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[特派員コラム]空母であっても空母ではないという理由

登録:2019-01-01 21:18 修正:2019-01-07 10:17
日本の海上自衛隊護衛艦いずも=海上自衛隊//ハンギョレ新聞社

 「柔軟な運用が可能な短距離離陸・垂直着陸(STOVL)機を含む戦闘機体系の構築等により、特に、広大な空域を有する一方で飛行場が少ない我が国太平洋側を始め、空における対処能力を強化する。その際、戦闘機の離発着が可能な飛行場が限られる中、自衛隊員の安全を確保しつつ、戦闘機の運用の柔軟性をさらに向上させるため、必要な場合には現有の艦艇からのSTOVL機の運用を可能とするよう、必要な措置を講ずる」

 日本政府が12月18日に発表した防衛大綱のうち、航空母艦の運用に関連する方針だ。空母という単語はただの一度も出てこない。防衛大綱は、日本政府の長期的な防衛政策方向を設定するもので、通常10年に一度改定する。今回は異例にも5年ぶりに改定した。同時に発表された5年単位の兵器整備計画である中期防衛計画には、空母の運用に関するもう少し具体的な内容が出てくる。「必要な場合にはSTOVL機の運用が可能となるよう検討の上、海上自衛隊の多機能のヘリコプター搭載護衛艦(「いずも」型)の改修を行う。同護衛艦は、改修後も、引き続き、多機能の護衛艦として、我が国の防衛、大規模災害対応等の多様な任務に従事するものとする」とした。海上自衛隊が保有する最大艦艇であるいずも級護衛艦「いずも」と「かが」を空母に改造するという話だが、やはりここにも空母という単語は全く登場しない。

 防衛大綱の閣議決定の内容を記者たちに説明した日本政府関係者も、いずも級護衛艦の空母改造計画に対して「本格的に空母運用をするものではない」と主張した。いずも級護衛艦は、改造するといっても搭載できる飛行機数に限界があり、本格的な空母として運用することは不可能だと主張した。「護衛艦の多機能化が目的で、戦闘機の離着陸のための改造は一つ機能を追加したに過ぎない」ということだ。

 日本政府が空母という単語の使用を強く敬遠する理由は、空母は「浮かぶ軍事基地」であり代表的な攻撃型兵器であるためだ。日本は1941年12月、空母を利用して米国・ハワイの真珠湾を奇襲空襲し、ミッドウェイ海戦時には一度に空母6隻を投じた。空母の攻撃型兵器としての威力を最も赤裸々に見せた国が日本だった。敗戦後、戦争放棄と軍隊の保有禁止を宣言した現行憲法を制定した日本は、空母を保有しなかった。平和憲法および専守防衛原則(攻撃を受けた時だけ軍事力を行使し、その範囲は最小限とする)と空母とは不似合いな組合わせであるためだ。

チョ・ギウォン東京特派員//ハンギョレ新聞社

 日本は、防衛大綱と中期防衛計画に空母のみならず長距離打撃兵器を多数具備する内容を盛り込んだ。射程距離が900キロメートルに達する戦闘機用長距離巡航ミサイル(JASSM)と長距離対艦ミサイル(LRASM)などの“スタンドオフ ミサイル”(長距離ミサイル)を確保する内容が含まれている。これは、戦争など有事の際に敵の基地を在日米軍に依存せずに日本の自衛隊が直接打撃できる能力を備えるという話だ。在日米軍が攻撃を担当する“槍”ならば、自衛隊は防御を引き受ける“盾”の役割をするという比喩は、もはや昔話になってしまった。自衛隊が在日米軍と共に攻撃に乗り出せる法的基盤は、2015年安保法制の制・改定時にすでに用意された。防衛大綱はそのための実質的計画表のように見える。日本は、防衛大綱の「各国の動向」に2ページ程度を割いた。1ページ程度が中国関連で、半ページ程度が北朝鮮関連だ。北東アジア軍事力競争の悪循環は避けがたく見える。

チョ・ギウォン東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/876053.html韓国語原文入力:2018-12-28 09:08
訳J.S

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