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[寄稿]北朝鮮核問題の地経学的解決策

登録:2017-10-09 03:17 修正:2017-10-09 06:37
北朝鮮の朝鮮中央通信は7月28日夜、金正恩労働党委員長が参観した中で大陸間弾道ミサイル級「火星-14」型ミサイルの2回目の試験発射を実施したと29日報道した//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮の核をめぐる昨今のゲームは「クジラの喧嘩でエビの背が裂ける」(強い者同士の争いに弱い者が巻き込まれて被害を受ける)と言われていた朝鮮半島に起きた異変だ。東西古今で類を見ない弱小国と超大国の対決だ。何がこの“不可能”を現実のものにしたのだろうか。

 北朝鮮の核を生み出したのは、朝鮮半島の地政学的対立だ。そのルーツは冷戦時代に遡る。冷戦が終結する時、ブレジンスキーは、ソ連の崩壊がブラックホールを形成し、将来新しい政治的な危険の源になると予見した。実際、米ソ間の対決と均衡の二元構図が崩れ、ユーラシア大陸の「心臓地帯」は地政学的真空状態に陥った。東欧社会主義圏が崩壊し、至る所で戦乱が起きた。

 ソ連の解体は、北東アジアの朝鮮半島にも例外なく地殻変動をもたらした。過去の東西冷戦が理念が支配した地政学的同盟の時代だったならば、北東アジアはその遺産をそのまま受け継ぎ、朝鮮半島にバランスの崩れた冷戦構図を定着させた。シカゴ大学のニコラス・スパイクマンは、大陸勢力と海洋勢力が衝突する舞台、つまり「リムランド」(rimland)を制する者が世界を制するとした。北東アジアのリムランド、朝鮮半島を制するために、米国には朝鮮半島の冷戦構図が必要だった。

 米国の地政学的戦略に対応し、北朝鮮は核開発を選んだ。北朝鮮が核開発にすべてを賭けられたのは、まさに「地政学的地位」のためだった。米国は、地政学的戦略のために北朝鮮の核を30年近く“放置”しており、北朝鮮の地政学的位置のために北朝鮮の核を軍事力で解決できなかった。北朝鮮はこの地政学的な要素を存分に活用した。結局、この地政学的要素が北朝鮮の核開発に30年近い時空間を許した。

 北朝鮮核問題の解決策は依然として地政学的に進められている。米国も北朝鮮も、依然として力の論理に基づいて対決を追求している。米国は北朝鮮を完全に封鎖すれば、北朝鮮がついには屈服すると考えており、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)で核弾頭を米国本土に飛ばせられれば、米国が両手を上げると思っている。互いに最後まで突き進めば、衝突するしかないだろう。戦争説が流れているのも、そのためだ。

 北朝鮮の核が地政学的軋轢の産物ならば、その解決策は地政学的要素を弱めることにあるのではないか。その中心には米国という要素がある。東アジアに対する米国の地政学的戦略が朝鮮半島に留まる限り、朝鮮半島の地政学的要素の弱体化は期待できない。米国による地政学的要素が浮き彫りになるほど、韓国は小さくなり、北朝鮮は大きくならざるを得ない。韓米同盟が「絶対的価値」と言えども、だからこそ韓国は身動きが取れなくなる可能性もある。結局、朝鮮半島で対決の地政学的要素が弱体化されるには、何よりもその根幹をなす米国と北朝鮮との関係が改善されなければならないだろう。それは、北朝鮮核問題の解決プロセスとも一致する。

 北朝鮮は米国を百年の宿敵といっているが、誰よりも米国との関係改善を望んでいる。経済発展を図り、国際社会の一員になることを願っている。金正恩(キム・ジョンウン)政権は中央に集中していた権力を地方や企業、開発区、農村へと分散させる事実上の改革を断行し、北朝鮮経済を上向きにしてきた。それに“市場経済”の要素も全国に広がっている。地経学(geo-economics)的アプローチが可能な要素である。地政学的観点から核とミサイルだけを見るのではなく、これからは地経学的観点から北朝鮮のこのような変化の可能性も見るべきではなかろうか。

金景一・北京大学教授//ハンギョレ新聞社

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は大統領選挙の公約として、朝鮮半島を3つのベルトにして開発し、これを北方経済と連携して、北東アジア経済協力のハブとして跳躍するという「朝鮮半島新経済地図」を掲げた。一見すると、地経学の創始者であるルトワックが「経済文法」(Grammar of Commerce)で描いた、北朝鮮の核問題の地経学的解決策ともいえる。このような地経学的要素を浮き彫りにさせるには、地政学的要素の核心である米国を説得せねばならない。韓米軍事演習の中断や対北朝鮮制裁の解除で核・ミサイルの凍結を交換すると共に、地経学的環境を造成していくべきだ。朝鮮半島に地経学的要素があふれれば、北朝鮮が核を放棄することも不可能ではなくなるかもしれない。

金景一・北京大学教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/813643.html 韓国語原文入力:2017-10-08 19:10
訳H.J(1947字)

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