セウォル号の惨事が発生してから900日もとっくに過ぎて、来年1月には1000日になる。依然として家族の懐に戻って来られないでいる 9人の未収拾者がおり、セウォル号惨事の原因に対する真実も黒い海の底に一緒に閉じこめられている。 私たちは一体いつになったら、身を焦がす思いでいる未収拾者家族たちとセウォル号被害遺族たちの涙をぬぐってあげることができるだろうか。 政府はセウォル号を引き揚げる意志がそもそもあるのかからして、ますます疑わしくなっている。
今回の定期国会農林畜産食品海洋水産委員会の国政監査で、政府は年末までにセウォル号を引き揚げるために努力すると明らかにした。これまでセウォル号特別調査委員会だけでなく多くの国民が船体損傷のない完全な引揚になるかを憂慮し、引揚日程および過程を透明に公開せよと要求してきたが 「7月には引揚可能」という言葉だけをオウムのように繰り返したあげく、一体どうしてあのようにあっけらかんと前言を翻すことができるのか、言葉を失うばかりだ。
2015年4月、未収拾者家族と遺族だけでなく全国民的要求によって、政府は海中にあるセウォル号の船体を引き揚げることを決定した。 そして同年8月、引揚会社に中国の上海サルベージを選定し、今年7月の引揚を目標に引揚作業を始めた。 政府は上海サルベージの人力と装備なら、予想されるいくつかの困難にもかかわらず、全長146メートルで水深45メートルの海底にあるセウォル号を目標どおり引き揚げることができると壮語した。
未収拾者家族たちは自分も遺族になることができると期待するようになった。遺族たちは海中のセウォル号と海底に残っている遺品を収去することができるという希望を持つようになったし、国民はこれで一息つけるようになったと安堵した。全長150メートルのロシアの潜水艦クルスク号が沈没していた水深108メートルの海底の泥の中から 6カ月ほどの作業を経て引揚に成功したという外国の事例もあった。
しかしそれ以後現在まで政府はセウォル号引揚のための技術検討、会社選定、詳細な工程、船体活用計画、未収拾者収拾計画に至る全過程を、密室でひそかに音もなく進めてきた。常に未収拾者の迅速な収拾のためにという美辞麗句ばかり並べ立て、引揚作業の中で政府が明らかにした日程どおりに進行したことは一つもなかった。それでも政府は「予想を越える技術的欠陥」、「予想を越える気象状況」、「予想を越える海底の状態」、「予想を越える潮流」などを言い訳に、セウォル号引揚遅延が政府とは何の関係もないという態度で一貫した。
そして遂に、セウォル号引揚作業の総括責任部処である海洋水産部の長官が最近、「年内引揚が難しいかも知れない」と公開の場で発言するに至った。これは極めて衝撃的な消息であるにもかかわらず、政府は公式ブリーフィングではなく海洋水産部長官の特定メディアとのインタビューという異常な方式を選んだ。非常に卑怯な行為だ。もしやセウォル号の船体を深刻に毀損したのではないか、気になるところだ。
本当にセウォル号を引揚する意志があったのなら、本当に未収拾者家族と遺族の痛みを理解していたのなら、政府は自ら 1年以上も前から公言していた「7月引揚」の失敗に対して、未収拾者家族と遺族、そして国民の前に責任を取る姿を見せるべきだった。少なくとも自らの “虚言”と “希望拷問”(訳注:かなえられない希望を与えて苦しめること)に対して公開の場で謝罪し、引揚過程と詳細な工程を透明に公開して国民とともに行なうセウォル号引揚を宣言すべきであった。しかし政府はそうしなかった。政府は無能で無責任であったのみならず、正直でもなかった。
遅れに遅れはしたが、それでも国民に責任を持つ「正常な」政府ならば、今からでも「船体損傷のない完全な引揚」のために引揚過程の一切を国民の前に公開しなければならない。同時に、引揚作業の過程でセウォル号の船体をどれほど損傷させたのか、国民に告白し許しを求めなければならない。さもなければ政府がはじめからセウォル号を引き揚げる意志も能力もなかったという世間の疑惑を払拭することは困難であろう。
韓国語原文入力: 2016-10-27 18