本文に移動

[コラム]21世紀版 保導連盟事件を夢見ているのか

登録:2014-12-22 21:07 修正:2014-12-23 05:40
クァク・ビョンチャン先任論説委員が朴槿恵大統領に送る手紙 (87)
1950年7月、忠清南道大徳郡山内面のコルリョンゴルで、軍人らが保導連盟員を虐殺している。 当時10日ほどの間に合計約4000人が犠牲になった。//ハンギョレ新聞社

李承晩政権、6・25が勃発すると
左翼事犯を無差別虐殺

憲法裁判所による統合進歩党解散で
“新保導連盟”の復活を憂慮

 憲法裁判所が統合進歩党解散決定を下した日、ある人は1972年の維新前夜、ある人は李承晩政権下で曹奉岩(チョ・ボンアム)先生の死刑と進歩党抹消などを思い起こしました。 しかし私は6.25戦争初期に行われた“保導連盟事件”を真っ先に思い浮かべました。 韓国現代史で最も凄惨だった国家権力による民間人虐殺事件のことです。

 もちろん統合進歩党指導部が犯した誤りの肩を持つつもりはありません。 指導部の一員だった京畿東部連合出身者が見せた党運営の反民主性、暴力性、覇権主義は過去の独裁政権担当者の行動と変わらないからです。 党が親北朝鮮覇権主義や暴力性と決別できないことも、彼らに対する期待を失わせました。党名に挿入した“進歩”という言葉が恥ずかしく思えました。 彼らは決して弱者の側でもなく、正しくもありませんでした。

 問題は、そのような政党であっても、審判は国民に任せなければならないという原則のことです。 憲法裁判所の決定は韓国の憲法が守ろうとしている政治的結社の自由と政党政治の価値を破壊するものでした。 憲法裁判所に政党解散の有無を審判する権能を付与したのは、行政権の不当な圧力と侵害から政党を保護するためのものであり、政党の存立を裁てということではありませんでした。 裁判官の偏見と予断がそのまま反映されて、政権の注文がそのまま受容された審判過程は、民主社会が最も警戒する“人民裁判”の手本でした。

 世界の憲法裁判機関の協議体である「ベニス委員会」が今回の解散審判決定文を要求したということから、そのような無謀と独善に対する国際的な視線が明らかになっています。 ベニス委員会はすでに、政党解散審判制度は「きわめて厳格で制限的に適用されなければならない」という勧告をすでに各国の憲法裁判機関に提示しています。

 しかしこの場で是非を問い詰めるのは無意味かも知れません。 この政権はたとえベニス委員会が不当だという勧告をしたとしても、朝鮮半島の現実を知らない机上の空論として片付ける可能性が高いためです。 すでに国際労働機構や国際人権協約などの勧告を無視したのと同じ話です。 さらには憲法裁判所の決定以後に解散した党指導部と党員に対する広範囲な抑圧が具体化されています。 この不十分な憲法裁判所決定を引用するならば、彼らを“利敵団体”次元を越えて、国家保安法上の“反国家団体”構成などの容疑で処罰を受けることもありえます。 それだけでしょうか。 いわゆる反逆者に対する狩猟も予想されるでしょう。

 6.25(朝鮮戦争)初期に発生した保導連盟事件は、その極端なケースでした。

 解放された空間でこの国の国民の間では、国家をどのように作るのかを巡って多くの衝突がありました。 左翼も右翼も、 親日派も独立活動家もいました。 しかし、李承晩政権は左翼を排斥して独立活動家を疎外させました。 特に物理的に米軍政および李承晩政権と対抗した左翼事犯は、保導連盟という転向者団体に登録させ管理しました。 名前こそ保護団体ですが要視察対象者を管理し統制する団体でした。日帝が“不逞鮮人”に対して使った方式をそっくりそのまま適用しました。

 保導連盟には左翼事犯だけを強制的に加入させたのではありません。 その家族はもちろん、彼らに食べ物や着るものを提供した人々まで含めました。 親日派が大多数であった軍警や右翼団体関係者と仲の良くない人々までも強制的に含めました。 保導連盟会員たちには公民証や道民証を与えませんでした。 社会的烙印に他ならない保導連盟証だけを与えました。 そのような人々の数が何と30万人に達しました。

 6.25戦争が起きると李承晩政権は彼らを“予備検束”し、北朝鮮軍が押し寄せて来ると無差別に虐殺しました。 軍警はもちろん西北青年団など右翼青年団体までが彼らの殺戮に動員されました。 一家親族が無残に殺害されたことも悔しいが、生存したその家族にまで連座制を適用し、査察して就職を制限するなどの犯罪は続きました。

 統合進歩党の党員は10万人に達するといいます。 党費をきちんと納めている真性党員だけで3万人に達しています。 今や彼らは暴力で北朝鮮の体制をこの地に建てようとした者と規定されました。 いわゆる京畿東部連合はもちろん、“アールオー”とも関係がなく、会合に参加したといっても手製銃を作って対抗しようなどという発言に鼻で笑った人々も同じことです。 彼らは全員が21世紀版保導連盟に括られることになったのです。

 それだけではありません。 アン・チャンホ、チョ・ヨンホ裁判官は「広場の衆愚(愚かな大衆)、日和見主義の知識人、ジャーナリスト、いんちき進歩主義者、人気迎合政治家」までも警戒の対象に挙げました。 彼らとは考えが異なる人でも、彼らの基本権を守ろうと努力する人々まで含ませようとしているのです。私や『ハンギョレ』構成員全員はそのような“日和見主義ジャーナリスト”の範疇から抜け出すことは難しいでしょう。

 いわゆるアールオー会合で、一部の参席者は戦争など非常状況で主要国家施設の破壊などに言及し、予備検束と虐殺テロによる殺戮などに言及したといいます。 予備検束、虐殺などの言葉を聞いただけで私は苦笑いしました。 すでに解放以後、国家公権力によって行われた民間人虐殺に対して政府が再評価もし、謝罪もし、賠償もし、記念物もあちこちに立てられています。 彼らの恐怖感は妄想、あるいは弁明だったのです。

 しかし、今回の憲法裁判所決定を見て、また今後進行される動きなどを見て、そのような私の考えは変わりました。 この政権はすでに彼らを反国家団体と規定して、基本権を剥奪して、この社会で永久に孤立させ排除しようとしています。 憲法裁判所は彼らを事実上反国家団体と烙印しました。 御用団体らは直ちに統合進歩党員全体を、死刑まで可能な反国家団体構成の疑いなどで告発しました。

 党員たちの次に整理される人は、整理されれば反逆者もしくは“役立つバカ”になる人々でしょう。知識人、ジャーナリスト、愚衆、政治家、進歩主義者などがそれに当たります。 これが保導連盟事件の復活ではなくて何でしょうか。異なる点が一つあるとするなら、解放空間では親日派によって主に行われたのに対して、今の事態を主導する人々はあらゆる違法・不法で既得権を積み上げたり奪取した人々だということです。

クァク・ビョンチャン論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/670175.html 韓国語原文入力:2014/12/22 16:17
訳J.S(3190字)

関連記事