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[ニュース分析]韓国の「FTA実益」は微々たるもの…「毒素条項改正すべき」

登録:2017-05-02 03:28 修正:2017-05-02 12:09
「韓米FTA」効果を検討してみると 
 
韓国、数字上5年間貿易黒字が2倍に 
代表商品の自動車は無関税になってわずか1年  
携帯電話は最初から無関税…推算は無意味 
「他の製造業は損害の方が大きい」 
 
トランプ「再検討命令」は交渉で優位に立つため 
「これを機にISDなど毒素条項を改正すべき」との指摘も
グラフィック=チャン・ウンヨン//ハンギョレ新聞社

 ドナルド・トランプ米大統領が韓米自由貿易協定(FTA)の廃棄可能性に言及したのに続き、就任100日目を迎えた先月29日(現地時間)、韓米FTAをはじめ米国が結んだ20の貿易協定をすべて再検討する行政命令に署名したことで、韓米FTAの地位が急速に揺れている。再交渉が“現実”となりつつある中、通商専門家らは「発効5年目に入った今、成果を判断するにはまだ早い」としながらも、「韓国政府が協定の枠組みをそのまま防御しようとする態度から脱し、毒素条項をすべて交渉テーブルに載せる準備に取り組まなければならない」と指摘している。

韓米FTA発効以降の対米輸出と商品貿易収支の動向(単位:億ドル)資料:産業通商資源部)//ハンギョレ新聞社

 5月1日現在、韓米貿易収支を見てみると、2012年3月に協定が発効してから過去5年間、韓国商品の米国の輸出は年平均20億4千万ドル(年平均3.4%)に増加した。一方、米国産商品の韓国の輸入額は2011年の445億ドルから昨年432億ドルに減り、5年間で年平均0.6%減少した。対米商品収支の黒字は2011年の116億ドルから昨年の233億ドルに2倍ほど増えた。

 しかし、トランプが「おぞましい」と表現した商品収支赤字が韓米FTAの結果だとは言い切れない。米国は自由貿易協定を締結していない日本・ドイツ・中国に対しても数百億ドルに達する莫大な赤字を出している。韓国の商品収支黒字が「5年間で倍増した」ことは事実だが、ここにも考慮しなければならない点がある。米国の韓国産製品の輸入額(計720億ドル・2015年)のうち乗用車(180億ドル)、携帯端末(73億ドル)、半導体(33億ドル)など3品目が40%に達する。ところが、2015年末まで韓国乗用車に対する米国の輸入関税は発効前と同じ2.5%だった。半導体・携帯電話は発効前から既に無関税だった。増加した黒字幅が果たしてFTAのためなのかに疑念を抱かざるを得ないのも、そのためだ。韓信大学のイ・ヘヨン教授(国際関係学)は「対米輸出が増えたのは端的にFTAと無関係な自動車が主導した。残りの製造業は損害の方が大きい」と評価した。

 また、繊維・電気電子など多くの品目は今年から無関税が適用される。対外経済政策研究院のキム・ヨングィ地域貿易交渉チーム長は「FTAの活用と効果が本格化するまで待たなければならず、今米国が関心を示す貿易収支の赤字問題も再交渉を通じて解決するのは難しい」と話した。

 さらに、米国産製品の輸入が減ったことは韓国経済にとっても良くない側面がある。原材料・部品・消費財の輸入の減少に伴い、韓国経済の生産と消費者厚生も減少する可能性があるからだ。結局、短期間の両国の貿易収支動向数値だけでは得失を見極めるのは難しい。また、サービス分野の赤字はもちろん、輸出大企業が得た恩恵が韓国経済に及ぼした影響などを考えると、両国間の得失はさらに複雑になる。

 このような状況で、米国の要求は「廃棄」ではなく「交渉で優位」に立つための戦略と見られている。仁荷大学のチョン・インギョ教授(経済学)は「トランプをはじめとして米通商当局者たちの発言は協定を終えようということよりも、これをテコに韓国企業の米国投資を増やすよう圧迫し、譲許内容を米国に有利に変えたり、金融など追加開放を引き出すための布石と思われる」と話した。

 米国との再交渉は8月、米国が北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に突入し、これが終了する来年下半期に行われる見込みだ。通商専門家たらは韓国政府が、対米貿易収支の黒字を減らすなど、その場に限った対応よりも、緻密な戦略を立てなければならないと指摘する。梨花女子大学のチェ・ウォンモク教授(法学)は「米国は自由貿易協定の全体の枠組みとパラダイムを変えようとしている。私たちもこれに対抗し、開放によって被害を受けた産業や街角商圏の保護など、関連毒素条項を問題として積極的に提起しなければならない」と話した。民主社会のための弁護士会のソン・ギホ国際通商委員会委員長も「トランプ政権はNAFTAの再交渉を通じた単一のモデルを作って、それを韓国にも提示する可能性が高い。米国が伝統の製造業を蘇らせようとする動きに対抗し、韓国が劣勢な投資・サービス分野と投資者国家訴訟制(ISD)などを経済民主化の観点から再構築できるようにすべきだ」と指摘した。

チョ・ゲワン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/793019.html 韓国語原文入力:2017-05-01 22:30
訳H.J(2177字)

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