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[コラム]尹錫悦の「無能リスク」

登録:2022-11-05 03:05 修正:2022-11-05 09:36
尹錫悦大統領とキム・ゴンヒ女史が31日午前、ソウル広場に設けられた梨泰院事故死亡者合同焼香所で、弔問するために移動している/聯合ニュース

 梨泰院(イテウォン)での痛ましい惨事から4日目。咲くこともできないまま落ちた156のつぼみを追悼する波が全国に広がっている。国家哀悼期間中は追悼に集中するのが道理だ。しかし、そうしてばかりはいられない出来事がまたも起きた。イ・サンミン行政安全部長官に続き、ハン・ドクス首相までもが責任逃れの発言で国民の怒りを買っているのだ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領の卑語使用(暴言)問題、国民の力のチョン・ジンソク非常対策委員長の親日妄言に続き、今回も「いまいましい口」が問題を起こした。政権そのものが支持率を下げる最大のリスク要因となっているのだ。

 経済分野の状況も大きな違いはない。尹錫悦政権の無能と政策の誤りが国の経済を脅かす、いわゆる「尹錫悦リスク」が深刻だ。カカオの創業者キム・ボムス氏は10月24日、データセンター火災によるサービス停止について、国会国政監査の場で利用者に謝罪した。しかし、この事態が企業の謝罪で終わるべきことなのかは疑問だ。政府もなすべきことをきちんとして来なかった責任は大きい。

 尹政権がこれまで、プラットフォームの独寡占の深刻化に沿った適切な規制が必要だという意見を無視し、企業にすり寄る姿勢と規制緩和を前面に押し出して「最小の自主的な規制」原則に固執してきたことは誰もが知っている。米国と欧州連合(EU)がビッグテックの独占を規制する諸法案を準備していることとは正反対だという指摘にも耳を貸さなかった。そうでありながら、尹大統領は10月17日に「独寡占が激しい状態で市場が歪曲されたり、国の基幹インフラに問題が発生したりすれば、当然国は必要な対応をしなければならない」として、規制強化を指示した。自らの政策の誤りを隠そうという「耳を覆って鈴を盗む(肝心なことに目を向けない)」的な対応に他ならない。

 SPCグループ系列のパン材料メーカーでは、20代の労働者が機械に挟まれて無残に死亡する事件が発生し、不買運動が広がっている。SPCのホ・ヨンイン会長は国民に謝罪すると共に再発防止を約束した。だが、事故からわずか8日後には、別の系列会社でまたしても巻き込まれ事故で労働者の指が切断されるという事故が発生した。最悪の労災国家という汚名を晴らすため、今年1月末から重大災害処罰法が施行されているが、労災事故件数は昨年と大差ない。9月末までの重大災害事件の死者は446人にのぼる。にもかかわらず尹大統領は、候補時代から同法に対して「企業家の経営意志を萎縮させるメッセージを与える」という歪曲された認識を示してきた。今も重大災害処罰法の処罰の緩和を推進している。

 英国「フィナンシャル・タイムズ」は31日、リシ・スナク新首相が500億ポンド規模の増税を検討するなどの、市場の信頼回復への取り組みを開始したと報道した。前任のリズ・トラス首相は誤った富裕層減税でポンド暴落を招き、就任から44日で辞任した。多くの経済専門家は、尹政権も金持ち減税を撤回すべきだと述べる。今のような経済危機とトリクルダウン効果が切れた状況では、金持ち減税による投資・雇用増加効果はほとんどなく、税収の減少により財政健全性を害するだけとなる危険性が高いからだ。だが、尹政権は「韓国は英国とは異なる」と片意地を張っている。

 江原道のキム・ジンテ知事の軽率な決定が生んだ「レゴランド事態」は、経済に暗い政治家の無知と無能がどれほど危険なのかを示した例だ。江原中島(チュンド)開発公社の2050億ウォン(約210億円)規模の資産流動化企業手形の債務保証を撤回する「博打」は、ただでさえ凍りついていた資本市場を完全にマヒさせた。果ては政府が「50兆ウォン(約5兆1800億円)+アルファ」をばら撒くなどの緊急措置を取ったにもかかわらず、余震は今も続いている。

 プラットフォーム規制の空白、重大災害処罰法を空洞化させる試み、無理な金持ち減税、レゴランド惨事は、尹政権の「無能リスク」を示す数多くの例の一部に過ぎない。保守陣営は、文在寅(ムン・ジェイン)政権は無能だと執拗に攻撃してきた。しかし、尹政権の無能さは、それ以上ではあっても決して以下ではない。加えて尹政権は過ちを認めず、誤った政策にこだわり続ける無知と我執まで示している。

 韓国経済は物価高、高金利、ドル高の中で景気低迷の懸念が重なり、金融市場すらマヒする複合危機を迎えている。「尹錫悦の無能リスク」に耐え続ける余裕があるのかは疑問だ。保守メディアでさえ「危機対応の司令塔が見えない」と批判しているではないか。

 ソウル都心では毎週末、尹錫悦退陣集会が行われている。正常な状況なら、発足から5カ月しかたっていない大統領に言うべきことではないだろう。しかし、残りの4年半の任期中もこれまでの姿勢と大きく変わりはしないだろうという絶望感が大きすぎるようだ。尹錫悦の「無能リスク」をどうするべきか。

//ハンギョレ新聞社

クァク・チョンス|ハンギョレ経済社会研究院先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1065268.html韓国語原文入力:2022-11-01 17:14
訳D.K

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