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[Q&A]オミクロン株、既存のワクチンの効果はどの程度なのか

登録:2021-11-29 06:56 修正:2021-11-29 07:52
現在のデータからは、危険性の正確な把握は難しい 
南アフリカ共和国の場合、入院患者の大多数がワクチン未接種 
専門家「懸念されるが、可能なことはワクチンとマスクだけ」
新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」と感染者のグラフの表示の前に注射器の針が見える/ロイター・聯合ニュース

 南アフリカ共和国で初めて確認された新型コロナウイルスのオミクロン変異株が、世界各国に広がり、世界的に懸念が強まっている。オミクロン株がどれほど危険なのか、既存のワクチンの接種に効果があるのかなどについて、Q&A形式でまとめた。

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オミクロン株とは何か?

 南アフリカ共和国で確認された新たな新型コロナウイルスの変異株だ。デルタ株などのこれまでの変異株に比べはるかに多い50個ほどの突然変異が発生し、よりいっそう容易に広がる可能性が高い。デルタ株の後で最も懸念される変異株だという意見だ。

 この変異を確認した南アフリカ共和国の伝染病対応イノベーションセンターのトゥーリオ・デ・オリベイラ所長は、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に30個以上の突然変異があると指摘した。スパイクタンパク質は、ウイルスが人間の細胞に付着する役割を果たしており、それだけ感染が容易だという意味だ。世界保健機関(WHO)は、この変異は他の変異に比べ再感染のリスクが高い可能性があると明らかにした。幸いな点は、オミクロン株は既存の遺伝子増幅(PCR)検査で把握できるということだ。

 防疫専門家らは、現時点では、オミクロン株の感染力が強く、既存のワクチンや治療法の効果が減少する可能性があるという懸念に同意している。しかし、これまでに確保されたデータからは、危険性を正確に評価するにはまだ早いとみている。

 専門家らは注意を促すが、恐怖に陥る必要はないと勧告している。既存のワクチンがオミクロン株に効果があるのかは研究中だが、専門家の間では引き続き効果があるというのが初期段階での意見だ。

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どれほど感染が広がっているのか?

 新型コロナウイルスのオミクロン株は、23日に南アフリカ共和国で初めて確認されたが、どこで端を発したのは不明だ。南アでは、20~26日の間に毎日人口10万人あたり50人の新規の新型コロナ患者が発生し、前週比で592%の爆発的な増加率を示した。南アの新型コロナ内閣諮問委員であるイアン・サンヌ博士は、オミクロン株が支配的なウイルスになっているとして、「全般的により感染力が高いと考えている」と述べた。

 英国、ベルギー、ボツワナ、ドイツ、香港、イスラエル、イタリアなどでも感染者が確認された。アフリカ大陸以外の事例は、ほどんどがアフリカ地域を旅行した人たちから発見された。オランダ当局は27日、南アから到着した600人の旅行客のうち61人が新型コロナに感染していたと発表した。このうちオミクロン株の感染者が何人なのかは確認されなかった。

 保健専門家らは、オミクロン株がすでに他の国々にも広がっているとみている。香港で確認された最初のオミクロン株の感染者は、11日に到着した旅行客だ。ベルギーで確認されたある女性の感染者は、サハラ砂漠以南のアフリカ地域を旅行していなかった。この女性は、トルコを経てエジプトを旅行してから11日後に症状が現れた。

 米国国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は、NBCの「トゥデイ」に出演し、「オミクロン株がすでに米国で拡散しているとしても驚くべきことではない」と語った。

南アフリカ共和国のヨハネスブルグ国際空港で、医療関係者が旅行客に対して新型コロナのPCR検査を行っている=ヨハネスブルグ/AFP・聯合ニュース

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既存のワクチンに効果はあるのか?

 オミクロン株が既存の新型コロナワクチンの効果を制限するとしても、ワクチンが提供する保護効果を完全には無力化しないだろうと、専門家らは主張している。

 南アのサンヌ博士は、現時点ではオミクロン株の感染者のサンプルが少ないとはいえ、ワクチン接種者に対するブレークスルー感染となった人の割合が比較的高いとみなした。しかし彼は、入院した患者の大多数はワクチン未接種の人であることを指摘し、ワクチンが今もなお効果的だと述べた。

 米国のフレッドハッチンソンがん研究センターのウイルス学者のジェシー・ブルーム氏は、「この変異株の突然変異は、(既存のワクチンの)中和抗体(ウイルスが体に入ってきた際に感染を防ぐ抗体)を無力化したり避けることはできないと予想している」と述べ、「実施可能な確実なことがある。ワクチンを受け、ブースター接種を行い、マスクを使うことだ」と強調した。

 ワクチン接種への抵抗が激しい欧州と米国では、むしろ今回のオミクロン株の発生によってワクチン接種の必要性を強化している。米国のジョー・バイデン大統領は声明で「ワクチン接種をしていないのであれば、今がその時期だ」と述べ、ワクチン接種とブースター接種を促した。

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既存のワクチン企業の対応は?

 新型コロナワクチンを生産する製薬会社は、26日に一斉にオミクロン株に対する対応研究を開始し、楽観的な結果が予想されると発表した。

 ファイザーは声明で「ワクチンを回避する変異が発生するとしても、ファイザーと(共同開発企業である)ビオンテックは、そのような変異に対応するオーダーメイド型のワクチンを、規制当局の承認を含め約100日以内に開発し生産できると予想する」と述べた。ヤンセンファーマ(ジョンソン・エンド・ジョンソンの医薬品部門)は、「我々はすでに、南アで発見され急速に広がっている新たな変異に対し当社のワクチンの効果を試験中」と発表した。

 アストラゼネカは「変異が発見されたボツワナなどで、すでに研究を進行中」と述べ、オックスフォード大学と共同で開発したワクチンのプラットフォームで、新たな変異に対する迅速な対応が可能だと明らかにした。モデルナは「承認されたワクチンのブースター接種だけが、免疫力低下に対する現在唯一の戦略」だと述べ、オミクロン株に対応する3つのブースター接種案を試験中だと明らかにした。

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進行中の日常回復は再び止まるのか?

 オミクロン株が全世界に広がり、入院と死亡者の数が大きく増えるのであれば、各国政府は社会的距離措置(ソーシャル・ディスタンシング)などのこれまでの感染防止策を再び強化しなければならないだろう。最悪の場合、ロックダウンにまた戻らなければならない。しかし、多くの科学者は、アルファ株やデルタ株が広まった時よりは対応に自信を持っていると、フィナンシャルタイムズが報じた。

 まず、デルタ株の時に比べ、オミクロン株の発見と警告がすみやかに行われ、迅速な対応が進んでいる。また、この変異がワクチンと過去の感染による免疫力を完全に突破する可能性は低いという点だ。現在はワクチン接種率が高く、アルファ株やデルタ株の時よりは被害は小さいとみられている。

 今後も変異株の出現は不可避だとみなされている。そのため、マスク着用などの日常的な感染防止策は続けられなければならない。何より、アフリカなどの開発途上国でのワクチン接種が、変異株の出現を防ぐカギだ。ワクチン接種が進んでいない途上国で新型コロナが広がり、変異株の出現が起き、先進国に広がっているからだ。先進国でのブースター接種も重要ではあるが、途上国へのワクチン供給が、変異株の出現や既存の新型コロナウイルスの感染拡大を防止するには、よりいっそう急がれるという指摘だ。

チョン・ウィギル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1021071.html韓国語原文入力:2021-11-29 02:33
訳M.S

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