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[寄稿]心理学で「反抗勢力」は普通の人々

登録:2016-07-27 01:56 修正:2016-07-27 08:02
セウォル号事故犠牲者の檀園高オ・ヨンソクさんの母親、クォン・ミファさんが6月27日、ソウルで行われた「セウォル号特調委強制解散・朴槿恵政権糾弾」大統領府前記者会見で「これ以上殺さないで!」と書かれたプラカードを持ち涙を拭っている=キム・ソングァン記者//ハンギョレ新聞社

 星州(ソンジュ)が大騒ぎだ。メロン農業に勤しむべき人々がソウルまで来て座り込みをする。星州郡民はもはや外部者の指図を受けた反抗勢力となった。そう来ればもうお馴染みのパッケージだ。2015年民衆総決起のデモ中に警察の放水銃に撃たれた農民のペク・ナムギ氏やカトリック農民会の人々がそうであり、密陽(ミリャン)のおばあさんたちがそうだったように。「歴代最高のコネ」がない限り、市民として声を上げようとすれば犬や豚の鳴き声の扱いを受け、刑務所であろうと集中治療室であろうと口を閉ざさなければならない。

 災難惨事が後を絶たない国において、それでも被害者の声を国家機関が直接聞き記録に残した最初の事例が発表された。セウォル号惨事特別調査委員会(特調委)が2015年末に発注し、2016年1月から6月までセウォル号事故被害者支援の実態調査を実施した。私もコミュニティ心理学者として今回の研究に参加した。特調委の活動が強制終了された後の7月20日、総合結果を発表した。

 壇園(ダンウォン)高校の犠牲者、生存者、一般人犠牲者、そしてその家族を対象に質的調査を実施した。心理学者で構成されたチームは、壇園高の犠牲者の親、親の役割を担っている祖父母および叔母たち、そして兄弟姉妹145人を深層面接した。そのうち46面接を質的研究の基礎理論方式で分析した。短いもので1時間、長いもので4時間実施した46の面談を書き起こすと、2300ページに上った。そこから536の主題が導き出された。苦痛の言葉と希望の言葉が交差していた。

 普段セウォル号事故に関心があると思っていた私も、今回の研究の質的分析結果がこのように出るとは思わなかった。実は彼らがこれほど普通の人だとは思っていなかった。黄色の服だけを着て、徒歩行進をし、剃髪をして、炎天下の日差しのもと百八礼をする彼らは、普通の人ではないと思っていた。国を敵(かたき)とする人たちではないかと思った。しかし、資料が語るものをたどると彼らはあまりにも普通の人だった。彼らの経験を示す重要な中心の要因は「親・家族としての役割」だった。

 学校に子供を送る親として、当然学校を信頼し、学校主催の修学旅行へ送りだすことに最善を尽くした。事故が起きた当時も、国を信じる普通の親らしく耐えて待ち続けた。親として、自分の子供が死んだ理由を問うのはあまりにも当然だった。しかしこの問いは2年以上に渡り答えを得られていない。だから、親として、家族として当然この素朴な問いの答えを求め、街頭に座り込む。倒れて立ち上がれないほど病み、身体をがん細胞が蝕んでも、「親・家族の役割」は倒れているわけにはいかないのでまた家を出る。まだ遺体が収拾されていない9人の家族は、2014年4月の状態のまま彭木(ペンモク)港に留まっている。この素朴な問いひとつの答えを探している人々が、この社会では国を敵とする人とされる。外部者の指図を受けた反抗勢力とされる。税金を食いつぶし国家経済を破綻に追い込む主犯とされる。実際この普通の人々はガラスの財布から税金を払い、その税金で給料をもらう方々は歴代最高のコネとなるこのご時世においてでも。

 被害者をなじるのは人間の本性だ。社会をなじれば自分も危険にさらされることを認めているのでその分不安になる。 2014年4月には相当数の人々がこの不安に反応した。 2016年7月には同じくらい多くの人々がまた被害者をなじる。まだ闘うのかと。かなりおかしな人たちなんじゃないかと。実際は、どこまでも私たちと同じ人々だ。歴代最高のコネたちの言葉をおおかた信じ、骨身を惜しまず暮らせば今よりも暮らしは良くなるだろうと思って生きてきた私たちと同じ普通の人々だ。自分の子供が学校へ行き、集団で死んで帰ってくることさえなければ。自分の子供がいまもまだ深い海の底に閉じ込められてさえいなければ。あまりにも素朴な親の役割や家族の役割に、人生の意味がかかっている人々なのだ。

 いま星州では一日一日が闘争となった。いま農民のペク・ナムギ氏は8カ月に渡り意識不明だ。いま彭木港では海の底の状況に一日一日の希望と絶望が交差している。この普通の人々の素朴な声が、反抗勢力の闘争だと信じるのか。歴代最高のコネのパッケージを信じた瞬間、私たち普通の人々は犬や豚同然となる。

ジョン・アンスク/ユタ大学アジアキャンパス心理学科助教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

韓国語原文入力:2016-07-25 19:15

https://www.hani.co.kr/arti/opinion/because/753830.html 訳M.C

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