「韓国版ラストベルト」の危険性【コラム】

登録:2025-04-04 00:36 修正:2025-04-04 09:45
//ハンギョレ新聞社

 米国は第2次世界大戦以降、「世界の工場」だった。しかし1970年代以降、企業は中国などの人件費の安い国へと工場を移しはじめた。製造業の雇用は次第に消えていった。「ラストベルト」とは、かつては製造業で隆盛を極めたが、産業が衰退するにつれて景気低迷と人口減少で空洞化した地域を指す。オハイオ、ミシガン、ペンシルベニア、インディアナなどの州が代表的な例だ。米国の副大統領J・D・バンスは、オハイオ州ミドルタウンというラストベルトの労働者の家庭での成長過程で体験したことを書いた自著『ヒルビリー・エレジー』で名声を得て、政治家としての足場を確保している。ラストベルトはドナルド・トランプ大統領の支持基盤でもある。製造業の衰退を放置していた米政府は、グローバル金融危機を経て製造業の再活性化政策を推進しはじめる。トランプ大統領が「関税戦争」を繰り広げるのも、米国の製造業を復興させるためだ。しかし、これは他国へのラストベルトの「輸出」につながりうる。

 先月25日、現代自動車グループは2028年までに米国に総額210億ドル(約31兆ウォン)を投資する計画を発表した。米国での自動車生産量を現在の年間70万台から120万台にまで拡大する一方、ルイジアナ州に自動車用の鋼板を作る電気炉製鉄所を建設するという計画だ。米国が自動車と鉄鋼製品に課す25%の関税を避けるためだ。問題は、米国内の生産量が増える分だけ、国内の生産量にかかわる雇用は減らざるを得ないということだ。

 米国の関税が一方にあるとすれば、他方には中国製品の攻勢がある。米国への投資計画発表の2日後の先月27日、現代製鉄は、4月の一月の間、仁川(インチョン)工場の鉄筋製品の生産ラインを休止すると発表した。中国発の供給過剰などで収益が悪化したからだ。ポスコも昨年7月に浦項(ポハン)製鉄所の第1製鋼工場の稼動を中断したのに続き、11月には第1線材工場を閉鎖している。石油化学メーカーも構造調整の危機に追い込まれている。中央大学のイ・グン碩学教授(経済学)はこれらについて、それぞれ「米国発の空洞化」、「中国発の空洞化」と表現する。

 製造業が韓国経済に占める比重は大きい。そして「製造業のように平凡な数多くの人を均等な賃金で雇用できる産業はない」(ヤン・スンフン『蔚山ディストピア、製造業大国の不安な未来』)。韓国経済に迫る二重の空洞化リスクを克服し、ラストベルトを「輸入」しないようにするために、熟考し、戦略を立てることが必要だ。

アン・ソンヒ論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1190224.html韓国語原文入力:2025-04-02 15:28
訳D.K

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