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[原発解体]遠くても進まねばならない道

登録:2015-03-05 20:06 修正:2015-03-08 08:45
当初は解体自体を念頭に置かず…寿命尽きれば“後始末の悪夢”
古い原子力発電所を閉路下はところには30年内外の長い時間と天文学的な費用がかかる。 日本原子力発電が2003年6月日本最初の商業原子炉である東海発電所の圧力タービンを撤去している姿だ。 資料写真//ハンギョレ新聞

 2013年11月、日本初の商業用原子炉である東海発電所の廃炉作業を進めていた日本原子力発電(日本原電)は、腐心の末に重大な決定に至る。 当初2014年から開始する予定だった廃炉の中心的な工程である原子炉の解体をさらに5年延期することにしたのだ。 この会社は2001年12月に廃炉作業を開始した後、2009年7月にも一度、解体日程を3年延期したことがある。 被ばくを甘受した作業員たちの14年にわたる孤軍奮闘にも拘らず、作業は思うように進捗していない。

 未来のための夢のエネルギーと呼ばれた原子力発電が始まってから60年が経った現在、人類は廃炉という深刻な難題に直面している。 世界で建設された558基の原子炉のうち、現在廃炉が終わったのは11基、作業を待っているのは120基に上る。 原発は一旦作ると30~60年程度しか使用できないために、廃炉はすでに人類の足元に火がついた問題であるわけだが、これに対する備えは途方もなく不十分だ。

使用済み核燃料を除去した後
熱交換器解体・原子炉解体の順
被曝の危険に莫大な量の放射能廃棄物
解体工法・制度ほとんど空白

廃棄物処分場の確保も難題
日本東海発電所 苦闘14年目

 23基の原子炉が稼動中で、さらに5基を建設する計画を立てている韓国の状況は一層深刻だ。 韓国は、韓国原子力研究院の小型実験炉である TRIGA mark を除いては、大型商業用原発の廃炉を行った経験がない。 このような中で、当初30年の稼動予定だった古里(コリ)1号機の寿命を激烈な社会的論議の挙句に10年延長し、先月27日には、また別の老朽原発である月城(ウォルソン)1号機の運転も10年延長した。 問題の古里1号機を含め、10年以内に寿命が尽きる韓国の商業用大型原発は5基もある。

 原発廃炉においては、作業員たちは被曝し、解体過程で莫大な放射性廃棄物が発生する。 被害を最小化するためには、細心の制度的装置が設けられなければならないが、これと関連した“制度の空白”は深刻な状態だ。 何よりも、現行の原子力安全法には原発の“解体”とは何なのかに対する概念(定義)が含まれていない。7月から施行される新法にはこの内容が含まれたが、実際に廃炉を進める時に電力会社が規制当局に提出しなければならない「解体計画書」にどのような内容が含まれなければならないのかさえ、ようやく具体化されようとしているところだ。

 廃炉は実際にどのように行なわれ、解体計画書にはいかなる内容が含まれなければならないだろうか。 16万6000キロワット級の小型の黒鉛減速炉である日本東海発電所の事例を見てみよう。

 廃炉の最初の作業は、使用済み核燃料に対する安全措置だ。 使用済み核燃料は人間が近づけば直ちに死亡するほど強い放射線を噴出する。 そのため、作業を始めるには、これを安全に管理できるシステムを作らなければならない。

 そのあと、本格的な解体が開始される。 放射性物質汚染が少ない部分を先に、汚染が最も深刻な原子炉を最後に解体する。 日本原電は1次工事で汚染の程度が一番少ない原子炉以外の区域を5年かけて撤去した。 2006年8月からは2次工事として、原子炉を囲んでいる高さ24メートル、直径6メートルの熱交換器4基に対する解体を進めているところだ。

 廃炉が難しいのは作業員たちが被爆するためだ。 そのため日本原電は、熱交換器の解体に人間を投入せず、鋼鉄を切断できるロボットアームを設置し、これを遠隔操縦する方式で作業を進めている。 しかし、この態勢を整えることが容易ではなかった。 NHK放送は2009年10月、「原発解体、世界の現場が警告する」という番組で、日本原電が身を持って体験している廃炉の困難さを生々しく紹介したことがある。 ロボットを設置するには原発全体についての精密な図面が必要だが、関連資料が途方もなく不足していたためだ。 現在、二次工事を始めて9年になるが、熱交換器4基のうち1基の撤去が終わり、2基目の作業が進められている。

 この作業を終えた後、日本原電は2019年から廃炉の中心的な工程となる原子炉とその周辺領域を解体する計画だ。 原子炉からは人間の身体に直接的な影響を与える放射線が漏れるために、日本原電は再度、作業員の被ばくを最小化できる工法と装置を投入する予定だ。

 構造物の解体が終わったら、廃炉によって発生した莫大な量の放射性廃棄物を処理しなければならない。 日本原電は東海発電所から低レベル放射性廃棄物2万6900トンなど6万7000トンの放射性廃棄物が出ると推定している。 低レベル放射性廃棄物のうち放射能が最も強いL1の1600トンは堅いコンクリート構造物で覆った後、地下50メートル以上の深さに、それより一段階低いL2の1万3000トンは地下10メートル以上の深さに、300年以上保管しなければならない。 日本経済新聞は先月24日、日本の原発関連施設を全て解体した場合、地下深くに埋めなければならない廃棄物が75万ドラム程発生すると指摘した。 しかし、日本でもこのような廃棄物を安全に処分するための具体的な規定はまだ作られていない状態だ。 日本原電の廃炉作業が先送りされ続けている理由だ。

 これらすべての作業には天文学的費用がかかる。 東海発電所の廃炉には1兆ウォンに迫る885億円(8239億ウォン)が必要だと言う。 日本の専門家たちは、平均的な100万キロワット級の原発を廃炉するには少なくとも25年の歳月と600億円の費用がかかるだろうと予測している。 しかし、これは放射性廃棄物処理場を円滑に確保できることを前提とした計画であるため、実際の時間がどれくらいかかるかは予測し難い。

 原発は、安価なエネルギーだろうか。 韓国社会は真摯な検討を始めなければならない。

東海村・東京/キル・ユンヒョン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/680304.html 韓国語原文入力:2015/03/02 11:34
訳A.K(2616字)

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