五輪も結局は食事だ。最高のコンディションを維持しなければならない選手はもちろん、ボランティアや記者にとっても食事の問題は重要だ。特に、五輪は国外で開かれるため、食事が口に合わなければ苦労する。今回の大会では、クローズドループで大会参加者と外部を完全に分離しているため、なおさらだ。配達の食事もクローズドループを越えられないからだ。
中国は食べ物がおいしいとされる国だ。そのうえ、メインメディアセンター(MMC)構内のレストランでは、ロボットが直接食事を作り、給仕までして話題になりもした。ところが、すでに参加者の不満は尋常ではなくなっている。クローズドループ内では身動きがとれず、選択権は事実上ないにもかかわらず、値段は高く食事の味は劣るからだ。あまりにひどく、昨年夏の東京五輪の際に競技場の各所に置かれていたピーナッツサンドイッチでさえ恋しくなる。
百聞は一見にしかず、いや、「百聞は一食にしかず」だ。3日に話題になったメインメディアセンターのレストランを直接訪れた。少し早い午後4時頃だったので、ほとんどの食べ物は注文できなかった。豚肉丼を55元(約1000円)支払い購入した。領収証に印刷されたQRコードをセンサーに当てると、ロボットが黒い土鍋に入った食事を持ってきた。食事をすぐに受けとれる点は便利だった。この豚肉丼もロボットが作ったものだが、一度に多くの土鍋を料理した後、注文が来れば一つずつ出す方式だ。
期待を胸にふたを開けた。短いため息がマスクの間から漏れた。ご飯の量が多かった。問題は、肉が極めて少ないという点だ。その肉も赤身はほとんどなく、骨が半分以上だった。おかずはザーサイだけだ。ロボットが作ったためか、良心がないという考えが自然にわき上がってきた。この程度のご飯と肉は、言うならば、900ウォン(約90円)のおにぎり2個程度の量が出てきたようなものだった。しかも、肉に到達するためには、かなり多くのご飯を食べなければならないだろう。こうして遅い昼食をやっと解決した。肉のない骨をかみご飯を食べ、実際には豚肉丼ではなく、単に豚肉丼の名前だけを借りてきたものだという考えが思い浮かんだ。食べ物というよりは現代美術に近かった。
メディアセンターでなければ、ホテルの食事を取らなければならない。ショートトラックの練習の取材を終えた後、夕方遅くにホテルに到着した。すでに夕方のビュッフェの利用時間は過ぎていた。幸いなことに、ホテルは24時間のルームサービスを提供している。メニューには、海南チキンライス、ナシゴレン、東坡肉、日本式うな丼、ステーキなどがあるが、価格帯は50元(約900円)~150元(約2700円)だ。
中国に来たのだから中国料理を食べようと考え、東坡肉を注文した。材料がないと言ってきた。すでに決済した状態だったため、同じ値段(85元・約1500円)のうな丼に替えてほしいと言ってきた。10分ほど後に料理が到着したが、どう見てもナシゴレンだった。電話をかけて別の料理が来たと伝えると、ホテルからは間違って送ってしまったと言われ、食べ物をまた持ってきた。
問題は、新たに来た食べ物もまったくうな丼には見えなかったという点だ。ご飯の上にウナギが置かれている姿を想像していたが、長ねぎだけがぽつんとあった。代わりに、ご飯の中に何か細かく切られたものが入っていた。初めはきのこだと考え、一瞬、食用ミールワームを思い浮かべたりもした。食べてみると、まさにウナギだった。「日本式」というよりは「細切りウナギごはん」のような名前がふさわしかった。韓国にいる知人の数人に食べ物の写真を送った。誰もこの食べ物の正体を当てることはできなかった。
食事で苦労しているのは他の人たちも同じだ。これに先立ち、スケルトンの韓国代表のユン・ソンビン選手(28)は聯合ニュースのインタビューで、選手村の食事の味に対する不満を明らかにした。「料理ができないようだ」という直接的な表現までした。北京内の競技場で働くある中国人ボランティアは「北京の物価を考慮しても、記者に売る食事はあまりにも高いようだ」と述べ、「実は私たちも食事の味のために苦労中」だとほのめかした。
一方、大韓体育会は、選手のために前回の東京五輪の時と同様に、選手村で自作の弁当を供給している。2008年の北京大会の時から続いていた伝統を継続しているわけだ。給食支援センターは北京五輪の選手村近くのホテルに設けられ、鎮川(チンチョン)国家代表選手村の栄養士と調理師ら14人が調理を担当する。センターは、開幕日の4日から17日まで合わせて2週間、弁当を提供する。