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[コラム]尹政権の哀悼戒厳令、まもなく検察が登場する番

登録:2022-11-03 06:33 修正:2022-11-03 22:16
尹政権の伝家の宝刀である検察が乗り出して対処に怠慢だったという警察に責任を問い、群衆の中から押したという人々を見つけ出し、不法増築をしたというハミルトンホテルなどを撤去する事態がまもなく起きるとすれば、行き過ぎた予想だろうか。頭を下げ、申し訳ない気持ちを表すのは「韓国のトラス」たちには期待できないだろう
尹錫悦大統領とイ・サンミン行政安全部長官、キム・デギ大統領秘書室長らが2日、ソウル広場に設けられた合同焼香所を訪れ、弔問している=大統領室写真記者団//ハンギョレ新聞社

 英国史上最短命の首相となったリズ・トラスが投げた爆弾によって、英国は依然として沈没し続けている。

 リシ・スナク内閣は、英国経済に災いをもたらしたトラスの450億ポンド減税案を覆すことからさらに進み、500億ポンドの増税および支出削減案をまもなく発表する。一難去ってまた一難で、庶民にとっては家から追い出されるかもしれない危機だ。ホームレス慈善団体「シェルター」の集計によると、4月以後、英国の家賃は45%引き上げられ、ほぼ250万人の賃借人が家賃を滞納しているという。賃借人の3人に1人が収入の半分を家賃として払う。

 トラスの減税案が財政を悪化させるだろうという懸念から、8月初めは2%以下だった10年国債の利回りが10月中旬には4.5%まで跳ね上がった。破産危機に英国の年金基金は資産を売却し、1500億ポンドの損失を被った。中央銀行であるイングランド銀行は、年金基金の破産を防ぐため、彼らの資産を買い入れた。物価上昇に対応するため財布のひもを固くすべき中央銀行がかえってひもを緩めたことで、今後はこれを回収する金融引き締めを強化しなければならないはめになった。これはさらなる急激な利上げをもたらし、持ち家のない庶民を街頭に追い出すだろう。

 トラスは退任する時も「我々が大胆になり、我々の直面した挑戦に対決する必要があるということを、私はより一層確信する」と述べ、一言の謝罪もなく、申し訳ない気持ちを表すこともなかった。彼女は在任中に減税案に対して「あまりにも急激に遠くに来すぎてしまった」として失敗を認めるかのように見えたが、退任を控えてからは、再び自身の正当性を強調した。どうせ退任しなければならないなら、自分を選んだ支持層を集めようという政略だ。

 トラスが首相の座から退く頃、韓国でも同様の事態が起きた。キム・ジンテ江原道知事が、江原道が保証したレゴランドの債務2050億ウォン(約212億円)の責任を回避すると発表したことで、債券市場がパニックに陥ったのだ。地方自治体の保証債権も信頼できないという不安が市場に広がり、地方自治体や大部分の企業の債権金利が2~3倍まで上がった。江原道が再び債務保証を履行する方針を明らかにするまで24日かかった。これを鎮めようと政府がつぎ込んだ資金は50兆ウォン(約5兆2千億円)を上回っており、5大銀行も95兆ウォン(約9兆8千億円)をつぎ込んでいる。

 江原道がこれを独断で決めたならば、中央政府の職務遺棄であり、相談したとすれば共謀の責任がある。チュ・ギョンホ企画財政部長官は、事態が発生して2週間が過ぎた先月14日(現地時間)、米国でのんびりと記者懇談会を開き、「江原道が対応しなければならないだろう」とし、「(市場全般に不安心理が)広がる段階ではないと思う」と述べた。キム知事は海外から帰国した際、「少し申し訳なく思っている」と語った。誰も謝らず、責任を負わない。

 なぜ彼らは謝罪せず、申し訳ない気持ちを表さないだろうか。尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領も「この××(野郎ども)」「赤っ恥」などの暴言について謝罪しなかった。支持率が下がるのに謝罪よりはさらに推し進めた方が固定支持層でも結集させるのに効果的だという政略でなければ、このような事態を説明できない。

 梨泰院(イテウォン)惨事は「警察をさらに配置しても解決できる問題ではなかった」と語ったイ・サンミン行政安全部長官が3日後の1日、自身の発言に対して「遺憾」を表明した。同日、尹錫悦大統領が、警察にこの事件の通報が届けられていたにもかかわらず警察の対応が不十分だったと「激怒」したと言うと、これまで責任と謝罪について知らん振りしていた行安部長官と警察庁長官などが態度を一変させた。各種の暴言と事故に臨む尹大統領をはじめとする政府関係者の姿勢が変わったのだろうか。

 もう少し見守ってみよう。尹政権は責任よりは哀悼が先だとし、哀悼を戒厳令のように宣言した。自国民が5人死亡したイラン外交部報道官が「韓国政府がイベントを管理すべきだった」と指摘したことに対し、韓国外交部は「このような言及は決してあってはならないこと」だとして、「注意と再発防止を強く要請した」と発表した。イラン側の発言が外交的に適切かどうかは疑問だが、自国民が5人も死んだ国に対して韓国政府にできることがこの程度なのか。

 「惨事」ではなく「事故」であり、「犠牲者」ではなく「死亡者」という戒厳報道指針も下った。「加害者」が特定されなかったためだという。今や警察という責任を問う対象が浮かび上がった。尹政権の伝家の宝刀である検察がまもなく登場する番だ。初動対処を怠ったという警察の責任を問い、群衆の中から押したという人たちを見つけ出し、不法増築をしたというハミルトンホテルなどを撤去する事態がまもなく起きると予見するのは、行き過ぎた予想だろうか。セウォル号惨事の時も海洋警察を解体し、船主一家を捕まえるために野山まで隅々まで捜索したではないか。

 問題は、尹大統領をはじめとする現政府に布陣した「韓国のトラス」たちだ。英国のトラス同様、謝罪し、申し訳ない気持ちを表すのは彼らには期待できないだろう。

//ハンギョレ新聞社
チョン・ウィギル|国際部先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/1065440.html韓国語原文入:2022-11-03 02:35
訳H.J

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