セウォル号事故の真相究明作業が大きな岐路に立たされている。特別調査委員会(特調委)の活動期限の6月末「終了」にこだわる政府と、特別法の改正を拒否する与党が作り上げた壁の前に、野党と特調委は解決策を見いだせずにいる。しかし、明らかにすべき真実はまだ多く、疑問点も新たに浮かび上がっている。 304人の尊い命を失っているのに、真実が埋もれたままで何も教訓を得られないなら、韓国社会は一歩も前に進めなくなるだろう。
海洋水産部の主張通り、6月末に特調委が活動を終え、今後の3カ月間は白書の刊行と「船体調査」にだけ集中することになれば、当初の法制定の際に合意した真相究明と安全対策の樹立という約束は水泡に帰すことになる。「船体」以外にも調査すべき対象が多いだけでなく、9月までに引き揚げが完了するかどうかも不透明な状態では、「船体調査」でさえ実現が難しくなるかもしれないからだ。
セウォル号に容量を超過して積載された鉄筋の一部が、済州(チェジュ)海軍基地の建設に使われる予定だったことが最近新たに明らかになった。セウォル号事故前後に、乗組員らが国家情報院側と電話で連絡していたことがこれと関連しているのか、国防部はなぜ鉄筋が済州基地に運ばれることを否定したのか、なぜ検察の捜査ではこのような事実が明らかにされなかったのかなど、解決すべき疑問は一つや二つではない。当時セウォル号が無理に出航したのが、海軍基地の工事のためなら、政府も出港を強行した責任を免れない。
特調委の活動の終了を急ぐ背後に、朴槿恵(パククネ)大統領と大統領府がいることは、容易に推察できる。ハンストする遺族の隣で暴飲暴食闘争を行う非人間的な組織を背後で操ってきた大統領府行政官をまだそばに置いているのを見ると、大統領が最大の障害かもしれない。
しかし、総選挙で惨敗した後、大統領府にも言うべきことはいうと豪語していた与党が、野党との交渉過程で「大統領府は調査対象から外してほしい」として、いまだに大統領府の顔色を窺っているのは、責任ある公党の姿勢ではない。総選挙前に特別法の改正を公約して以来、期限延長などに向けた協力を約束した野党3党も、口先だけではなく、より責任ある態度で臨んでもらいたい。
事故から2年が過ぎ、疲労感が高まる中、隙を狙って忘却を唆してきた勢力は、「時限」と「予算」を前面に掲げ、できないの一点張りだ。4・16連帯のイ・テホ常任運営委員は「悲劇を経験した人に対する最小限の共感と連帯が韓国社会に残っていることを少しだけ見せていただきたい」と訴えた。こんな時だからこそ、自覚ある市民の関心と参加が必要とされる。
韓国語原文入力:2016-06-29 17:23