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[現地ルポ] 原発建設を進める韓国への警鐘となる「東海村」の16年

登録:2015-07-31 00:19 修正:2015-07-31 06:55
 日本初の原子力発電所廃炉現場を行く
 ロボットアームで熱交換器1台を撤去
 原子炉本体にはまだ手も着けられず
 安全で安価なエネルギーは“虚構”に
15年にわたり廃炉作業が続く東海原発の固体廃棄物貯蔵庫。 日本原子力発電はここに二つの大型貯蔵庫(7万3000トン)を置いているが、廃棄物が増え保存場所が不足し廃棄物を永久処分する施設を準備しなければならない状況にある =キル・ユンヒョン特派員//ハンギョレ新聞社

 「これが熱交換器です。 高さは何と25メートルです」。日本で最初に商業用原子炉の解体(廃炉)作業が進行している茨城県の東海発電所。 29日午後、現場を案内してくれた日本原子力発電の服部正次マネージャーが目の前の巨大な鉄製円筒を指した。服部マネージャーの説明どおり、現場案内員の介助を受けて狭苦しい建物の階段を上がり5階に至ったが、熱交換器はまだ続いていて建物の上階につながっていた。 1966年に完工した原子力発電所であるために施設が極めて古く建物のあちこちからかび臭いにおいがした。

 服部マネージャーは「熱交換器は原子炉で発生した熱を発電系統に伝達する装置」と説明し、「見てのとおり周囲が6.25メートル、重さは750トンに達する巨大な構造物」と語った。 日本原子力発電は、全部で4基あるこの原発の熱交換器のうち2号機の撤去を終え、残る3基の撤去を準備している。隣の区画に移動してみると2号機があった場所はガランと空いていた。

 日本初の商業用原子炉であった東海発電所1号機(黒鉛減速炉・出力16万6000Kw)が運転を終えたのは17年前の1998年3月。以後、日本原子力発電は2年かけ使用済核燃料を外に搬出する作業を終え、2001年から廃炉作業を進めてきた。

 15年間に作業はどれくらいはかどったのだろうか。ハンギョレの現場取材の結果、発電所は廃炉作業の難関である「原子炉区域」の撤去工法と、この時に発生する大量の放射能廃棄物処理場などの難題を未だ解決できずにいることが確認された。2025年までに廃炉を完了するという日程も延期が避けられないように見えた。 環境を害さない「安価なエネルギー」と宣伝されてきた原子力発電所が、2011年の“福島の悲劇”に続き、“廃炉”という二重の難題を日本社会に投げかけている。 このことは、先月ようやく古里1号機の廃炉を決めたが、依然として原発拡大政策にこだわる韓国社会に投げかけられた重い質問でもある。 東海村の廃炉工程はなぜ遅れているのか。 現場関係者たちは「放射能の危険ゆえに作業員の現場投入時間を最小化するため、ロボットなどの遠隔操縦装置開発に少なからぬ時間と費用がかかった。 その間、大小の失敗と試行錯誤があった」と口をそろえた。

日本初の商業用原子炉廃炉作業が15年間進行中の茨城県東海村の発電所で、熱交換器のタービンを除去している。こちらでは原子炉を囲んでいる4基の熱交換器の中で1基の撤去がようやく終わり、原子炉区域の廃炉作業にはまだ手も着けられていない =日本原子力発電提供//ハンギョレ新聞社

32年間使った原子力発電所、解体作業はいつ終わるのか
高さ23メートル・重量750トンの熱交換器
1基撤去だけで16年…まだ3基残存
「放射能の危険で少なからず時間・費用」
次の工程である廃炉ではさらに問題山積
未だ技術・工法開発未了
廃棄物処理場指定も足踏み

 多くの試行錯誤の末に日本原子力発電が開発に成功したのは熱交換器撤去に大活躍をしたロボットアームだった。発電所はロボットアームがうまく作動できるように先端に熱交換器上に円形レールを設置した後に、その上にロボットアームを取り付けた。その後、原子炉建屋の脇に作られた「遠隔操作室」という名前の臨時建屋からロボットに設置されたカメラを通じてロボットアームを操縦する。 遠隔操作室で会った木村氏は「ロボットアームを通じて熱交換器を撤去したのは世界初だ。この装置を開発して熱交換器を撤去するのに2006年から5年かかった」と話した。ロボットの腕は毎分30センチ程度の速度で切断作業を行うことができる。

 問題は今からだ。2019年から原子炉区域の撤去を本格的に始める予定であるためだ。 当然、原子炉の周辺では熱交換器以上に多量の被爆が発生する。 これまでより慎重な安全対策とロボットの開発が必要だ。 東海発電所の副所長は「原子炉区域を解体するには、作業員の安全を確保するために遠隔装置を使わなければならない。 しかしまだ具体的な装置は決定できていない」と原子炉解体のための技術・工法開発がまだ終わっていないことを認めた。

 廃炉作業を終えるためには解決を要する難題は多い。廃炉過程で発生する廃棄物の処理場がないためだ。 熱交換器からは日本でL3(放射能水準が非常に低い物質)に区分される低水準放射能廃棄物が発生するが、原子炉本体からはそれより遙かに危険なL1(放射能水準が比較的高い物質)が出てくる。 この日、発電所が公開した資料によれば、東海発電所の廃炉全過程でL1は1600トン、L2(放射能水準が比較的低い物質) 1万3000トン、L3は1万2300トンが発生することが確認される。 特にL1は汚染が激しく、地下50~100メートルにコンクリートなどの構造物を作り、その中に保管しなければならない。 これらすべての作業を終えるのには885億円かかると予想される。

 発電所はこの日、発電所付近の横80メートル、縦100メートルのL3物質処理場予定地を公開した。しかしL1とL2の処理場は依然としてはっきりしていない。 東海発電所副所長は「まだ処理場が決まっていないということは、予定された工程の進行に関連する大きな危険要素」と語った。 本格的な廃炉作業が進行されてから既に15年が経過したが、東海村の廃炉は依然漂流中だ。 いつになったら終わるのだろうか。東海村が韓国の原発産業に問いかける重い質問だ。

茨城県東海村/キル・ユンヒョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/international/japan/702536.html 韓国語原文入力:2015-07-30 20:08
訳J.S(2656字)

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