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[寄稿]「北朝鮮の食糧不足」今年も手をこまぬいてみているのか

登録:2021-04-08 06:17 修正:2021-04-08 09:55
キム・ヨンフンㅣ韓国農村経済研究院先任研究委員
北朝鮮の金正恩国務委員長が先月25日、短距離弾道ミサイル「新型戦術誘導弾」の発射実験の参観の代わりに平壌市民のための旅客バス試作品を視察したと朝鮮中央通信が26日付で報じた=朝鮮中央通信 /聯合ニュース

 北朝鮮は最近、第8回党大会を前後して「国家経済発展5カ年戦略」の成果が振るわなかったと繰り返し認めた。これをもとに、今年から始まる新しい経済戦略は慎重に計画して進めることを重ねて強調した。農業の失敗に対する反省はさらに痛烈だった。実績に比べ、計画が「絵空事」だったとして、厳しく叱咤したほどだ。

 このような北朝鮮の反省に疑いの目を向けることもできる。経済と農業でたまった問題が噴出する前に、当事者が前もってガスを抜く政治工学的行為である可能性もある。しかし、それは重要ではない。要点は北朝鮮が農業の失敗を公に認めたことだ。外部から見ても、北朝鮮の農業問題は深刻だ。

 1990年代の経済危機以来、これまで北朝鮮は食糧不足問題を解決できずにいる。その原因はよく知られている。投入財の不足や荒廃化した山林、不十分な農業基盤などにより、国内生産は潜在力を大きく下回る水準にとどまっている。外貨不足で、足りない食糧を外国から輸入することもできない。協同農場の集団経営により、農業従事者から十分な勤労意欲を引き出すことにも失敗している。そう考えると、北朝鮮の食糧不足は他でもなく経済問題に起因するのが分かる。

 しかし、この根本的な問題と解決策に対する悩みは今はしばし置いておこう。それは北朝鮮体制の変化だけでなく、広範囲な対外経済交流とも関係があり、もう少し深く入ると、これから平和体制を構築していく過程で解決すべき中長期的な事案だからだ。我々が直ちに注目すべき問題は、2021年の今年の北朝鮮の食糧需給や食糧生産である。

 今年、北朝鮮の食糧供給の基礎となる昨年の食糧生産量とここ数カ月間の導入量は共に減少した。使用可能な食糧がいつにも増して不足するというシグナルは、北朝鮮市場における穀物価格の上昇現象としてすでに現れている。コメ価格には大きな変化がないが、昨年末のトウモロコシ価格は前年同期に比べて異例の大幅上昇となった。これは残りの約8カ月の期間に食糧不足が深刻化することを予告するものだ。普通の北朝鮮住民たちはこれまで通り、何とか持ちこたえていくかもしれない。しかし、乳幼児や妊婦、患者、老人など脆弱階層にとっては厳しすぎる時間となるだろう。

 2021年の北朝鮮の食糧生産環境はさらに暗鬱だ。2016年以来強化された対北朝鮮制裁の否定的な効果は、時間が経つほど累積していく。これに加え、新型コロナに伴う国境封鎖は農業生産に必要なすべての投入要素の導入に大きな障害となっている。その中で化学肥料の輸入減少は特に懸念される。2018年に26万トンに達していた化学肥料の輸入量が、2020年には約1万9000トンに激減した。今年初めの事情も大きく変わらない。全体肥料使用量の半分以上を輸入に依存し、年間肥料使用量の半分以上を春季に投入しなければならないことを考えると、現在の肥料供給の減少は北朝鮮の今年の農業に大きな脅威になっていることが分かる。一部では、北朝鮮がかなり前から有機農業を強調しており、化学肥料の使用減少はそれに伴う自然な現象だと主張する。しかし、栄養成分の比重の低い有機質肥料が化学肥料に取って代わることはできない。花崗岩を母岩にした痩せた土壌では、化学肥料の助けなしには生産性の向上は期待できないからだ。

 今年の北朝鮮の食糧供給不足はすでに現実となっている。今年の食糧生産不足と来年にも繰り返される食糧供給不足も予想される。韓国政府と北朝鮮当局、北朝鮮住民が経験する危機的状況を改善するために、何かしなければならないのではないか。北朝鮮が支援を求めるのをいつまでただ待ち続け、嘆いてばかりいるのか。

キム・ヨンフンㅣ韓国農村経済研究院先任研究委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/990060.html韓国語原文入力:2021-04-07 19:17
訳H.J

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