2022北京冬季五輪の開幕を5日後に控えた1月30日、大韓民国選手団の先発隊と五輪記者団の一部が到着した北京首都国際空港は、戦場を彷彿とさせた。飛行機から降りた人々を初めて迎えたのは、防疫服で全身を包んだ五輪のサポートスタッフたちだった。ほとんどが五輪のユニホームを着て一部はマスクを鼻の下に少し下ろしたりもしていた昨年夏の東京五輪の時とは、レベルが違う圧倒感を感じた。一般乗客は影も見られず、まるでずっと前に運営を止めた空港に着陸したような気分になった。
パンデミック時代の五輪を最も実感させたのは、マスクをも突き抜ける強い消毒薬のにおいだった。所々に消毒薬の箱が見られ、シャトルバスの座席には消毒薬の跡がくっきりと残っていた。バスに乗り込んだショートトラック韓国代表のチェ・ミンジョン選手(24)は「これ、消毒薬のにおいかな」と顔をしかめた。出国前にすでに2回新型コロナウイルス検査を終えていたが、もう一度検査を受けた。鼻の穴にズボッと入ってきた綿棒は喉まで届きそうだった。あちこちでうめき声が聞こえた。そんなふうに、五輪は息をつく暇もなく鼻を突いてやってきた。
入国手続きを終えた人々は、それぞれ決められたバスに乗ってホテルに移動した。ホテルは鉄条網などで完全に封鎖され、黒い制服を着た北京公安が出入りを統制していた。
記者が泊まるホテルには10人以上の公安が常駐する。彼らはロビーを行き来する出入り者の身体や所持品などを検査する。中国はこうした徹底した監視の中で、今大会をいわゆる「クローズドループ」で行う。五輪期間中、全ての大会参加者は外部と一切接触することができない。ひたすら五輪施設とホテルだけを行き来しなければならない。中国政府は参加者が毎日コロナ検査を受けるよう、ホテルに個別診療所まで設置した。
このような分離対策は今回が初めてではない。米プロバスケットボール協会(NBA)がポストシーズンを行うためにこの方法を使い、東京五輪の時も「バブル防疫」という名で似たような措置を取った。しかし、北京ではその規模とレベルが違う。
特に今大会では、ホテルや競技場などで働く労働者も五輪が終わるまでクローズドループの外に出ることができない。中国最大の祝日である春節(2月1日)にも、彼らは家に帰ることもできずホテルに泊まった。正確な数字は公開されていないが、毎日行われるコロナ検査の結果(1月31日現在4万1810回)を見れば、クローズドループ内に約4万人いるという推定が可能だ。不可能だと思われていた大規模な防疫が、北京では現実となったわけだ。
ただ、まだ変数はある。今大会が「観客あり」で行われるためだ。国際オリンピック委員会(IOC)のクリストフ・ドゥビ五輪統括部長は1日、「中国内の招待観客で競技場の35~50%を埋める予定」と明らかにした。結局、観客と大会参加者を分離できるかがカギだ。クローズドループ内の感染者の増加がはやく進んでいるのも負担となっている。大会組織委員会は、先月23日から30日までの累積感染者数は200人に達すると発表した。東京五輪開幕前の3週間に発生した感染者数(121人)より多い数だ。
一部では、クローズドループがメディアの取材活動などを制限する過度な措置だという批判も出ている。中国がウイグル・チベット問題や市民社会弾圧など人権関連取材を防ぐために防疫を利用しているという主張だ。実際、IOCは東京大会の時と似たような防疫レベルを望んだが、中国側がこれに強く反発したという。ただ、中国官営メディア「グローバルタイムズ」は1日、こうした批判に対し「西欧が陰謀論を通じて中国を解釈するもう一つの方法」だとし、「中国の防疫政策は中国だけでなく、選手やすべての参加者を守る」と述べた。