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[記者手帳]少女像を守ろう

登録:2016-01-03 23:34 修正:2016-01-04 09:22
12月30日夕、「日本軍慰安婦問題韓日交渉廃棄のキャンドルの灯り文化祭」が開かれる中、ソウル鍾路区の日本大使館前の平和の少女像に市民が乗せた傘が雨を防いでいる=キム・テヒョン記者//ハンギョレ新聞社

 恥ずかしい話だが、先月23日までは韓日両政府が慰安婦合意をこのように電撃的に“片づける”とは想像もできなかった。 そうと分かっていればおそらく先月24~27日をソウルで過ごす休暇日程を組まなかっただろう。 周囲の人から「慰安婦合意が差し迫っているのではないか」という質問を受けた時も「そんなことは絶対に無い」と自信たっぷりに答えた。

 ソウルで安倍晋三・日本首相が岸田文雄外相を韓国に送るという報道に接した時、全身が震えるほどの衝撃を受けた。 「結局、彼らが問題を起こしてしまうんだな」。最も重要な時に戦線から離脱してしまった軍人のように、新聞社にも申し訳なく身の置き場がない状況になった。

 まだ合意は遠いと自信を持った理由はただ一つだった。 慰安婦問題が解決されるには、朴槿恵(パク・クネ)大統領ではなく被害者たちが納得しなければならない。 外交的交渉は相手のあることなので、韓国の主張を全面的に勝ち取ることはできない。 だからこそ普段から被害者たちの意見を誠実に傾聴し、支援団体と頭を絞って案を作り、最終結果が出た時に被害者たちが「残念だが政府がこの程度までやってくれたからご苦労様」として受け入れるようにすべきだった。 しかし、朴槿恵(パク・クネ)政権が被害者や支援団体とそのような意見交換や信頼の造成過程を経たという話は聞いたことがなかったので、まだ合意は遠いはずと考えたのだ。 後から思えばロマンチックで純真な考えだった。

 合意がされた直後、日本のマスコミを通じて色々紛らわしい情報があふれている。 日本の二大有力紙である朝日新聞と読売新聞は30日付で日本政府関係者の話を引用して「少女像(平和碑)の移転」を日本政府が約束した10億円“拠出”の前提条件と考えていると報道した。韓国で問題になると日本外務省は30日夜になって「今回の合意は(両国の長官が)記者会見場で発表した内容が全てで、それ以上でも以下でもない」と説明した。 韓国語もそうだが、日本語も詳細に内容を読まなければ真意が分かりにくい。 この説明には「10億円は少女像撤去の前提条件ではない。 少女像が撤去されなくとも支給される」という内容は含まれていない。 日本側も自国の世論があるので、少女像が撤去されない限りは10億円を拠出しない。 韓国政府の当局者が何と言おうが、そのように見るのが現実的で合理的だ。

 これは、今回の合意が実際に効力を発揮するには少女像の撤去に対する韓国市民社会の“同意”がなければならないことを意味している。 両国の長官が発表した内容には「以上の措置を着実に実施することを前提に、慰安婦問題が解決されることを確認する」という内容が含まれている。 従って、少女像の撤去がなされない限り慰安婦問題は「最終的・不可逆的に解決」されないことになる。 少女像に対する日本の執着により、韓日合意は少女像の撤去という韓国市民社会の“批准同意”過程を経て初めて効力を得ることになるという奇妙な構図が完成された。

 朴槿恵政権は被害者たちと支援団体を説得する意志も能力もないように見えるので、4月の総選挙が終われば撤去を敢行するかもしれない。 これを阻むことが慰安婦問題の正しい解決を望む韓国市民社会の新たな負担になった。

キル・ユンヒョン東京特派員 //ハンギョレ新聞社

 おそらく少女像は長期にわたり撤去されないだろう。 その場合、韓日両国は慰安婦問題を「解決したわけでもなく、解決しなかったわけでもない」曖昧で冷たい状態で今後の協力を継続せざるをえない。 もしかしたら、これこそが慰安婦問題に対する心からの謝罪も、それにともなう和解も成し遂げられなかった韓日関係の真の“ニューノーマル”なのかも知れない。

キル・ユンヒョン東京特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/724288.html 韓国語原文入力:2015-12-31 18:41
訳J.S(1680字)

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