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「ネット強国」韓国の素顔が明らかに…火災で国民メッセンジャー「連鎖障害」大混乱

登録:2022-10-17 06:25 修正:2022-10-17 08:12
火災後、ネイバーは4時間後に正常化…カカオ「復旧中」 
カカオバンク、金融ネットワークは分離していてもサービス間の接続性により障害
カカオトークのエラーメッセージ/聯合ニュース

 15日午後、京畿道城南市盆唐(ソンナムシ・プンダン)にある「SK C&C」のデータセンターの地下電気室で火災が発生し、カカオやネイバーなど、そこにサーバー(サービス稼動コンピューター)を設置していた企業のインターネットサービスが相次いで利用できなくなった。ネイバーは約4時間後に正常状態に戻ったが、カカオのサービスは翌日16日午後になっても復旧しないなど、不安定な状態が続いている。特にカカオトークのサービス障害が1日以上続いたのは、2010年のサービス開始以来12年間で初めて。

 市民の日常に広範囲な影響力を及ぼす「恐竜プラットホーム」の運営企業であるカカオが、「国民的メッセンジャー」の事業者を自任しながらも、リアルタイムバックアップ体制(ミラーリング)の構築など非常・災害状況に備えた投資を疎かにしていたのではないかという懸念や、カカオトークと「インターネット強国」韓国の素顔が赤裸々になったという指摘が出ている。

 16日の科学技術情報通信部、カカオ、SK C&C、消防当局などの説明を総合すると、15日午後3時19分、板橋(パンギョ)データセンターの地下電気室で火事が発生して電力供給が遮断され、そこに設置されていたサーバーを通じて提供されていたインターネットサービスが停止した。当時、そこには、カカオトークやダウムの検索ポータル・ニュース・オンラインカフェ、カカオマップ、カカオT、カカオペイなどカカオの主要サービス用のサーバーが集中していた。カカオのヤン・ヒョンソ副社長は「盆唐や安養(アニャン)など全国4カ所にデータセンターを分散していたが、そのなかで最も多くのデータを処理する盆唐データセンターのサーバー3万2000台の電力供給がすべて遮断された」とし、「通常、カカオトークの場合、障害が発生すれば20分以内に解決することを目標にして対応しているが、火災現場のため内部への進入が難しく、サーバーのデータ送出量も多いため、対応が遅れた」と述べた。

 カカオによると、SK C&Cの盆唐データセンターに設置しているサーバー3万2000台のうち、この日午前11時時点で1万2000台には電力供給が再開されたが、残り2万台は今もなお電力が供給されていない。この日早朝にはスマートフォンでの文字送受信など一部機能は復旧したが、残り大部分の機能は今もなお停止していたり不安定な状態にある。

16日午前、京畿道城南市盆唐区三平洞のSK C&Cのデータセンターの火災現場で消防と警察関係者が1次鑑識のために移動している/聯合ニュース

 カカオのサービス利用者はもちろん、政府や政界でも「カカオがリアルタイムバックアップ体制(各サービス別にサーバー2台が同じ状態で同時に動作する状態)を十分に備えずにサービスを提供してきたのではないか。ありえないことだ」とする懸念が広がっている。あるIT専門家は「1カ所のデータセンターで火災が発生し、それさえもすぐに鎮火してサーバーには煙がまったく入っていない火災で、事実上全国民が利用するサービスが停止するなんてありえない」と指摘した。国会科学技術情報放送通信委員会のパク・ソンジュン議員(与党「国民の力」)は「火事が発生したのは1カ所に過ぎないのに、カカオ全体の機能に問題が生じたというのは理解できない」と批判した。

 政府関係者は「2018年11月、KTの阿硯(アヒョン)支社で火事が発生し、ソウル麻浦区(マポグ)とその一帯の通信ネットワークが麻痺した時も、多くの金融・公共機関や企業がネットワークの二重化を十分にしていなかったことが明らかになった」とし、「それぞれ他地域のデータセンターに、同一のデータになるようリアルタイムで同期するサーバーを設置し、地震・洪水・火災などの発生により1カ所で問題が生じた場合、自動で他の場所のサーバーで代替させなければならないが、それができていないようだ」と述べた。グーグルやメタなどは、地震や核戦争のような災害の事態などに備え、大陸と国を別にしたバックアップサーバーを運営している。

 カカオは「二重化作業には問題がない」と明らかにした。ヤン・ヒョンソ副社長は「サーバー二重化のための対応を普段から備えていたが、これほどの規模のデータセンター全体が麻痺したのは、韓国IT業界の歴史を振り返っても異例なことで、あまりに大きな規模の障害が発生したため、他の所(データセンター)でデータとトラフィックを代替することが円滑に進んでいない状況」だと説明した。

 だが、リアルタイムバックアップ体制の構築などは、平常時ではなく非常時のための「投資」の観点で行われなければならないという点で、カカオの「異例の状況」という主張は説得力に欠けるという指摘が出ている。高麗大学情報保護大学院のキム・スンジュ教授は「サーバー二重化のためにデータをどのような方法で分配するのかを企業が決める場合、結局は費用を考慮せざるをえない」とし、「カカオが予測できなかった規模の大きな事故が起きたため、対応が十分にできなかったものとみられる」と述べた。

 コロナ禍により非対面への転換が早期に進められ、多くのオンラインサービス間の接続性(コネクティビティ)が高まり、一つのサービスが止まると他のサービスに連鎖反応が生じるという点も、今回の事態で明らかになった。例えば、カカオバンクは、金融企業のネットワーク分離義務により、ソウル麻浦区上岩洞(サンアムドン)にあるデータセンターを主に使用しており、中核的なサービスの提供には支障はなかった。だが、カカオアカウントを利用した会員加入や簡易振り込み、集会通帳への友達招待など、カカオの他のサービスと連動する一部サービスが影響を受け、利用者が不便を強いられた。カカオトークの「トークチャンネル」や「通知メッセージ」などを利用して顧客管理(CS)を行うスタートアップ企業も正常なサービスの提供で困難に直面した。

 イ・ジョンホ科学技術情報通信部長官は16日午前、火災現場を訪れ、「日常の不便を越えて経済・社会活動が麻痺する懸念があることが確認されただけに、政府も状況を極めて厳重に考えている」と述べた。

 政府も安易に対処してきたという批判は避けがたい。科学技術情報通信部の関係者は15日午後、本紙に「(カカオやネイバーなどは)基幹通信事業者ではないため、政府が(災害対応策の用意を)強制するのは難しい」と述べた。その後、科学技術情報通信部は事故発生から約6時間後の夜9時50分に報道資料を公開し、ホン・ジンベ・ネットワーク政策室長の指揮下で「放送通信災害対応シチュエーションルーム」を設置し、激励と支援に乗りだすことを伝えた。翌日16日午前、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が科学技術情報通信部に「室長中心の状況室を長官主導に格上げして指揮せよ」と指示し、午前11時15分、シチュエーションルームをイ・ジョンホ長官指揮下の放送通信災害対策本部に格上げした。

 付加通信サービスとみて安易に対応し、大統領の指示を受けて大急ぎで動いた格好だ。この日午前、イ・ジョンホ長官が火災現場の点検に乗りだしたことも、尹大統領の指示によるものだと分かった。

 民間企業のプラットホームを活用することで、オンライン行政サービスの効率性を高めるという尹錫悦政権の政策の方向に対しても、懸念が出ている。政府は大統領直属の「デジタルプラットホーム政府委員会」を発足し、多くの政府省庁の請願・行政サービスを一つのオンラインプラットホームで一括提供するシステムの構築のための青写真の作業に入った。主要な課題のなかには、カカオやネイバーなどの民間企業のインフラとサービスを積極的に活用するという「民間主導型イノベーション」も入っている。

チョン・インソン、オク・ギウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/economy/it/1062885.html韓国語原文入力:2022-10-17 02:42
訳M.S

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