ドナルド・トランプ米行政府による12日(現地時間)の韓米自由貿易協定(FTA)改定交渉に関する特別共同委員会の特別会期開催通知は、電撃的で予想より早かった。交渉戦略と米国の内政治状況などを複合的に考慮したものと専門家たちは分析した。
トランプ大統領は先月30日、文在寅(ムン・ジェイン)大統領との首脳会談直後のマスコミ発表で「今、韓米自由貿易の再協議を始めている」として火ぶたを切った。当時でも韓米首脳会談で自由貿易協定の改定あるいは再協議と関連して韓国側から満足できる返事を得られなかったことに対する不満と見られていた。
だが、トランプ大統領が韓米自由貿易協定に手をつけようとしている意志は随所で確認できた。4月27日、ロイター通信とのインタビューで「韓米自由貿易協定の再協議または終了」にも言及した。特に、韓米首脳会談直後のマスコミ発表でも参謀陣が「自由貿易協定には言及しない方が良いだろう」と助言したにもかかわらず、これを無視して「再協議」を持ち出したという。
それでも専門家らは、米国が韓米自由貿易協定の再協議、あるいは改定交渉を推進しても、現実的には来年頃になってこそ可能だと見ていたことは事実だ。トランプ行政府が、カナダおよびメキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)の「現代化交渉」を最も重要な貿易・通商懸案として掲げていたためだ。
トランプ行政府が韓米自由貿易協定に対して攻勢的な早期対応に切り替えたのには、交渉戦略の修正が最も大きな影響を及ぼしたと見られる。ワシントンのある通商専門家は「トランプ行政府がその間『先NAFTA、後韓米FTA」戦略から『同時交渉戦略』に変えたため」と解説した。
実際、NAFTA現代化交渉は、米貿易代表部が5月の議会に「8月16日から交渉を始める」と公式通知した。米国が韓国に要求した共同委員会特別会期も、特別な事情がなければ30日以内に開催しなければならない。8月12日前には特別会期を開き、以後に改定交渉の可否を決めなければならない。改定交渉をするには両者の合意が必要だが、トランプ行政府が刀を抜いた以上は韓米間の力関係から見て開始時点をひたすら遅らせることは容易でなく見える。
米国のNAFTAと韓米自由貿易協定の「同時交渉戦略」について、ワシントンのシンクタンクであるピーターソン国際経済研究所のケリー・クライド・ホプバウナー研究員らは7日、報告書で「一つの国家から同意を得た後に他の国家から降参を受けようとしている」と解釈した。「弱い環」を先に攻略し、有利な交渉結果を勝ち取った後にこれをテコにして他の国家を圧迫する戦略という意味だ。
トランプ大統領が韓米自由貿易協定の改定交渉を急いだ背景には、窮地に追い込まれた米国内の政治事情も反映されたと見られる。今夏からは来年11月の上・下院中間選挙のための政治資金募金を始めることになる。
だが、トランプ大統領は側近とロシアの癒着疑惑である「ロシア・スキャンダル」の沼に嵌まり、就任6カ月が迫ってもまともな成果が上がっていない。昨年の大統領選挙運動の時、自由貿易協定を非難して働き口創出を強調してきた彼は、貿易交渉を通じて顕著な業績を示して支持者を結集させる必要がある。これは、今後の交渉過程でトランプ行政府がきわめて攻勢的に出てくる可能性があることを意味する。