ノーベル経済学賞受賞者のスター経済学者、ポール・クルーグマン米ニューヨーク市立大学教授が、デフレーションの懸念など景気不振に対応するために韓国政府は即座に短期的な措置をとらなければならないと強調した。韓国政府は、振るわない景気を引き上げるための十分な財政余力を持っているということだ。クルーグマン教授は9日、ソウル汝矣島(ヨイド)のコンラッドホテルで開かれた「経済発展経験共有事業(KSP)成果共有カンファレンス」で記者たちと会い「現在景気が悪く、今後の景気のためにも今すぐ対応策を取る必要がある」とし、「韓国については長期的展望で政策スタンスを取ることより、(短期的対応が)はるかに重要だ」と話した。予算と財政余力が充分にあるので、果敢で即刻の措置が必要だということだ。
彼は、韓国の最低賃金引き上げが経済に肯定的な影響を及ぼしたとも論評した。クルーグマン教授は「最低賃金の引き上げは、消費支出を増やし経済に一部肯定的な影響を及ぼす」として「ただし、その影響は大きくなく、世界の景気展望が暗い時期には公共支出の拡大など拡張的な財政で景気を盛り上げる方がはるかに大きな効果を上げられる」と述べた。
彼はこの他にも、米中貿易紛争などの影響で企業らが投資を敬遠する現象が蔓延していると診断した。クルーグマン教授は「韓国の経済成長率が下がらざるをえない理由がある」として「企業の立場としては未来を予測できないため投資を敬遠しており、このような現象は全世界的に起きている」と明らかにした。さらに、不確実性の拡大で投資を敬遠する現状況に対して、政府が積極的に政策的介入に乗り出さなければならないとも提案した。
クルーグマン教授は、記者会見の前の基調演説では、世界経済の成長エンジンだったグローバルバリューチェーンの退潮が、世界景気の不振の原因になる恐れがあると警告した。彼は「第2次世界大戦以後には見られなかった途方もない保護貿易主義が現れている」とし、「米国は中国、インドと貿易戦争をしており、韓国の鉄鋼産業も被害を受けることになった」と述べた。
彼は引き続き「グローバルバリューチェーンの拡散で企業は費用を節減し、その過程で先進国から開発途上国に技術と知識が移転され、双方の経済開発に寄与した」として「最近になって保護貿易主義が充満するなど、ハイパー・グローバリゼーションの時代が終わりつつあり、これに伴い世界経済は成長推進力を失いかねない」と懸念した。
この日のカンファレンスは、韓国の経済発展の経験を開発途上国と共有し、経済成長を支援する事業(KSP)の成果を発表する趣旨で設けられた。ホン・ナムギ副首相兼企画財政部長官は、この日のカンファレンスの開会挨拶で「最近、世界の二大市場である米国と中国の景気鈍化の懸念とともに、自国の利益を前面に掲げた貿易紛争も深刻化している」とし、「経済危機を克服した経験がある国家の事例をデータベース化し、積極的に共有して、開発途上国が衝撃を最小化できる知恵を得るようにする努力が必要だ」と強調した。
彼はさらに「貿易、投資での主要協力国に対する一方的輸出規制措置で、自由で公正な貿易秩序を脅かすだけでなく、グローバルバリューチェーンをかく乱することにより世界経済に否定的影響を及ぼす事例も現れている」として、日本の輸出規制措置を批判した。