本文に移動

[コラム]検察共和国と墜落する政権

登録:2015-01-26 23:11 修正:2015-01-27 10:06
クァク・ビョンチャン先任論説委員が朴槿恵大統領に送る手紙(92)
大韓民国検察。 資料写真 //ハンギョレ新聞社

朴正煕時期の拷問・冤罪被害者の代理人を脅迫する検察
真実と偽りを入れ替える検察、その検察に依存する現政権
キム・ギチュン、ウ・ビョンウがいるのに
イ・ミョンジェまで大統領府に呼び入れ
検察が前面に出れば政権墜落が早まるのは憲政史の教訓

 「周辺ではハンギョレも名誉毀損で告訴しろと言っていた。長期にわたり自分という人間を見てきたし仕事も一緒にしてきた新聞なのに、どうして検察の話だけを信じて事実確認もせずに報道できるのか?」。ある弁護士の友人の抗議です。人権と正義を守る道を一緒に歩んできたと自負してきたが、自分より検察の話を信頼していることに対する絶望感の表現でした。

 彼はこの頃、過去事・補償事件の弁護を引き受けたことと関連して最近紙面にしばしば登場しました。 民主弁護士会創立の先頭に立ち、民主弁護士会が追求する価値を先頭に立って実践してきたし、それなりにその分野で尊敬と信望を受けていました。そんな彼が、人権と正義を前面に掲げて金儲けもしてきた破廉恥漢のように罵倒されました。 政府の過去事委員会で活動し取得した情報を利用して、数千億ウォン台の訴訟を担当し、実費程度を受け取るべき事件で、数十億ウォン台の成功報酬まで得ていたということです。 ハンギョレもそのような疑惑の火に油を注いだ局面だったので、彼としては複雑な思いにならざるをえませんでした。 「あんな検察の言うことを自分より信じるのか?」告訴するという言葉に対して私もこう答えました。「私でもそうしたと思う。だけど、これだけは覚えておいて欲しい。あなたもハンギョレが検察に呼ばれて、あんな検事の前で調査されたなら、誰が喜ぶだろうか」

 検察は本当に役に立ちます。 特に政権にとって検察は、あらゆる用途に使える道具になります。 簡単なことでは鞭になり、人怖がらせる刃物になって、時には人を殺す殺人刀になりもします。 ゴミ清掃夫としてジメジメしたものを処理し、敵から組織を守るイヌになったり、事件の性格まで覆してしまう歴史の盗掘屋になったりもします。

 大統領府民政秘書室監察文書波動の時にしたことはゴミ清掃夫役の典型でした。 大統領府のいいかげんな指針に従い、証券街に出回るチラシ以上にくだらない脚本を作って、大統領府の臭いがプンプンする下水溝を覆ってしまったのですから、あれほど気がきいた清掃夫はいないでしょう。最近の過去事件弁護受任問題では、歴史を盗掘して勝手に再構成しようとする盗掘屋の役割を自任したのではないかと思います。

 彼らが問題にした過去事訴訟とは、国家が逮捕拷問拘禁等を通して人権を蹂躪し、国民を殺しさえした事件の被害者が国家を相手に被害に対する賠償を要求することでした。 国家が犯した誤りが国家機関によって確定したならば、国家は当然に被害者と国民に謝罪して、物的精神的被害に対する賠償をしなければなりません。 もちろんその規模を巡って争うことはできるでしょうが、国家は賠償自体を回避しようとしました。 被害者が法的な救済を申し込んだのはそのような理由からです。

 そのような厚かましい国家に対抗するためには、誰を法的代理人として立てなければならないでしょうか。 これまであちこち顔色を伺ってきた人でしょうか、あるいは真実糾明に自分のことのように尽くしてきた人でしょうか。 何も知らない弁護士でなければならないのでしょうか、あるいは共に真相を糾明する過程でその真実を知っている弁護士でなければならないでしょうか。その人が真相調査委員会に参加していようがいまいがそれは同じことです。

 その上、国家が市民の人権、さらには生命まで蹂躪したまさにその時に、検察は重要な加害者の一味でした。最小限しなければならないこともせずに、国民に被害をもたらしたという点では不作為による共犯でした。 セウォル号事件の時、船員に適用したまさにその不作為殺人疑惑ということです。 さらに言えば、検察は不当に逮捕し拘禁し拷問してでっち上げた事件を起訴して公判を進行させた人権蹂躪の最終処理者でした。 言われるままにせざるをえない下手人だったと主張しても、自分の罪を避けることはできません。 その上、そんな検察が国家の代理人でもあったのです。

 今回の騒乱の本質は、国家が犯した犯罪において加害者あるいは共犯であったし、今はそのような国家の代理人でもある検察が、被害者の代理人を脅して、あろうことか破廉恥犯に追い立てているのです。 検察は本当にどれほど便利なのでしょうか。 そして低劣なのでしょうか。 政権としてはありがたくて涙がでるほどでしょう。 国家の誤りというのは、朴槿恵大統領の父親である朴正煕時期に行われた反倫理犯罪が相当部分を占めているからです。

 検察がやっとの思いで突きつけたのが、弁護士法上の受任制限規定です。しかし、国家が加害を認めず、認めたとしても被害救済を拒否しているのに、誰が被害者を代理して国家の誤りを明らかにし、被害救済に乗り出さなければならないでしょうか。 それはむしろ調査委員会の活動延長により調査委員らがしなければならないことです。 調査委員ならば法廷に出て行き、被害者とともに彼らの被害を救済させなければなりません。 それでこそ調査結果の正当性が司法的に立証されることになるのではないでしょうか。 その上、相手が犯罪を犯した国家であり、またその代理人である検察と対抗するというのに、他の誰ができるでしょうか。

 そんな風に黒と白、真実と偽りをひっくり返す才能は検察にしかないでしょう。 過去事訴訟を巡って広がる騒乱に長々と言及した理由は、そんな検察に対する現政権の限りない愛情とより一層深まる依存度のためです。

2002年1月17日、検察総長に就任したイ・ミョンジェ民政特別補佐官。 資料写真 //ハンギョレ新聞社

 今日の大統領府首席秘書官会議には新任の特別補佐官らが参加しました。 その席でキム・ギチュン秘書室長は、イ・ミョンジェ民政特別補佐官をこのように紹介しました。 「最高検察庁中央捜査部長、ソウル高検長、検察総長などを務めた正統検事出身として、在職時に当代最高の検事と評価された方です」 検事イ・ミョンジェは検察総長就任辞でしたという「真の武士は凍え死んでももらい火にはあたらない」という話で有名です。

 一つだけお尋ねします。 「そのような人をそのまま置いておかずに、なぜ大統領府に呼んだのですか。 大統領府は権力にこびる所ではなく、権力自体であるためですか?」すでにもらい火の先生として名指しされ注目を集めるウ・ビョンウ民政首席もいて、キム・ギチュン秘書室長もいるというのに、それでもまだ不安なのですか? イ・ミョンジェ元検察総長は現政権が発足する時、紙面を通じてあなたにこう忠告しました。「検察の独立性を尊重して“史上最も偉大な検察総長”を誕生させることを望む」 ところが現政権は検察の独立性をぞうきんの切れ端のようにしました。 何を根拠に呼び入れたのですか。

キム・ギチュン秘書室長(左)とウ・ビョンウ民政首席。資料写真 //ハンギョレ新聞社

 イ元検察総長もやはり同じです。 彼はなぜ大統領府のもらい火に当たることにしたのですか。 年を取って背中がこらえられないほど冷えたのですか、あるいは危険なTK政権の老いた番人になることを選んだのですか…。

 歴代の独裁政権は検察出身者をことのほか重用しました。それがどれ程ならば、全斗煥政権の民正党は陸法党(陸軍士官学校+法曹)と呼ばれるでしょうか。 直選で選出された民間政権(5.16軍事勢力らが民間人の服に着替えて民間政権樹立を標榜した)も同じことです。 金大中、盧武鉉大統領時期を除いて、任期末になれば検察共和国になりました。 任期中盤からレイムダックに陥った盧泰愚政政権は発足最初から検察共和国でした。

 検事と軍人は似ている点が多いのです。 進級に命をかけ、人事権者には盲従し、説得よりは処罰に頼り、包容よりは排除、統合よりは分裂、足すことよりは引くことに長けています。 ただ政治軍人は権力をにぎるのに命でもかけますが、検察はそのような権力のもらい火にでも当たろうとします。 検事イ・ミョンジェはそのようなもらい火検事を最も敬遠したといいます。 ところが、その彼自身が老境を迎えもらい火にすり寄って行ったのではないかと思います。 真に不幸な検察であり、不幸な政権です。 検察が政権の前面に出れば出るほど、政権の墜落は一層早まるというのが韓国の憲政史の教訓であるためです。

クァク・ビョンチャン先任論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/bluehouse/675265.html 韓国語原文入力:2015/01/26 18:00
訳J.S(3670字)

関連記事