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オミクロン株、最悪の状況で登場…「ワクチン不平等のせい」

登録:2021-11-29 03:05 修正:2021-11-29 06:55
コロナ再拡散、北半球の冬、ワクチン効果の低下が重なる 
「貧しい国へのワクチン供給を急がなければ、変異株は登場し続ける」
27日(現地時間)、各国が新型コロナウイルスのオミクロン株を遮断するため国境規制を強化している中、ドイツのミュンヘン空港で旅行客がコロナ検査を待っている=ミュンヘン/EPA・聯合ニュース

 南アフリカなどで初めて確認された新型コロナウイルスのオミクロン株への感染者が英国やドイツをはじめとする欧州で相次いで確認されたことから、全世界が「オミクロン恐怖」に陥っている。開発途上国への公平なワクチン供給なしには、世界はコロナ大流行から脱することはできないという指摘も力を得ている。

 オミクロン株がどれほど危険なのかはまだ不明確だが、登場した時期が非常に悪い。欧州が最悪のコロナ再拡散に直面しているうえ、地球の北半球が冬季に入りつつあることで屋内活動が増えている。そのうえ、主要国が集中的にワクチンを接種してから6カ月ほど経ち、ワクチンの効果が低下している可能性もある。このため、全世界が再び「封鎖の時期」へと突入する危険性も高まっている。

 専門家は、ワクチンの不平等に起因する開発途上国の状況が改善されなければ、新たな変異株は登場し続け、世界全体を危険に陥れる恐れがあると指摘する。

オミクロン株の拡散状況

 25日(現地時間)にボツワナ、南アフリカ、香港などで初めて確認されたオミクロン株は、26日にはイスラエルとベルギーでも確認された。27日には英国、ドイツ、イタリアなどで、そして28日にはオーストラリアやオランダと、少なくとも12カ国で感染者が確認されている。

 オーストラリア政府は28日、南アフリカから入国した2人の感染を確認したことを明らかにした。英国のサジド・ジャヴィド保健相は、「南アフリカから入国した2人がオミクロン株に感染していることを確認した」と27日に明らかにしている。ドイツのバイエルン州保健省も、24日に南アフリカ地域から入国した2人からオミクロン株を確認した。イタリアでは、モザンビークからミラノに入国した旅行客1人が感染者と確認され、チェコでもナミビアから入国した旅行客1人が陽性判定を受けた。

 これまで南アフリカ以外の地域で確認されたオミクロン株の感染者は、香港の例を除けば、大半が南アフリカからの旅行客だ。香港では、南アフリカを訪問中にオミクロン株に感染したことが確認された旅行客と同じホテルで隔離中だった別の地域の旅行客も、感染者と確認された。ブルームバーグの報道によると、香港の防疫当局は、ホテル内でオミクロン株に空気感染した可能性を視野に入れている。

再び強化される規制

 英国とイスラエルを皮切りに、各国は先を争って南アフリカからの旅行客に対する入国制限措置を取っており、続いて自国内の防疫規則も強化している。クリスマスの連休は普段どおりに過ごせると自信を示していた英国は27日、マスク着用の義務化などを発表した。30日からは商店と公共交通機関の利用者のマスク着用が義務化されるほか、外国から入国するすべての旅行客にもコロナ検査が義務付けられるとBBCが伝えた。

 南アフリカへの旅行禁止措置を取ったイスラエルは、今後2週間にわたって外国人の入国を全面禁止することを決めた。ロイターが28日に報道した。イスラエルは、オミクロン株を遮断するために国境を封鎖した最初の国だ。大半の国は、今の段階では南アフリカ地域からの入国者のみを制限しているが、オミクロン株の感染者が増えれば国境規制の対象は拡大する見通しだ。

最悪の時期に登場した変異株

 オミクロン株がデルタ株などに比べてどの程度危険なのかはまだ不明確だ。オミクロン株を保健当局に初めて警告した南アフリカの医師アンジェリーク・クチェ博士はこの日、英国の日刊紙「デイリー・テレグラフ」のインタビューで「オミクロン株の感染者たちの症状は他のコロナ感染者とは非常に異なるが、症状は軽かった」と述べた。クチェ博士は、ある若者は極度の疲労感を訴え、発熱が見られ脈拍が速くなった6歳の子どもは、2日後には状態が改善したと説明した。

 問題は、オミクロン株が最悪の状況で登場したということだ。先月東欧で始まったコロナ再拡散はドイツ、オーストリア、オランダなど全欧州に広まりつつある。このためオーストリアは22日から再び全面的な封鎖に入り、オランダなどでは防疫規則の強化に抗議する暴力デモまで起こるなど、欧州の状況は非常に悪い。

 地球の北半球が屋内活動の増える冬に入りつつあることで感染者が再び増加していることも、オミクロン株に対する恐怖をあおっている。世界保健機関(WHO)の集計によると、世界における「1週間のコロナと診断された人の数」は、今年10月初めには約282万人と6月末以降最低だったものの、今月中旬には約378万人と34%増加している。

 各国がこの夏にワクチン接種を集中的に実施して4~6カ月が過ぎ、免疫効果が徐々に低下する時期に入っているということも、懸念を生む要因だ。国際統計サイト「アワー・ワールド・イン・データ」によると、全世界の1日当たりのワクチン接種の規模は、7月27日に人口100人当たり0.54人に達するまで徐々に増加を示して以降は停滞していたものの、8月末には再び同様の水準に達した。しかし、その後は再び停滞し、今月26日には0.37人にまで低下している。

27日、オミクロン株が最も広がっている南アフリカのヨハネスブルグで人々がマスクをしてコロナ検査を待っている=ヨハネスブルグ/AP・聯合ニュース

改めて浮き彫りになるワクチンの不平等

 オミクロン株が登場したのがワクチン接種率の低い南アフリカであったことから、先進諸国によるワクチン独占に対する批判が再び高まっている。開発途上国がワクチン不足でコロナウイルスに対する免疫を確保できていないうえ、保健環境も悪化していることで、新たな変異株が登場し続ける環境が作られているとの指摘だ。

 ロイターの報道によると、世界の子どもへの予防接種の拡大を目指すGAVIアライアンスのセス・バークレー事務局長は「世界の多くの人口が、まだワクチン接種を受けていない」とし「(こうした状況では)変異株は登場し続けるだろうし、コロナ大流行は長期化するだろう」と指摘した。同氏は「富裕国だけでなく全世界の人々を保護することができた時にこそ、変異株の出現は防げるだろう」と付け加えた。英国サウサンプトン大学医学部のマイケル・ヘッド上級研究員もAP通信に対し「(変異株の出現は)ワクチン不平等の結果のひとつ」だとし「富裕国の余剰ワクチンの独占の影響は、いつか改めて私たち全員のもとに跳ね返ってくるだろう」と警告した。

 実際に、インドで初めて確認されたデルタ株は、今年4~5月にインドで猛威を振るい、急速に勢力を拡大して全世界へと広がった。オミクロン株の発生地と推定されるボツワナのワクチン接種完了率は24日現在で19.6%にとどまり、オミクロン株が大きく広がっている南アフリカも23.7%に過ぎない。ただし南アの接種率が低いのは、ワクチン不足のせいというよりは忌避現象のせいだとの指摘もある。ロイターによると、南ア政府はそのため、今月24日にファイザーなどに対してワクチン供給の延期を要請している。

シン・ギソプ先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/international_general/1021063.html韓国語原文入力:2021-11-28 13:54
訳D.K

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