「主に高所得者が多くの恩恵を受ける所得税の各種非課税・減免措置をほぼ廃止する。基礎年金など一部の福祉制度を廃止し、政府支出も構造調整を行う。こうして作った資金で全国民が無条件で月30万ウォン(約2万7千円)の基本所得(ベーシックインカム)を受け取る。この場合、年間所得が4700万ウォン(約436万円)を超える人は現行よりも多くの税金を納めることになる。そのような人たちは全人口の12%だ。残りの88%は今よりも受け取る金が増える」。
民間研究所「LAB2050」は28日、ソウル大学路の公共グラウンドにおいて2021年から実行可能な「国民基本所得制」財政モデルおよび模擬実験結果を発表した。市民運動諸団体の間では、既存の選別的福祉政策は死角が多いうえ、複雑な手続きなどで政策効果が落ちるため、その代案として基本所得についての論議が進められている。今回の発表は、最も大きな争点となる財源調達方法をより具体的に研究し、様々なシナリオを提示したという点で意義深い。
この日の発表会では2021年、2023年、2028年に30万~65万ウォンを支給してスタートする計6つのモデルが紹介された。所得税の体系を単純化し、累進性を強化する方向に変え、増税するというのが財源調達の要点だ。
このうち、2年後から直ちに各自が月30万ウォンを受け取るモデルを見てみると、年間計187兆ウォン(約17兆2千億円)が必要となる。勤労所得控除、保険料控除などの非課税・減免制度を廃止し、計74兆5千億ウォン(約6兆9千億円)を調達する。基礎生活保障制度の生計給与(生活保護に相当)、基礎年金などの一部の福祉政策を廃止したり縮小したりして31兆9千億ウォン(約3兆円)を調達する。基金と特別会計の整備、地方財政支出調整など、財政構造調整により30兆ウォン(約2兆8千億円)を調達する。残りは脱税に対する追徴課税の強化、財政増加分の一部活用などで充てる。
同研究所は財源調達の原則として、既存の基礎生活保障制度受給者が損害を被らないように調整し、4大保険関連基金は活用せず、年間所得4700万ウォン(約436万円)以下の階層が利益を得られるようにした。そして再分配の効果を強化するため、上位階層が税金をより多く納める方向で設計したという。年間所得4700万ウォンを超えるのは所得のある人の上位27%にあたり、無所得者を含めた成人人口の上位15%、国民全体では上位12%に属するという。
同研究所は、基本所得導入後の国民所得の変化を統計庁の家計動向調査をもとに推定し、再分配効果を模擬実験した。その結果、今年第1四半期の家計動向調査で、所得下位20%と上位20%の格差(5分位階級別)は5.91倍だったが、2021年から月30万ウォンの基本所得を支給した場合、格差が3.49倍へと縮小した。
LAB2050のイ・ウォンジェ代表は「不平等の深化や経済的不確実性のために、ほとんどの階層で所得が増えても消費がそれほど増えない現象が続いている。分配のアンバランスは内需不振などにつながり経済の躍動性を弱める。再分配効果はもちろん、内需経済の活性化のためにも基本所得制の導入が必要だ」と述べた。