ドナルド・トランプ米大統領が韓国に高高度防衛ミサイル(THAAD)費用10億ドル(約1123億円)の請求書を出し、韓米自由貿易協定(FTA)廃棄または再交渉を要求し、「トランプリスク」が韓国の安保および経済の最大の難題として浮上している。これは次期韓国政府には厳しい挑戦課題になるだろうという指摘が出ている。
トランプ大統領の27日(現地時間)のロイター通信インタビューで始まったTHAADや韓米自由貿易協定に関連する“爆弾発言”は、翌日ワシントンタイムズのインタビューでも繰り返された。キム・グァンジン大統領府国家安保室長とハーバート・マクマスター米ホワイトハウス国家安保補佐官が30日午前(韓国時間)、電話協議を通じて「従来の合意を再確認」したと火消しに乗り出したが、マクマスター補佐官が翌日「THAAD費用の再交渉の可能性」発言をしたことで、1日で再び議論に火がついた。
今回の事態の出発は、参謀らと調整されていないトランプ大統領の“突出”発言から始まったと確認されている。米国務省や国防総省、さらにホワイトハウス関係者たちですら韓国政府の確認要請を受けるまで「THAAD費用」などがインタビューで言及された事実すら知らなかったと伝えられている。ある外交消息筋は「参謀が準備したロイターのインタビュー用資料にもTHAADに関する言及はなかったと聞いている」と伝えた。
しかし、トランプ大統領のスタイルに照らしてみると、今回の議論は予告された事態であり、韓国が目標物となってその本質が韓国人らに切実に浮き彫りにされただけという分析が多い。
まず、トランプ大統領は「米国優先主義」を掲げたポピュリズム的公約で当選した人物だ。白人労働者層などを中心とした彼の支持基盤勢力が望むことを“本能的”につかむ能力に長けている。大統領選挙期間中、同盟国の安保ただ乗りを批判し、自由貿易協定が働き口を奪うと批判してきた彼に、THAAD費用請求と韓米自由貿易協定への揺さぶりは支持基盤をなだめる申し分のない良い素材だと言える。
特にトランプ大統領は政治的に窮地に追い込まれた時、有権者たちの関心を他のところへ逸らすため、爆弾議題を投げる傾向を見せてきた。今回もトランプ政権は就任100日(4月29日)を控え、前面に掲げる業績がこれといってない状況だった。
トランプ大統領が外交関係を即興的に覆したり、相手国の立場を配慮しない姿を見せたのは今回が初めてではない。当選者の身分で蔡英文台湾総統と通話したとき、彼は「一つの中国」政策を否定したと受け止められ中国の強い反発を買った。シリアとアフガニスタンでは、予告のない攻撃を断行した。中国の習近平国家主席との首脳会談後には、シリア空襲で当惑した習主席の状況を赤裸々にメディアのインタビューで公開したりもした。
同盟を無視するトランプ大統領の一方主義に対しては、米国内でも批判が出ている。米上院外交委員会のベン・カーディン議員はツイッターを通じて北朝鮮との対立が高まる状況で「トランプが同盟を分裂させてはならない」と述べた。米上院外交委アジア太平洋小委員会の民主党幹事であるエドワード・マーキー議員も「大統領は韓国を尊重しない発言の代わりに、この主要なパートナーと我々の同盟を強化すべきだ」という声明を発表した。
しかし、トランプ大統領が放った言葉は事実関係が合わなかったり不適切だとしても、参謀たちが公開的に反論したり覆すのが難しいということに問題の深刻性がある。大統領の権威と信頼にひびが入るからだ。マクマスター補佐官がメディアのインタビューで「私が一番やりたくないことは、米大統領の発言を論じ返すこと」と言ったこともこのような負担感を表したものだ。調整や成熟されていないトランプの突出発言がいつでも再発し得る上、政策にまでつながりかねないという点が「トランプリスク」の真の本質であるということだ。