2019年、当時も今冬同様厳しい寒さだった。ソウル龍山(ヨンサン)国立中央博物館で開かれた「黄金人間の地、カザフスタン」展示を観に行った。最も目を引いたのは、慶州鶏林路(キョンジュ・ケリムロ)の宝剣だった。1973年、慶州で発掘されたこの宝剣は、旧ペルシア様式だ。当時、新羅が西域と交流していたことを示す代表的な遺物である。その異国的な美しさに魅せられ、異域万里の他国との交流がどれほど文化を豊かにしたかを考えた。
3年前の展示を思い出したのは、2022北京冬季五輪の開会式(4日)に登場した韓服(ハンボク:朝鮮半島の民族衣装)のためだ。五星紅旗を運ぶ過程で中国56の少数民族代表が登場したが、このうちある女性出演者が韓服と見られる服を身に着けていた。この出演者は朝鮮族を代表して開幕式に出演したようだった。ネットユーザーの間で、中国が韓国文化を自国のものだと主張する、いわゆる「文化工程」を行っているのではないかという声があがった。平和の祝祭が始まって1日も経たないうちに、インターネットは戦場と化した。
怒りは一見理解できる。アジア文化は例外なく中国の影響を受けており、したがって中国文化の亜流にすぎないという主張は、文化を一方通行のものとして捉える危険な考え方だ。さらに中国政府はこれまで様々な歴史と文化に、確かな根拠もなく「中国のもの」というレッテルを貼ってきた。国粋主義的で排他的な態度に不満が積もっていく中で、開会式の韓服が火に油を注いだ。日増しに激しくなる反中感情が事をさらに大きくしたのは言うまでもない。
文化は互いに影響し合いながら豊かになる。防弾少年団(BTS)は2018年のMelonミュージックアワードで、韓服姿でタルチュム(仮面の舞)、プチェチュム(扇の舞)、サムルノリ(伝統的な4種の打楽器で演奏する韓国の音楽)などを組み合わせた華麗な舞台を披露した。BLACKPINKは2020年「How You Like That」のミュージックビデオで韓服を現代風にアレンジして、注目を集めた。我々が「韓服」といえば思い浮かぶ朝鮮時代後期の服飾とはかなり違う形の衣装だった。西欧をはじめ、様々な衣服文化が影響を与え合った結果と言える。一方、韓服は中国で少数民族として生きる朝鮮族の衣服でもある。彼らの文化的伝統も尊重されるべきだ。
このように文化は相互作用しながら流れているものだが、中国政府は数千年前の歴史まで取り上げて排他的所有権を主張している。文化を政治に利用しようとする一種の文化帝国主義だ。ウイグルやチベットなど少数民族文化抹殺政策といわゆる「再教育」収容所など人権弾圧はその極端な副作用の一例だ。ユーチューブやグーグルへの接続制限の解除が文化のために本当に必要なことであることを知らない習近平リーダーシップの限界だ。
しかし、韓服は韓国が元祖だと憤るのが果たして適切な対応なのかは疑問だ。「お前ではなく、私の物」という主張は、少数民族の疎外を招くという批判を受けてきたナショナリズムや、私たちが快く思わない中華主義のもう一つの版本である。特に、反中感情に便乗し、我先に非難の声をあげる韓国政界の動きは、どこもかしこも元祖だと主張する飲食店の看板のように、時代錯誤だと言わざるを得ない。与野党が一様に国民感情を刺激する姿は、嫌悪の元祖争いでもしているかのようだ。
世界を魅了した韓国文化の力は自由や包容、多様性から生まれる。あえて排他的所有権を主張し、消耗的論争をする理由はない。文化が自然に流れるよう、放っておこう。筆者が泊まるホテルにいる北京の公安にさえ「韓国料理が好きだ。キムチを分けてもらえないか」と言わせる力が私たちにはある。